気まぐれ日記
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2005年09月23日(金) 母上におねだり

 母が休み取れたので友人たちと、どっかの温泉行くといっている。つーか、母は乗り気じゃないけど(母の)友人たちは乗り気だ。
 インターネットで宿探したら、良さげなところが洞爺湖温泉だった。
 「マミー、土産は木刀に『洞爺湖』って彫ってもらって。行けばやってくれるらしいから」
 「はあ?」
 
 ところで、前にもここで述べたような気がするけど、看護婦が看護師となった今、婦長と言う言葉はあるんでしょうか?(調べりゃいいじゃん)

 
 夏目が目を覚ましたのは、朝だった。時間的には早いらしい。もそもそと起き上がるとそこが個室と言うことに気づいた。
 「……?」
 あの病室から逃げ出して、森の診察室の前まで来たところで倒れたのは覚えていた。その後、長い夢を見た。なのに、夢は何も覚えていない。
 「さよなら?」
 その言葉だけ覚えていた。何がさよならなのかわからない。
 「やあ、おはよう。夏目君」
 「おはようございます」
 「やっぱり、君はそうなる運命だったんだね」
 「?」
 「気づいていないのかい?」
 「あ……」
 昔はそんな自分がいやだった。受け入れてからは、この身体になるのは苦ではなくなった。むしろ、楽しむようになった。
 「たぶん、もう戻れることは無いと思う」
 「男である俺は死んだってこと?」
 「そうだね」
 「もしかして、先代の王が亡くなった?」
 だから、さよなら?
 「うん。だろうね」
 「ああ、だから、なんか殺風景なんだ」
 「見えなくなって、残念だよ」
 「うん」
 夏目はすぐ退院することになった。女の夏目はいたって健康である。病院にいる必要が無い。
 「もうすぐ、この病院は面倒なことになるからね。できればしばらく近づかない方がいい」
 「何それ?」
 「内部告発するんだよ。もしかして、君にも迷惑がかかるかもしれないけど。その時は、正直に答えてくれていいから」
 「そうなったら先生が……」
 「気にしないでいいよ。私もそれだけのことをしてきたんだ」
 「でも、惜しいよ。先生、名医なんだから」
 「そう、思ってくれるのかい?」
 「話をしているだけで、気持ちが軽くなるから」
 「……ありがと、夏目君」
 「先生、こちらこそ、ありがとう」

 「十真様!」
 井上の家に行き、セリナを迎えに行く。
 セリナが夏目に抱きついて喜んだ。
 「セリナ、苦しい」
 夏目にそう言われてセリナは腕をほどいた。
 「ごめんなさい」
 「謝るのは俺だよ、セリナ。心配ばかり掛けてごめん」
 「でも、十真様。無事でよかった」
 セリナはぽろぽろと泣き出す。
 「昨日の夜、先代の王が亡くなったので病院の前まで行ったんです。本当は、先代の王が亡くなるときに十真様も連れて行こうとしたんです。でも、十真様には女王がいるから連れて行けない。だから、少しだけ持っていったそうです」
 俺の、男の部分を……少しだけを、か。
 よくわからなかったが、思ったとおりもう、戻ることはないだろう。しかし、夏目はそれで納得していた。そんなことはもう気にしてはいないから。


草うららか |MAIL

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