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気まぐれ日記 DiaryINDEX|past|will
始めます。 ザブが去ってから彼女はあたりを見回した。そして、 「そろそろ、食べに行きましょうか」 立ち上がる。まだ少し早い気がしたが、ゆっくり歩けばなんてことない。店の前で少し待ってもいい、と言った気分。 虎もベンチから降りて少し伸びをする。尾を少し揺らすと彼女について歩いた。時間が経ってさきほどよりは人が増えている。もちろん、行き交う者ものの目は虎に行く。虎は知らんぷりを通していた。 「ここが夕べ新聞に載っていた店よ」 店に入ると悲鳴が上がった。 「お客さん、虎はご遠慮願います」 従業員がおびえながら彼女に言う。彼女も仕方がないと思いつつもケーキだけは譲れない。それは虎との約束もあるが、自分も食べたいからである。 「マレモンは大人しいわよ」 「しかしながら、他のお客さんが怖がりますので」 「そう、じゃあテイクアウトでお願いするわ。お茶も飲みたかったのにな。マレモン、お店の前で待っていて」 「わかった」 「すいません、お客さん」 彼女はケーキを四つと、お茶をサービスとして紙コップに入れてもらった。そのサービスには彼女も喜んだ。 店を出るとマレモンと先ほどの公園に戻り、ベンチでケーキの箱を開く。 「どれがいい? 私はどれも好きだけど。こん中から二つね」 虎は見てもどんなものか分からなかったので、チーズの匂いがする物とバターの匂いがする物を選んだ。 「ベイクドチーズとパイね」 「そんな名前があるのか?」 「どんな物にも名前はあるでしょ?」 「確かにそうだ」 「ねえ、マレモン。あなたの旅に私が付いて行ってもいいかしら?」 「どうしてだ?」 「私、どこに行っていいか分からないの。だから、宛がなくても目的があるあなたに付いて行ってもいいんじゃないかなって」 「私とともにするのは構わんが、さっきのように店に入れないことは多くなるぞ」 「いいわよ。そんなの」 彼女はそう言ってケーキを、とりわけクリームがたくさん乗ったショートケーキをほおばった。
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