気まぐれ日記
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いや、もう、何も言うまい。
翌朝、フレクアとゼデューは町に入る。 「やっと、入れますわね」 「そうですね。でも……」 昨夜からオーフが帰ってこない。不安には思ったが、悪魔族だ。人間よりもはるかに出来は違う。 「この町にいることは確かなのですから、大丈夫でしょう」 と、言った。 門限があるとはいえ、町は穏やかで豊かだった。何よりも物価が安く、とりあえず、路銀が足りないのは免れる。それでも、悠長なことは言えないのはゼデューにもわかった。 「とにかく、安く過ごせる宿を探して、仕事を探しましょう。こうなっては牛追いでもなんでもしないといけません」 「そうですね」 安い宿はすぐに見つかった。それほど大きな町ではないので宿も多くはない。少しほっとして、宿の主人に仕事がある場所を教えてもらった。 今の時間は、役所。ウォンテッダーの仕事がある場所は、食堂や酒場とされているが役所も珍しいわけじゃない。役所の仕事は確かな情報で料金も安定している。酒場などに集まる仕事は、個人募集も含み高額のもあるため大半のウォンテッダーはこちらに集まる。ただしその情報はあいまいな部分も多くなる。 役所に足を運ぶ。ウォンテッダーを募集しているところを受付に尋ねる。部屋を教わると、役員たちがひそひそと話をしている。 「おい、昨夜の……」 「……悪魔だってよ」 と、フレクアの耳に入った。 「あの、すいません!」 「どうしたんだい、嬢ちゃん」 「悪魔って?」 「ああ、昨夜捕まえた……」 「どこにいるんですかっ!」 男が言い終えないうちに彼女は聞いた。 「知り合いかい? なら町長のところへ行くんだね」 「そこ、どこですか?」 役員が教えると、二人はそこに向かった。ゼデューはフレクアに落ち着くように言う。それで何とか彼女はドアをノックすることを忘れなかった。 「どうぞ」 「失礼します」 返事があって、彼女は中に入った。 「まあ、かわいいお嬢さん。何か御用?」 町長は女性だった。それもまだ三十代ほどだろうと思える若さだった。珍しいと思えば、珍しい。ただ、彼女の故郷に近いフォーランズなどは本来女王国家だと思うと、それほど珍しくない。 「あの昨夜、捕まったという悪魔なのですけど、私たちの仲間なんです」 「彼が何をしたのかわかりませんが、返してもらえないでしょうか?」 「そう。あなたたちが。わかりました。こちらへ……」 町長が立ち上がり、彼女たちを少し離れた客間に案内した。 「彼のことですね?」 オーフがベッドで眠っている。 「あの……?」 「この町が夜閉鎖するのにはわけがあるの」 その理由を町長が話し始めた。
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