2012年01月26日(木) |
白花(シラハナ)への手紙(仮)・12 |
「お嬢ちゃん、大丈夫かい?」 気づいた時は船の中の病室にいた。船医らしき人が手当をしてくれたらしい。 わたし、何をしていたんだっけ。ぼうっとした頭を動かしてこれまでの出来事をふりかえってみる。船がゆれて、外に出たら怪物に襲われそうになって、嵐の中でたたずむ男の人を見つけて。それから。 「お兄さんは?」 疑問の声に船医さんは首をかしげる。 「外にいたのは君一人だったけど。君にお兄さんがいたの?」 「そうじゃなくて」 さらに首をかしげる船医さんにこれまでのことをかいつまんで話をした。嵐になって船が襲われて。荷物をとりに外へ出たら藍色の髪のお兄さんが魔物と対峙していたこと。お兄さんが何かを唱えると大ナマズが凍りづけになってしまったこと。 全部を話し終えると船医さんは腕をくんでうなった後、こう告げた。 「男の人はおろか、魔物なんて一匹もいなかったよ」 耳を疑ってしまった。 「でもこれで合点がいったよ。大ナマズか。そんな魔物が側を通れば嵐にもなる。いや、嵐程度ですんでよかった」 「だから船が襲われたんです――」 抗議の声をあげようとして、くらりと体がかたむく。 「嵐の中倒れていたんだ、熱を出して当然だ。今日はゆっくり休みなさい」 まだ話したりないのに体がいうことをきいてくれない。 「荷物は部屋の中に置いてあるから。無理はするんじゃないよ。いいね」 強引に体をおしつけられてその日は深い深い眠りについた。
過去日記
2011年01月26日(水) 「ほのぼのお題」その9 2006年01月26日(木) 森羅万象 2005年01月26日(水) またまた下書き
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