Mother (介護日記)
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2003年01月13日(月) 存在の大きさ

昨夜、U氏の通夜に行くことになり、私はY氏夫婦の車に乗せてもらうことになった。


出かける直前になって黒のストッキングの爪先に穴が開き、
アッと言う間に伝線してしまった。 白い足の指が目立つ。
途中のコンビニに寄ってもらい、走行中のワゴン車の最後部座席で履き替える(^_^;)

駐車場に車を止めて歩き出してから、
先ほど買ったばかりの香典袋に、まだ名前を書いていなかったのを思い出し、
車のライトを頼りにあわてて記入していたらY氏に叱られた(T_T)

読経の流れる中、ホールには多くの人が集まっていた。
仕事関係と思われる人、町内の人、お兄さんの友達、そしてU氏の友達。

いつもの飲み仲間とこうして会うなんて・・・


読経の流れる中、コートを脱いで受付をし焼香に進む。

写真立てのお父さんは、私が知ってるままのお父さんだった。
笑顔が切ない。
焼香台の近くにお兄さんがいたので挨拶をした。
お兄さんは同じ高校の二つ上で、通学路で見かけると、
いつも、ねじったタオルを頭に巻いてゴム草履を履いている人だった(^_^;)

後で聞くと、U氏は親族とともに、祭壇前の椅子に座っていたらしい。


読経が終わって出てきたU氏が、私たちのところに歩み寄って来たと思ったら、
ほんの数秒だけ、下を向いた。
同級生の顔を見て緊張が解けたのか・・・

「遠くからありがとね」

いや、車で20分程度だし・・・
さすがに今は、いつもの毒舌で返す場面ではなかった。
私は、黙って頭を下げただけだった。



お父さんは10年ほど前からアルツハイマーが始まり、このところは寝たきりであり、
U氏も“こんな状態ならいつ死んでも仕方ないや”と思うこともあったようだが、
いざ死んでしまったら、そう簡単に割り切れるものではない。
彼自身、感情のギャップに戸惑っていた。

親を失くした誰もが「どんな状態でも良いから生きていて欲しかった」と口を揃える。



U氏は現実を受け止め悲しみに暮れる暇もなく、
葬儀の準備に追われて寝る時間もないとのことであった。

「やはり、ある程度の準備は必要だよ」




お母さんは、気丈にもいつもの明るさを保っていた。

「いつまでもキレイでいてくださいね」

「わざわざありがとうね」

「モツ煮が食べたかったな」

「また来てね」

「それじゃ、梅酒をたっぷり造っておいてね」

「去年漬けたのがあるから」

「色もキレイに出たころですかね」

ちっとも、なぐさめになっていない会話になってしまった。
私はこんなにおしゃべりなのに、どうして気の利くことが言えないのだろう。



弔問客も減り、友達6人が最後まで残った。
料理をつまみ、お酒を少し飲み、
会話の内容も次第に砕けて、毒舌の飛ばし合いもできるようにもなったが、
昼間はとても暖かいのに、やはり夜は空気が冷たい。


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