米国発 金融危機関連情報

2009年05月05日(火) クライスラー、最終赤字1.6兆円 果たして再建ができるか

 報 道

1、クライスラー、最終赤字1.6兆円 08年
                     2009年5月5日 日経
2、クライスラー、08年は1.6兆円超す純損失
                    2009年5月5日12時50分 朝日
3、クライスラー破綻: 雇用維持「信じぬ」 「勝ち組は労組」指摘も
                      2009年5月5日  毎日

クライスラーの基本データーは次の通りだ
・売り上げ  485億ドル 4兆8500億円  
・純損失   145億ドル 1兆4500億円  売り上げに対して30%の赤字

今回の決算で159億ドル(約1兆5700億円)の債務超過に陥ったようだ。債務超過の負債部分を破産法によって、カットする計算なのである。訴訟の国でそんなにスムースにことが運ぶのだろうか。

5月4日から破産法手続き終了まで、クライスラーの全工場の操業を停止する。米政府などは手続き完了までの期間を1〜2カ月と楽観しているが、もし長期化すれば、部品メーカーやディーラーなどが連鎖倒産を引き起こすのではないだろうか。

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1、クライスラー、最終赤字1.6兆円 08年
                      2009年5月5日 日経
 【ニューヨーク=小高航】米連邦破産法11条の適用を申請したクライスラーが2008年に168億ドル(約1兆6600億円)もの赤字だったことが分かった。09年は47億ドルの赤字を見込むが、伊フィアットとの提携により12年に黒字化するとしている。ただファンドなど債権者の反発で早くも再建手続きに遅れが発生。同社が破産法の下で迅速に再建できるかは米ゼネラル・モーターズ(GM)の再建にも影響するだけにクライスラーの手続きに注目が集まっている。
 裁判所への提出書類や米メディアによると、クライスラーの08年通期決算は485億ドル超の売上高に対して最終損益が168億ドルの赤字。フォード・モーターの赤字額(145億ドル)を上回り、経営の深刻さが改めて浮き彫りになった。クライスラーは再建策が順調に進めば12年に1億ドル、13年に16億ドルの黒字確保がそれぞれ可能としている。
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2、クライスラー、08年は1.6兆円超す純損失
2009年5月5日12時50分 朝日
 【ニューヨーク=山川一基】連邦破産法の適用を申請した米自動車3位クライスラーが08年に168億4千万ドル(1兆6700億円)の純損失を出していたことが、裁判所への提出資料で明らかになった。将来も、12年にようやく黒字化する見通しという。クライスラーは非上場で、決算や業績見通しを公表していなかった。
 クライスラーが4日提出した資料によると、09年には売上高が前年比で4割弱落ちるが、リストラ費用が減ることなどで純損失は47億3千万ドル(約4700億円)に縮小する。純損失はその後、10年に8億6千万ドル、11年は2億7千万ドルとなり、12年には7千万ドル(約70億円)の純利益にを計上する見通し。
 また、07年には17億ドル(約1700億円)の資産超過だったが、08年に159億ドル(約1兆5700億円)の債務超過に陥ったことも判明。今後は、倒産処理で債務が減るため、16年に債務超過から脱する見通しを立てている。
 この資料は破産助言会社がクライスラーとともに作成。更生手続きが順調に進み、イタリアの自動車メーカー、フィアットとの提携も効果をあげた場合を想定している。
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3、クライスラー破綻: 雇用維持「信じぬ」 「勝ち組は労組」指摘も
                        2009年5月5日  毎日
 「3万ドル(約300万円)あったら、ここで飲んでる連中はみんなクライスラーじゃなく、トヨタの新車を買うぞ!」
 クライスラーが連邦破産法11条の適用を申請した4月30日の深夜、米中西部ミシガン州デトロイトにある古びたバーで、警備員の黒人男性のスコットさん(29)が息巻いた。「いい車を作らなかったのだから、破綻(はたん)も自業自得さ」
 デトロイトは同社を含むビッグ3(米自動車大手3社)の総本山。「モーターシティー」と呼ばれ、かつては米国の自動車産業のみならず、製造業全体のけん引役を担った。だが、ビッグ3の衰退で今や失業率は22%。クライスラーの破綻で、街にはこれまで以上にあきらめと不安が広がっている。
 市中心部から北東へ車で約10分。操業が止まり静まり返ったクライスラーの工場そばに、全米自動車労組(UAW)の支部があった。
 1日、支部に将来の相談に訪れたクルーズさん(36)は「2週間前に一時解雇された」とため息をつく。週40時間分の給与の95%を休業補償として現在受け取っているが、破産法申請で50%に減額されるという。「(破産法申請は)想定の範囲」と言うものの、4人の子供は11〜17歳の育ち盛り。手には職業訓練校の案内が握られていた。
 オバマ米大統領はイタリアの大手、フィアットとの提携や、公的資金による支援で「クライスラーの3万人以上の雇用は守られる」と語った。だが、従業員らの世話をしていた市職員の女性、アルバラドさん(48)は「誰もそんなことを信じていないわ」。市郊外にあるクライスラー本社から出てきた男性2人も「政治だ。就任から100日で何かいいことをしようと思っただけだろ」と一笑に付した。
 クライスラーは4日から破産法手続き終了まで、ほぼ全工場の操業を停止する。米政府などは手続き完了までの期間を1〜2カ月と楽観しているが、もし長期化すれば、部品メーカーやディーラーなどが連鎖倒産し、地域経済がさらに打撃を受けることになる。
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 一方で、UAWの力が強く、従業員や退職者を厚遇してきたことが「負の遺産(レガシーコスト)」となり、クライスラーを追い詰めたと指摘する声は根強い。
 デービスさん(74)は36年間勤めたクライスラーを01年に退職。今も月約1800ドル(約18万円)の年金支給があるという。育て上げた子供は13人。「それだけの給与をもらっていたんだ」。景気が良かった92〜01年は年収が10万ドル(約1000万円)を超えた。破産法申請で年金がどうなるか心配だが、「次の木曜日に会社から説明を聞く。今後のことはそれからだ」と話す。
 1日付の複数の米主要メディアは、クライスラーの経営破綻を伝える記事の中で、「勝ち組はUAW」と指摘した。UAWは退職者向け医療基金として、現金の代わりに新生クライスラー株の55%を受け取ることになっているためだ。20%の株を保有し、「クライスラーの労働コストは日本メーカーより2割高い」と労務費削減を求めてきた提携先のフィアットですら、筆頭株主のUAWの意向を無視してリストラを進めることはできない構図だ。
 UAWは民主党の重要な支持基盤で、オバマ大統領誕生の原動力にもなった。クライスラー破綻を自ら発表したオバマ大統領は「懸命に働く労働者は救済する」と繰り返したが、発言の裏には自らの支持基盤を保護するという政治的な思惑も見え隠れする。
     ◇
 市中心部にほど近い場所にあるビッグ3最大手のゼネラル・モーターズ(GM)の系列販売店では、屋外展示場に車が10台だけ並ぶ。「かつてはあの3倍は車が並んでいたんだけど」。昨年までクライスラーで契約社員として働き、現在は同店の向かいのホテルで働くウィザーさん(29)は言う。
 そのGMも、米政府に再建計画提出を求められている。期限は6月1日だ。(この企画は、坂井隆之、ワシントン斉藤信宏、デトロイト草野和彦が担当しました)





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石田ふたみ [MAIL]

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