気まぐれ日記
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2006年08月31日(木) そして、今夜も

 夜勤です。
 そんなわけで今から書きます。

 

 ぼか!
 グオンがイーリスの頭を殴った。少しだけ顔を歪ませるイーリス。ダメージは軽いようだ。
 「何を勝手に依頼している。王女も巻き込まれているんだ」
 「……」
 「まただんまりか? もう少し何か話してみろ」
 そもそも、イーリスの無口は少し異常だと俺も思う。
 「父上に話したら話が大きくなりすぎるような気がする」
 「そうだな」
 「グオン、こっそりビアソーイダ王に手紙書いてくれる? レイムさんを協力してくれるように」
 「まあ、いいだろ。お前よりは信用するだろうな」
 「ありがと」
 「そういうことだ」
 グオンが俺に向かって言った。
 「フォーランズとビアソーイダはお前に協力する。女神の涙を奪還してくれ」
 「ちょうどリースリーズを追いかけているだ。やってみるよ」
 「お願いします」
 その後、前金と少しの支援金をもらい部屋を出た。グオンが城の出口まで案内してくれる。というのも、ヘネシーのそばについていたいとイーリスが頑として動かなかったのだ。
 「あのさ、イーリス王子はなんであんな無口なんだ?」
 答えてくれそうもないと思っていたが、グオンは眉間にしわを寄せつつも答え始める。
 「あいつは、幼い頃に魔族に取り憑かれて言葉を失った。話せば即、その身を魔族に奪われる。話せるようになったのは最近のことだ。しばらくは何を話せばいいのかわからない状態でいたんだが、だんだん良くなってきているのだが……もともと無口なんだ、必要なことだけでも話せるようになればいいと思っている」
 「ふーん」
 そーいや、このグオンってなんなんだろう? そう考えているうちに城門前に着いた。
 「では、よろしく頼む」
 「ああ。任せてくれって言いたいところだが……」
 あまり期待しないでくれ、というのも変だな。俺は代わりに手を差し伸べた。
 「なんだ?」
 「握手しておこうと思ってな。俺の故郷の風習みたいなもんで、握手すれば思いが伝わるような気がするんだ、お互いに」
 「はぁ?」
 「勘違いしないでくれよ。別れの挨拶だよ」
 「変わった挨拶だな」
 少しためらったように見えた。それでもグオンは手を握ってくれた。ほんの一瞬だったが。手袋越しでも冷たい手。生きているという感じがしなかった。
 「じゃあ」
 とにかく宿に戻ってイザリアに知らせないと。彼女が悔しがる姿を思い浮かべると、気が少し滅入る。 

 


草うららか |MAIL

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