私は朝が弱い。
テレビで以前見たことがあるけど 起きたい時間に自然と目覚めることの出来る人が ごく少数だがいるらしい。 「明日は7時に起きよう」と眠れば ちゃんと7時に目が覚めるのだそうだ。 なんて便利なんだろう。
「明日は7時に起きますよ!」と意気込み 5分置きに30分間も目覚ましが鳴るよう バッチリセットしても、それでもなお 気が付けば昼だったりすることがある私から言えば そんなのは有り得ない話だ。
とにかく朝は弱い。 実家で暮らしていた頃はまだよかった。 母親がちゃんと起こしてくれた。 私がどれだけ布団にしがみついても 母はカーテンをシャッっと開け 巧みに布団を奪い取り 私の身ぐるみを剥いでから 「エルボー!」と心底楽しそうに 私の上に全体重をかけて飛び乗った。 さすがの私でもそこまでされたら目が覚める。
また、犬を飼うようになってからは 母も楽をすることを覚え 「お兄ちゃん寝てるねー。お寝坊さんだねー。じゃぁ起こしてあげようネー。よしっ!いけっ!」と犬を私にけしかけた。 鼻の穴から耳の穴からぐりんぐりん舌をねじ込まれ たまらず枕に突っ伏して顔を隠したら まるで土を掘るかのように私の頭を犬は掘った。 「アイタタタタ!イテーよ!」 さすがの私も目が覚める。
それから10年の月日が流れ 私を起こすのは母でも犬でもなく彼女。 私を起こす手段はいくらでもある。 目覚めのキス。抱擁。 彼女にしかできない朝の目覚め。 そして彼女はおもむろに寝ている私の鼻をふさいだ。
zzzzzz。スピー。 ・・・・・ンム。 ・・・・??う・・・・・? ・・・・・・??ンイ・・・?? ・・・ム、ムハァ!!!!・・ハァハァハァハァ・・・。
血走った目で蒼白になり、わりと息が乱れている私に向かって 彼女はにこやかにこう言った。
「おはよう♪」
うん。おはよう。 危うく違った意味で目覚めなくなるところだったよ。 母や犬の起こし方よりも更にスパルタ。 「起きないなら逝け」という潔いまでのメッセージ。
もう朝が弱いだなんて言ってられない。
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