2010年03月05日(金) |
つかれてるひと(仮)。2 |
そりゃそうだ。 俺は確かにつかれている。 つかれて――とり憑(つ)かれている。
そもそも幽霊に足はあるのか。 足はないにしても手は動かせるのか。 そもそも、なんでこんな状況になったのか。 思い起こせば本当にきりがない。 「新(あらた)さん?」 彼女がさらに心配そうな顔をする。 彼女――いつまでも『彼女』と呼ぶのは失礼か。 「さや」 「なんです?」 向き直って彼女に視線を合わせると。俺はしごくまっとうな問いかけをする。 「なんで足はないのに手は動かせるんだ」 『ああ』とあいの手を打つと、彼女は、さやはこう答えた。 「なんとなく、です。動けって思ったら、いつの間にか動かせるようになっちゃったみたいです」 なんとなくときたもんだ。 「でも本当に手を動かしているわけではないので。念力みたいなものと考えてもらえれば」 次は念力とくるのか。 「わたし、他のみなさんとはちょっと違うみたいですから。だから人と少しだけ違うことができるみたいです」 それですべてがまかり通るなら、なんの苦労もない。 そんな思いをかみしめながらイスを離れる。 「どこへいくんです?」 「買い物。あんたもついてくる?」
過去日記
2006年03月05日(日) 旅に出ます 2004年03月05日(金) 「EVER GREEN」5−5UP
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