気まぐれ日記
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十九度、それがどんなに温かく感じただろうか? 夜、ストーブを炊きたくなるような中で……。三日しか続かないらしいが。
そういえば、今読んでいる小説の登場人物に春っているなあ。(伊坂幸太郎著・重力ピエロ)まだ半分ってとこです。
彼らは街に着いた。長い間、村ばかりを歩いていたせいで彼は新しいものに餓えていた。一人を除いては。 「なかなかいい街じゃないか?」 と、ルヴィア。彼女の視線はすでに露店で売っているあぶりたての骨付き肉にいっている。 「広い街ですね。図書館などあれば見てみたいものです」 と、ロイタス。彼はあちらこちらを見渡している。悪く言えば田舎者だった。 「皆元気だなあ、僕疲れちゃったよ。早く休もー」 と、ヴィニー。彼はあくびをして言った。 「そんなに疲れたのか? なら、まず宿を決めるか」 セルヴェスは、宿選びをヴィニーに任せた。この作業は人間にしかわからない。少しくらい寒くとも、少しくらい湿気があってもドラゴンにはわかりにくいらしい。だから、宿はヴィニーが選ぶ。 「ここが、手ごろでいいと思うよ」 ヴィニーはいくつか宿を回った結果、街でも小さな宿を選んだ。 「ほう、私は構わぬが、二人は?」 「好きにしなよ。あたしはちょっと食べてくるから」 「私も、出かけたいところがありまして」 二人は宿の場所を覚えて、それぞれ行きたいところへ行った。 「セルヴェスはどうする?」 「私も疲れた。ヴィニーに付き合う」 人間に近い分、二人にはついていけないのだろうかと、ヴィニーは思い部屋の準備が出来るまで食堂でお茶をもらって飲んだ。 「疲れを取る薬茶だよ、ごゆっくり」 宿のおかみさんが、茶菓子も少し置いていってくれた。二人はそれをゆっくりと飲む。落ち着いてというわけではなく、お茶が熱いからだった。 セルヴェスが、音を立ててカップを置いた。全身に振るえが来る。 「どうしたの?」 「何か、いる。なんだ?」 「なんだって、なんだ?」 その時、後ろから声がした。 「あのお、すいません」 「なに?」 と、ヴィニー。声の主にぎょっとした。ヴィニーより少し年上の男が大きく、幅の広い、分厚い剣をしょっている。 「ここいいですかあ? 実は一人でお茶を飲んでも淋しいんです」 「はあ?」 「すいません」 男は返事を待たず、遠慮なく座った。 「ドラゴンスレイヤー。ドラゴン専門の殺し屋。違うか?」 セルヴェスが、声を沈ませてにらんだ。 「ええ、そうですけど……。何か?」 「いや、なんでもない」 「そうですか。お二人で旅をしているのですか?」 「ううん、もう二人いるよ」 「それはにぎやかですね。楽しい旅ですね」 「うん、とっても」 ヴィニーの声が暗くなる。彼は三人のドラゴンに振り回されっぱなしだった。彼らの奇行を止めてばかりの旅である。それでも、セルヴェスとロイタスは、まだ人間らしく振舞おうとしてくれるからいいのだが。 「いいですね。淋しくなくて。僕なんか……。あ、すいません。ところで、ドラゴンの噂を聞きませんか? バンドンに近い山のドラゴンが同時に三匹いなくなったんですよ。どこかで悪さをしていないかなっと思って」 「それは……」 「ない。そうだろう、ヴィニー。私たちは違う方から来たのだ。そんなことも知らなかった」 「そうですか。非常に危険なドラゴンと噂されてまして……。なにかわかりましたら、教えてください」 ドラゴンスレイヤーは、そういってお茶を飲んだ。
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