2012年01月17日(火) |
たまにはお花見を(仮)9 |
それはフォルトゥナートが出会った時からずっと身につけていたものだった。否、背負っていたというべきか。 水色の大きな袋から取り出されたもの。それは袋と同じ色をした一本の瓶だった。気泡が浮かび、そこには薄桃色の花が浮かんでいる。 「これでよかったかな。あとこれを使って」 ごそごそと取り出したのは透明なグラス。ご丁寧に四人分そろえてある。 「もしかして、このためにやってきたんですか」 「そうだよ?」 夜中に人を厨房まで案内させて、やりたかったことは酒飲みなのか。あきれてものも言えないとはこのことだ。そんな彼の胸中を見透かしたかのようにリザが声をあげる。 「そう肩肘はることもないんじゃない? ものは考えようって言うだろ。結果的に賊はいなかったんだから城の警備は万端ってことじゃないか」 そういう問題ではない。相手が目の前の三人だったからよかったものの、本当に賊であれば主君の命が危ないのだ。 「じゃあさ。主君を守るための親睦会にするのは? こう見えてシリヤもオレもそれなりの能力(チカラ)を持ってる。城の護衛役にはうってつけだと思うよ。もしかしたらそちらの彼女もだけど」 「(その点については我も保証する。我らのことを内密にしてくれるなら、城の安全は保証しよう)」 「だってさ。ああ、もちろんオレもその中に入るよ? 実家の家訓でさ『受けた恩は二倍にして返せ』って教えがあるから」 もっとも売られた喧嘩は千倍にして返せって言われてたけど。と理解不能な言葉を続けられ、フォルトゥナートは言葉に詰まる。 「本当にさ。嬉しかったんだよ」 さっきまで陽気に笑っていた男が寂しげな顔をして見せたから。
過去日記
2011年01月17日(月) 「ほのぼのお題」でやってみよう。 2010年01月17日(日) 「文章修行家さんに40の短文描写お題」その14 2009年01月17日(土) 書いてなかったので 2006年01月17日(火) 兄弟の法則? 2005年01月17日(月) 「甘いものと苦いもの」UP 2004年01月17日(土) センター試験
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