2012年01月03日(火) |
白花(シラハナ)への手紙。2 |
わたしの故郷は白花(シラハナ)の南方にある。農業がさかんで特に花の栽培が有名。 「まーだ、そがんこついいよっとか(訳:まーだ、そんなこといってるのか)!」 そのどこにでもあるような村のかたすみで、物語はちょっとした口げんかから始まった。 「言って何がわるかとよ(訳:言って何が悪いのよ)」 「悪い」 即答された。 「年頃の娘が遠い異国の地にたった一人で向かう。これが無謀以外のなにもんか!」 「……お父さん、こっちの言葉にだいぶ慣れたね」 ため息混じりにつぶやくと、おまえより長生きしているから当然だと胸をはられた。 シラハナの住人の特徴といえば黒髪に黒の瞳。一部では金色の瞳を持つ人もいるけどほとんどがこれ。ちなみにわたしの瞳の色は青。これは目の前の父親の要素を見事に受け継いだものだ。 「かわいい娘を思わない親がどこにいる!」 この国にしては長身の体躯。茶色の髪に瞳の色は青。お父さんはここから遠く離れた異国の地の生まれだ。 「おまえがこの家からいなくなると思うと、お父さんは、お父さんは――」 ここまで想われていると子ども冥利につきるのかもしれない。でもこれは、たぶん行き過ぎだと思う。
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