2010年04月14日(水) |
委員長のゆううつ。12 |
「先輩でも転入生には代わりないですもんね。特別サービスで案内してあげます」 なんて言ってしまう自分が悲しくなる。何が悲しくて転入生の道案内をしなけりゃいけないのだ。 「テンニュウセイ?」 「他の学校から引っ越してきた人のことです。この学校初めてでしょう?」 「うん、そう。ぼくって転入生なの」 でも一度言ってしまったものは仕方ない。あたしはそういう質(たち)なのだ。 「ですから。とっとと教室にもどって午後の授業を受けてきて下さい」 指を突きつけると彼はおどけたように笑って見せた。 「怖いね。クラスイインってやつみたいだ」 「みたいじゃなくて、そうなんです」 そう。あたしはそういう性質(たち)。 「高木詩帆、県立楠木(くすのき)高校、1年6組委員長です」 正確には五回目の。心の中でそう付け加える。 小学四年生からはじまって、中学でも抜擢され。高校入学と同時に見事に選ばれてしまった。 「ですから。私の目の前ではそんな不用意な発言しないでください。先輩」 「センパイ?」 「昨日も言ったでしょう。同じ学校で学年が上だったら立派な先輩です」 そう言うと先輩はあたしの顔をじっと見る。変なことを言ったつもりはない。事実だし、目の前でサボり宣言されたら見過ごすわけにはいかない。 ぱち、ぱちと二回まばたきした後。 「うん、そう。ぼくって先輩なの」 思い起こさなくても、あれが全ての元凶だったのだ。
過去日記
2006年04月14日(金) 「SkyHigh,FlyHigh!」エピローグUP 2005年04月14日(木) ナチュラルサイトレーラー 2004年04月14日(水) とある兄弟の会話
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