気まぐれ日記
DiaryINDEX|past|will
よなべーをして、劇用の衣装を作ってます。 母上は器用なのですが、そのせいで損な役回ってきます。仕事場のクリスマス会でつまらない劇のために夜なべして……徹夜ではないだけいいかもしれない。文句言いながらも。つまらない劇のための衣装を作る母上。下手に出来るっていうのは、辛いことだ。
イレグディント兵らと別れる。ミレンディの方へ向かって歩き出す。しばらく歩くと、朝方になった。
びゅん 風を切る音。一瞬首が切れたようにも感じた。ばさっと長くてうざかった髪が落ちる。 「なんだ!」 「ブロード、離れろ!」 言われたとおり彼は樹理から離れる。樹理が剣を片手に構えている。スタウトの剣術を樹理が自分のものとして使っていた。 「今のジュリちゃん?」 「すまん。カティエリを狙ったんだが……。その方が似合うぞ」 「それは、どうも」 ブロードにはカティエリの姿は確認できなかった。 「で、どこにいるんだ?」 「お前に分からないのか? こんなに匂いがするのに」 「私が見えるようにしてあげる」 妖精主の声だ。身体が急に重く感じる。それが妖精が身体に宿るということだということを知っていた。妖精に宿られると人間も魔族も同じ感覚なのだろうか、と彼は思った。昔、人間だった頃、幾度となく覚えた感覚だった。 カティエリは、気体のように宙を漂っている。それを樹理が空をむなしく切っている。 「ジュリちゃん、それじゃダメだ。お姉さん、冷気を」 妖精が生み出した冷気はカティエリを包む。気体だったものが液体のように形のない塊になる。 「いや、参った」 液体が今度は人の形になる。それが、似顔絵で見たカティエリとなった。 「初めましてになるかな?」 「やっと、姿を現したな」 「ええ、まさか、このお嬢さんがこんなに近くにいるとは気づきませんでした。お上手に隠れるのですね」 「お前ほどじゃない。全くなんて奴だ」 「お前、空気みてーな身体しやがって……」 「ええ、私はもともと水ですから。魔を求めるうちに魔族になり魔族を糧にするようになった。でも便利なようで実は不便な身体なのですよ。人間であったあなたを食することで、身体を得ることは出来るでしょうか?」 「さあな。でも、人間は溺れ死ぬから水は人間を食うことは出来るだろ」 ブロードはそう言って笑った。なぜかおかしく感じて。
|