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2003年11月19日(水) 音の色彩を輝かせて(1)

 6年10ヶ月間、毎日1枚の日々の映像のなかで、最も感動して書いたのが盲目のピアニスト梯剛之さんのことである。この人のことは、10月14日にも書いたが、これから2日間続けて梯剛之さんと、母郁子さんの物語を記述したい。

 なにしろ、剛之さんは生後1ヶ月で小児がんに冒され両眼の視力を失ったのだ。剛之さんは言う。「僕は今、普通に歩いていますが、どうやって足を動かすのかも逐一、母が足を持って歩かせた。そうした1つづつのことをやってくれたから今の僕がある。その忍耐の力というものは計り知れないと思う」と母に対する感謝の気持ちを表わしていた。全盲の1歳児に歩くことを教えることは、母郁子さんの想像を絶する努力があったことだろう。

  ・一歩二歩 歩くこととは こうなのよ 偉大な母の 愛を讃えん
 
 N響の父とソプラノ歌手の母の元に生まれたことが、剛之さんが人間の限界を超えた才能を開花させたベースなのだろう。4歳で本格的にピアノを習い始めたという。剛之さんはいう。「5本の指を使うということが驚くほど難しい。これも忍耐のいる仕事だったと思います」と。いうまでもなく、母が全盲の4歳児に手を取って教えたのである。これがどれだけ難事であったかは想像すら出来ない。

  ・指を取り ドレミとたたいて 音ありき 耳に響くは 母の愛かな

            (本文、短歌とも1997年10月19日の日々の映像から)


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石田ふたみ [MAIL]

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