彼女と二人でドライブ。 道中、ダムの横を通った折に 彼女が突然、
「ねぇねぇ。デムさ・・・」
と言った。 デム? 思いの外、唐突に訪れた 新しい日本語との出会い。
そんな言葉あったっけ。 私がこれまで生きてきた28年間の中で 着実に培ってきた言語に対する知識。 それらの中から検索をかけ 「デム」という2文字にヒットする単語を探した。
-検索条件に一致するデータは見つかりません-
なんてことだ。 私の知識にはない単語。 それを彼女は知っていて 日常会話に用いているとは。 いや。 でも。 もしかしたら ひょっとしたら
「ダムって言おうとして噛んだ?」
「うん」
なんてことだ。 思いの外、唐突に突きつけられた 「私の彼女は天然」という事実。 2文字さえ噛むか。
「違うの。「でも、ダムって・・」って言おうとしたの!」
「でも」と「ダム」をたして「デム」か・・・。 あらゆる外来語を日本語化し、単語を略し 常に新しい言葉を作り出す若者達。 しかしながら、文章を略す試みは初めてだ。 それはもう言葉のカバーする 表現領域を軽く越えていると思う。 それはテレパシーとかの世界。
「それくらい分かるでしょー?」
にこやかに言う彼女。 彼女が私に要求している 男としての力量は 私が人間の域を越えなければ達成できない 厳しいものとなってきた。
そろそろ山ごもりが必要かと思う。
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