2012年01月18日(水) |
たまにはお花見を(仮)10 |
「君はさ。ずっとここにいるつもりなのかい?」 「当然でしょう。主君を守るのが私の役目ですから」 正確には主君であり友人であるのだが。彼の手助けとなるために自らすすんでリアンと契約したのだ。 「故郷にもどれとは言えないけど、色々と見聞は広めておくといいよ。 胸に常に新しい風を運べ。ここで一生を終わらせるつもりはないだろ」 そのようなことは考えたこともなかった。視力を失ったとはいえ自分が望んだことであるし側には尊敬する主君や友人たちがいるのだ。だが、彼の発言に興味を惹かれたのも事実だった。 「どちらにしてもさ、視野は広めておくべきだと思うよ。ひいては主君のためになる」 たとえばオレみたいなさ。片目をつぶられて再度言葉につまる。
「あなた方を臨時の と見なします」 これでいいでしょう? とばかりにフォルトゥナートが声をあげると残された面々は笑みを浮かべた。 「これで正式に住処が決まりましたのね」 「(うむ。我も安心してここを拠点として動き回ることができる)」 「ただし。一度でも問題を起こせば強制的に排除します」 「わかってるよ。心配性だなぁ」 わかっていないからこうして牽制しているのではないか。そう言っても無駄なことはわかっていたので周囲にならってグラスをかたむける。まったく奇妙なものたちと関わりあいになってしまった。だが彼らの言葉を借りるなら、これも何かの縁ということになるらしい。審議のほどはわからないが、ここは彼らの案にのるとしよう。 『乾杯』 真夜中の厨房の一角で。複数の声とグラスを合わせる音が響いた。
後日。夜中に物音がする厨房の怪談は陰を潜め、代わりに別の怪談話が持ち上がったのはまた別の話。
過去日記
2011年01月18日(火) 「ほのぼのお題」その1 2010年01月18日(月) 「文章修行家さんに40の短文描写お題」その15 2006年01月18日(水) 初詣 2005年01月18日(火) 庶民その2 2004年01月18日(日) 「EVER GREEN」4−13UP
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