気まぐれ日記
DiaryINDEX|past|will
夜勤です。 そんなわけで今から書きます。
ぼか! グオンがイーリスの頭を殴った。少しだけ顔を歪ませるイーリス。ダメージは軽いようだ。 「何を勝手に依頼している。王女も巻き込まれているんだ」 「……」 「まただんまりか? もう少し何か話してみろ」 そもそも、イーリスの無口は少し異常だと俺も思う。 「父上に話したら話が大きくなりすぎるような気がする」 「そうだな」 「グオン、こっそりビアソーイダ王に手紙書いてくれる? レイムさんを協力してくれるように」 「まあ、いいだろ。お前よりは信用するだろうな」 「ありがと」 「そういうことだ」 グオンが俺に向かって言った。 「フォーランズとビアソーイダはお前に協力する。女神の涙を奪還してくれ」 「ちょうどリースリーズを追いかけているだ。やってみるよ」 「お願いします」 その後、前金と少しの支援金をもらい部屋を出た。グオンが城の出口まで案内してくれる。というのも、ヘネシーのそばについていたいとイーリスが頑として動かなかったのだ。 「あのさ、イーリス王子はなんであんな無口なんだ?」 答えてくれそうもないと思っていたが、グオンは眉間にしわを寄せつつも答え始める。 「あいつは、幼い頃に魔族に取り憑かれて言葉を失った。話せば即、その身を魔族に奪われる。話せるようになったのは最近のことだ。しばらくは何を話せばいいのかわからない状態でいたんだが、だんだん良くなってきているのだが……もともと無口なんだ、必要なことだけでも話せるようになればいいと思っている」 「ふーん」 そーいや、このグオンってなんなんだろう? そう考えているうちに城門前に着いた。 「では、よろしく頼む」 「ああ。任せてくれって言いたいところだが……」 あまり期待しないでくれ、というのも変だな。俺は代わりに手を差し伸べた。 「なんだ?」 「握手しておこうと思ってな。俺の故郷の風習みたいなもんで、握手すれば思いが伝わるような気がするんだ、お互いに」 「はぁ?」 「勘違いしないでくれよ。別れの挨拶だよ」 「変わった挨拶だな」 少しためらったように見えた。それでもグオンは手を握ってくれた。ほんの一瞬だったが。手袋越しでも冷たい手。生きているという感じがしなかった。 「じゃあ」 とにかく宿に戻ってイザリアに知らせないと。彼女が悔しがる姿を思い浮かべると、気が少し滅入る。
|