気まぐれ日記
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2005年05月21日(土) 重力ピエロ

 読み終えました。
 終わりの方で、爆笑して、ちょっと潤んでしまいました。(確かにノートに書いた人物の意味はわかったが、それがね……)
 途中、『オーデュボンの祈り』の人物が出てきてにんまりしました。重力ピエロは、この話に似てますね、なんとなく。(著者が一貫して伝えたいことは、どの本も同じかな。まだ三冊目なので)


 「ところで、お二人さん。あなた方はどうして旅をしているんですか?」
 ヴィニーとセルヴェスは似ても似つかない。兄弟でもなんでもない。年も離れているように見える。それが、このドラゴンスレイヤーには不思議だっただろう。
 「それに、僕にはドラゴンの気配を掴むことが出来るんです。あなたは、そのドラゴンだ」
 さっきまでお茶を飲んで和んでいた彼の目が鋭くセルヴェスを突いた。セルヴェスは、睨み返す。
 「そうだったら、どうする? 私を殺すか?」
 人間に近くなっただけで、完全にドラゴンから離れたわけじゃない。今の彼は、中途半端なドラゴンだった。それだけに彼が見せる気迫もすごかった。彼は、少したじろいでいる。
 「僕にはどうしてあなたがドラゴンになっているのか、わかりません。そういえば、前にもそんなドラゴンがいたっけ」
 「エミイシェル!」
 「そんな、名前だったかな」
 「お前が、やったのか?」
 セルヴェスが立ち上がって、彼に詰め寄った。彼はセルヴェスの気迫に怯んでいる。
 「い、いえ。彼女は優しかった。人間が好きだったから手出ししませんでした。僕は、人間に危害を与えるドラゴンしか相手にしません。本当です」
 それを聞くと、セルヴェスは気が抜けたように座った。
 「そうか、悪かった」
 「見たところ、あなたはそんな酷いドラゴンではなさそうです」
 「だが、私たちの仲間には戯れで人間を殺す輩もいることは事実だ。同じ仲間として、恥ずかしいと思っている。人間の身を守るためにお前のような者がいてもおかしくない」
 「そう言ってもらえると、助かります」
 それでも、セルヴェスは浮かない顔をしていた。
 「ただいま」
 「おや、どうしたんです? セルヴェス? 浮かない顔して」
 ルヴィアとロイタスが同時に帰ってきた。
 「お前、ドラゴンスレイヤーだね」
 彼の背負っている剣を見て、ルヴィアは指を刺した。
 「あなたがたもドラゴンですか?」
 「そうなるね」
 「まあ、今はこんななりですけど」
 二人は彼に対して敵意をあらわにした。それだけに、ドラゴンスレイヤーはドラゴンに影響を与える人間だった。
 「二人とも、下がってくれ。向こうでお茶でももらって飲んでいろ」
 セルヴェスは、何か思いをこめて二人に言った。
 「この人間は、お前らに危害は加えないさ」
 二人は顔を見合わせうなずいた。ヴィニーにも声を掛け、三人は用意が出来た部屋に向かった。
 「分けありのようですね」
 「ああ、分けならたくさんある。私の恋人はドラゴンスレイヤーに殺された」
 「エミイシェルさん、ですね」
 「ああ、人間が好きで、人間の姿をして暮らしていた。ドラゴンで言えば変わり者だったが、私はそんな彼女を愛していた。私は私で、こんななりで過ごさなければならない」
 「そうですか、残念ながら僕にはエミイシェルさんを殺したスレイヤーはわかりません。他のスレイヤーたちのつてがありませんからね」
 「そうか……」
 「もし、無害なドラゴンが、ドラゴンスレイヤーに殺されそうな時は、そのドラゴンを助けます」
 「ありがとう」
 「じゃ、僕はこれで。実は、この街を出るところだったんです。さよなら」
 「さよなら」
 重そうな剣を背負った男は、席を立った。セルヴェスはその剣をまがまがしく思いながらも見送った。 


草うららか |MAIL

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