2012年01月16日(月) |
たまにはお花見を(仮)8 |
「あらヤーヤ。眠っていたのではなくて?」 腰まで届く長い白髪に薔薇色の瞳。髪と同じく白い肌と同じ色の装い、華奢な外見からは一件すると深窓の令嬢のようにも見える。 (「あまりにうるさくて目が覚めてしまった」) だが口から出たものは外見とは百八十度違ったものだった。 「(新顔か。それに珍しい組み合わせだな)」 「そっか初対面になるのかな。彼はフォルトゥナート・バルタザール。この城の領主の側近でオレの友達さ」 「勝手に人を友達よばわりしないでください」 異論を唱えるフォルトゥナートをよそに、精霊はふむとうなずいて言葉を発した。 (「我はシリヤ。帰結の精霊だ。隣にいるのはヤーヤ。人間――とは異なるだろうな。屋根裏に住み着いた人語を解する猫だと思ってくれ。もっともそなたが我の言葉を解せなければ意味はないが」) 「……わかりますよ。それくらいは」 ため息とともにフォルトゥナートは応える。魔眼のおかげで魔力を擁する者の姿や声を認識できるようになったのだが、まさかこうも簡単に、三人の者に不法侵入されるとは思ってもみなかった。今後はよりいっそうの警護につとめよう。 「(これでも日頃から手入れはしている。大目にみてくれ)」 「だってさ。オレからも頼むよ」 もっとも不法侵入者――しかも人間ではない者――が三体に増えただけだが。 (「呪いをかけられた者と自らすすんで呪いを受けた者、か。これも何かの縁なのかもしれないな」) 「呪いとは一体……?」 リザが人とは異なる膨大な魔力を身に秘めているということはわかる。だが、呪いの話は一度も聞いたことがなかった。しかも会話の内容から察するに、自称友人と隣にいる猫娘は同じ類の呪いを受けたということになる。 (「それで。頼んでいたものは手に入ったのか?」) 「入ったからこうして来たんだよ」 やっと当初の目的を果たさんとリザが手にしたのは水色の大きな袋だった。
過去日記
2011年01月16日(日) 「描写力がつくかもしれない30のお題」その14 2010年01月16日(土) 「文章修行家さんに40の短文描写お題」その13 2005年01月16日(日) 家族曰く 2004年01月16日(金) ごめんなさい
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