気まぐれ日記
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あなたの知らない簿記の世界。それまで事務に無縁だったので、簿記というものがどういうものか知らなかった。 今のとこ、数学的なものじゃなくて、専門用語にやられそうだわ……。
「アニム、おめえは引っ込んでな。魔族同士なら何とかなるだろう?」 ブロードはそう言って樹理を見る。彼女は、ふんっと鼻で笑った。それが何を意味するかわからない。 「多分、無理だろうな」 樹理はきっぱりと言い放った。 「なんでだよ」 「どちらにしても、魔族としては私たちは半人前なのだ。かなうはずはない」 「それなら、リースリーズもそうだろう?」 「やつは、とっくに魔族になっていいはずの人間だったんだ。お前のように寝腐っていたというわけでもなかったし」 「じゃあ……」 「喰われるのはこちらの方だ……でも、喰われたくはないだろう? お前も、エルフも」 樹理が懐に手を入れる。アニムも例のカードを取り出した。 「へえ、精神の物質化ができるのか?」 「それが、取り柄でもあるのだ」 「ドラゴンみたいなことをするのだな」 「もともと、やつらとは近い存在らしいからのう」 「さてと、奴をどう扱う? ブロード」 「やるしかねーだろ。こっちが死なないためには」 「消滅させても良いぞ。こっちの身のほうが大事だからのう」 三人が同時に席を立った。デザートは支給人に後で食べると伝える。 そして、三人そろって甲板へ出た。暗い、誰もいない夜の甲板。すでに寒くなってきている。三人は黙る。 「あらあら、静かになってしまって……。ごきげんよう、皆さん」 リースリーズは現れた。アニムが知る姿で。その姿は、小柄な少女で黒のぴったりとした服。盗賊のような姿である。 「ああ、思い出してきた。お主は盗族だったな」 盗族はその字通り、盗みを生業にする一族。リースリーズが古いものを盗んでいたのもその影響があるらしい。 「ええ、でも今は古いものはいらないの。エルフの脳はおいしいかしら?」 「さあ?」 「そして、魔族の脳っておいしいかしら?」 リースリーズは感情のないように言う。アニムが知る彼女はまだ、感情はあった。まだ、人間に戻れるくらいに。
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