気まぐれ日記
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年末に、雪が全くない年があった。 今年は、かなり多い気がする。
昼は甲板や廊下に人が集まるが、夜は皆、寝るのに部屋に戻る。スタウトは、毎夜のように甲板に出て、剣を振るう。その姿は一人で何かと戦うようだった。 「なあ、スタウト。いつも思うんだが何をやっているんだ?」 「ああ、俺の目の前に、強いやつがいるんだよ。今、話しかけるな」 「……」 「本気にすんなよ。そうして訓練しているんだ。想像を働かせることによって、強くなれってね。でも、想像は想像でしかない」 「それが、お前を強くしたのか?」 「ああ、だからじいちゃんも親父も強かった」 「お前の親父か……。覚えているよ、メチャクチャだった。お前ほどじゃないけど」 「切られたくなかったら、離れてるんだな、ロセウ」 誰もいない甲板で、一人踊るようにスタウトは訓練している。船員に話しかけられて、近づかないように言う。あの状態は、あまり人の声など聞こえない。 「それにしても……」 スタウトは、着々と強くなる。それは父のシンハーを超えていることがわかる。そしてとんでもない拾い物、スタウトが手にしている剣はごく一部の地域でしか使われていない片刃の剣。刀ともいうものだった。扱いは、普通の剣と違うのだが、スタウトはなんなくこなしている。それも、剣術馬鹿一族ビアソーイダ王族の一人だからだろうか。
その拾い物をしたときは、こうだった。 どこかの山道。山賊も夜盗もでない安全な山道で、スタウトは「暇」の連発していた。船旅ほどではないが。ロセウはそんな彼に嫌気がさして、自分ひとりおやつでも食べようとしたときだった。少し、先に光る物がある。それは道の真ん中に突き刺さっていた。 「な、剣?」 「そうだな」 当たり前だといわんばかりにスタウトは言った。珍しくともなんともないといった顔で。ロセウの方は驚いて、どうしてこんなところにとその剣を怪しんだ。 「へえ、これ、刀だよ。俺の伯父さんが使っていたような記憶がある」 スタウトはそれを引っこ抜いた。 「馬鹿、よせ! 呪いがついているかもしれな……」 ロセウの動きが止まる。何もなかった。それどころか、まるでスタウトを待っていたかのようだった。 「すっげー、コレなら魔族でも切れそうだ」 新たな剣が手に入り、スタウトは喜んだ。剣も心なしか、うれしそうだった。 「……」 それからというもの、スタウトはその剣を自分のものとしている。山を降りたあと、行商人から鞘を買おうとした。スタウト曰く、裸のままじゃ可哀想だ、という。彼が持っていた剣と引き換えに鞘を買った。 「いいのか? それ、お前の父親の……」 「いいんだよ。自分に合う剣に会ったらいつでも捨てろって、言われているから」 それ以来、スタウトとともにいる。
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