無意味な時間を過ごしてしまった。 「風鈴ねぇ」 さっきのおっさんから買い取った代物。はっきりいって使い物にならない。 いや。今なら使い物にならないことも……ないか。 硝子の風鈴。硝子の部分が透き通るような藍色だ。下の部分は対して真っ白。小さな文字も書かれている。 部屋にかけられた温度計を見る。二十八度。夜ならもう少し冷えてもいいんじゃないか。 「これで、よし」 風鈴を軒下につるす。
ちりん。 風にゆられて風鈴の音がなる。 ほんの少しだけ。涼しくなったような気がした。 「まだまだ暑いですね」 ああ。そうだな。 「冷たいものでもお作りしましょうか?」 麦茶でも飲みたい。確か冷蔵庫にあったはずだ。 「冷蔵庫ですね。わかりました」 そうだな。頼む。 そこまできてふと我にかえる。俺は一体誰と話しているのだろう。 「はい。どうぞ」 目の前に差し出されたのは麦茶。受け取って、飲み干して。 「涼しくなりましたか?」 さっきの七倍。背筋が凍りついた。
過去日記
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