Mother (介護日記)
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2003年04月23日(水) |
入院31日目 ( 迷い ) |
今日はTちゃんが来てくれた。
Tちゃんには、3月27日の面会の時にお花のバスケットをいただいて感激したが、 今回は自分自身でアレンジして持って来てくれた。 カーネーションにバラにかすみ草・・・ 私の好きな花ばかり♪ お花ができるって女性らしくっていいなぁ。 無機質な病室がこんなに華やかになって、見るものの心を和ませてくれる。
Tちゃんには、お決まりのツーショットをお願いした。 Tちゃんには、こうやって何度撮らせてもらったことだろう。 友達の、病気のお母さんとの写真なんて、頼む私も失礼なんだけど、 いつも応えてくれるTちゃんには本当に感謝します。
そのTちゃんは3月末、無事にヘルパー2級を取得した。 さっそくそれを活かして病院の看護助士の募集に応募したんだとか・・・ 誠に志の高い人である。 ロビーアシスタントとして隣店の顔だった美しい人なので、 仕事ならどこでも選びたい放題だと思うのだが・・・
私はTちゃんに頼んで取り寄せてもらったヘルパー2級のテキストを、 実はまだ半分しか読んでいない。 特に「理論」 は難しい。 すぐに眠くなる。 かろうじて実習だけは図解入りで文字も少ないので、目を通してみたが・・・
私は実親の介護をしているワケだが、 ヘルパーと言うのは他人を看ることであり、私にはできそうにない。 敢えてその道に進もうとしているTちゃんには拍手、そして感謝。
母を放置してTちゃんと上の階でお茶をしていたら、いつのまにか6時になっていた。 食事の時間が始まっている! あわてて階段を降りていったら、 看護婦が私が来ていることを知っていたので、準備だけして待っていてくれた。
そこでTちゃんとはサヨナラして、食事の介助。
最近の母は、薬(錠剤)が飲めない。 昨日の夜は、私が離れた隙に看護婦が飲ませていて、思いっきりむせていた。 ベッドの上げ方が中途半端だったので、母の体勢が座位になっていなかったし、 ただでさえ飲み込みにくい大き目の錠剤を、2つもいっぺんに口に入れたのだから、 あれは絶対に看護婦の責任だ。 かわいそうに、母はその後30分もむせて苦しむことになってしまった。
そこで今日からは薬を粉状にしてくれるということになっていたはずなのだが、 連絡が徹底しておらず、今日も錠剤のまま渡された。 持って来た看護婦に言うと、 薬の種類によっては、薬効が微妙に変化してしまうものもあるのだと言う。 そこで、どうしても辞めるわけにはいかないプレドニン(=ステロイド)だけを飲ませることにして 粉にして持って来てくれた。
粉になったからと言っても母が水と粉を飲めるわけではなく、 夕飯の葛湯仕上げのお吸い物に混ぜて口に入れることにした。 しかし・・・ プレドニンは元々非常に苦いらしい。 それを粉にしたので余計に苦くなり、母は口に入れたまま飲み込むことをせず、 結局ダラダラと出してしまった。 ダメか、やっぱり・・・
次第に私は鬱になって来る。
治療になっていないじゃないか・・・ 嫌がっているじゃないか・・・ 食事は食べられない、薬は飲めない。 腕は漏れた血液で既に真っ黒。 点滴の針が刺さったまま。 寂しがってるじゃないか。 もうこんなこと辞めにしようよ・・・
私はこれまでに何度、看護婦に「連れて帰りたい」 と訴えただろうか。
今夜は、明日の外来担当のためにこれから主治医のK先生が来ると言うので、 面会時間が終わってからも、先生の到着を待っていた。
先生の病院到着とほぼ同時に急患が運ばれてきたとかで、 先生に会えたのは8時半を過ぎていた。
ウトウトし始めていた母に聴診器を当てると、うっすら目を開いた。 それがK先生だと認識すると、かすれた声を絞り出して 「センセー♪ 好きよ〜」 と言って細くなった腕を伸ばした。
K先生はその手を握り、「元気ですか?」 と聞いたが、補聴器もはずしているし、 今の母はもう、人の話を聞こうとする気持ちがないので、表情で会話をしているようなものだ。
私は先生とナースステーションに移動した。
先生はパソコンを操作して、入院以来の母の血液検査の結果を比較してから言った。
「先週ステロイドパルスをやって今は終わったばかりでしょう? 大量の薬を急激に減らしたために、その反動で弱ったように見えるけど、 体が慣れてくれば大丈夫ですよ。 ○○さんの場合には、これまでにもそういうことが何度かありましたよね? なぁに、まだそんなに深刻になることじゃありませんよ。
胸椎圧迫骨折の時と同じです(別の医師の言葉に私が悲観的となって即座に退職したこと) もう少し冷静になって。
CRPの値が高いのが少し気になりますけどね。 ステロイドを大量に使うと、どうしても感染症に弱くなりますからね。 あの舌の白いのもそうですけど、今、ファンキゾンでうがいをしてますよね。 今、食欲がないのは口の中や喉が荒れて痛いからなので、 うがいによってその荒れが治ってくれば食べられるようになってくると思います。 あれは飲んでもいいんです。 飲めば喉の奥の方のカビも取れますから。
白血球の数も多少、増えているけれど、やっぱCRPがね、5.8あるから・・・
今、ほとんど食べられない状態なので、このまま点滴だけでは急速に弱ります。 自宅に連れて帰れば点滴もできないので、それこそ急速に衰弱するでしょう。
少しでも、元気で長生きして欲しいのでしょう?
お父さんはいつ亡くなられたんでしたっけ? 30年前? それじゃ、まだ小学生の頃ですね。 記憶にあまりないでしょう? その時はまだ、親の死と言うものを理解できなかったでしょうね。 それでは今回が大人になって初めて迎える、 “たったひとりの親”の死と同じと言うことになりますね 」 ・・・私の考え過ぎなのか・・・ 私は急いで母を殺そうとしていただけだったのか・・・
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