気まぐれ日記
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去年の今頃は暑かったことを覚えている。 が、今年はどうだ? 冷夏になるのか?
ベッドには数人の患者が寝込んでいる。症状が重いらしく口もきけない様子だった。その中に悪魔系の魔物もいる。 「良かったら休んでいってください。塔の中じゃ休むに休まれないでしょ? 食事とベッドは提供できますから。でも有料ですからね」 「あ、ああ」 料金も良心的な値段である。ダノは料金を支払った。医者は、好きななところで休んで、という。 「なんなんだ、ここは」 「でも、こうして安全なところで休めるのだから」 「そうそう、最近はベッドで寝れるだけでも幸せ感じちゃう」 タジュトやシルアが納得してるようなので彼はもう言うことはなかった。彼も、ゆっくり身体を休めるところは歓迎する。 「おい、お前ら」 悪魔系の魔物が声を掛けてきた。 「どこから来た? まさか一階からか?」 「ああ、そうだぜ」 「……そうか、一階からか。じゃあ、玄武と青龍を倒してきたんだな」 「うん、あのおっきい魔物ね」 「まだ、上に行くつもりか?」 「そうよ私たちは、頂上を目指すの」 魔物は少し黙ってから再び口を開く。 「そいつらは全部で四匹。そしてそれをまとめる奴がいる」 魔物はそういって口を閉ざした。そして、どこかへ行ってしまった。 「と、いうことは四匹のうち、二匹倒しちゃったんだね」 「そういうことになるな」 「油断はできませんわ。塔は階数があがるたび魔物も強くなります」 「私たちも強くなってるわよ」 「それでも……」 「ストーップ。もう、今日はやめよう」 それからダノは必要時以外、口を開かなかった。食事をしたらすぐベッドに入った。二人もそれにしたがった。
「朝でっすー。皆さん朝の診察が始まりまーす」 医者が太鼓をたたいて起こしている。そして、朝食を配り歩いた。ダノたちの前にもそれが置かれる。 「おはようございます。なんだか体の調子がいいです」 「おはよ、シルア。私もいい。お兄ちゃんは?」 「ああ、いいぜ。俺も」 食事を終えるとすぐに出発した。塔の中は明るくも暗くもない。やはり、昼も夜もない世界だった。 「昨日はたっぷり休んだし。それに考えたんだけどよ」 「お兄ちゃんが? なに考えてたの?」 「ああ、やっぱり俺はここで立ち止まるべきじゃないって。どんな奴が現れてもな」 「でも、お兄ちゃんってさー、楽園が目的じゃないんでしょ?」 「うーん、何でかなあ」 「きっと理由なんかないのよ、ダノさんには」 「じゃあ、お前たち二人は理由のない俺についてきているわけだな、こんな危険な塔に」 「私、お兄ちゃんについていくもん。一人はいや」 「私には目的があるからかまいません」 タジュトはドアを見つける。開けると十階への階段がある。三人はそれを上った。
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