気まぐれ日記
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実は、まるちゃん(東洋水産)の焼きそば弁当は、北海道でしか売っていなかった。塩だけじゃないのよ、ギター侍。 妹が、東京に行ったとき聞いてきた話だが、売ってなかったことに驚いた。そして、別のカップ焼きそば(不味いらしい)のCMでも登場する彼は、「おいしい顔ができませんから」と無表情でそのやきそばを食べているらしい。
一年が経った。彼の母はこの日が来ないことを祈っていたが、月日は無情に過ぎ去った。彼を引き渡さなければならない前日、国の唯一の魔女が彼女を訪れた。その魔女は、魔女であっても城に預けられることなく、そのまま自分の森で暮らしていたという魔女である。その魔女の森は、女王や従者を寄せ付けずにいた。ただ、たまに森から出て来てふらりと街の様子を見て帰っていく、変わり者だった。 「こんにちは」 その魔女は、そう挨拶した。 「あなたは……魔女レスティですか」 この魔女と接することは、女王陛下から禁じられていた。何故なら。女王の思い通りにならないからだ。 「心配することはないよ、気配は十二分に消したからね」 と、言ってレスティは家の中に入っていった。 「あ、あの……」 気配を消したからと言っても母は戸惑った。 「どうぞ、お構いなく。私は助言しに来ただけだからね。あんたの坊やはどこ?」 ゆりかごの中で眠る赤ん坊を見つけ、魔女は微笑んだ。しわくちゃな顔にさらにしわがよった。 「おお、めんこい坊やだこと」 節くれたの指で彼の頬をつついた。 「こんなめんこい坊やをあの強欲に渡さなければならないなんて、お気の毒に」 「……」 母は黙った。この子が女王に預けられないのなら自分はどうなっても構わない。しかし、彼女の他の者たちが、どんな仕打ちをされるのかわからなかった。自分たちはどうなってもいい、と夫の両親、自分の両親や身内は言ってくれたが、そうはいかなかった。誰もが、女王の恐ろしさを知っているからだ。 「でも、この子を渡さなければあの傲慢は何をするかわからないからね。いいことを教えてやるよ」 「なんですか。それで、この子を渡さなくてすむのですか?」 「いいや、この子が必ずここへ帰ってくるおまじないさ。だから真面目にやることだよ。まあ、おまじない自体は簡単さ。この子に名前をつけてやるのさ」 「名前をですか、でもそれは……」 女王が、魔女に名前をつけることがきまりだった。 「それを押し通すのさ。なーにアイツだって適当につけているだけなんだ。構いやしない。後生だと言って粘ったら折れるよ」 「なんて、名前をつければ……」 「願いを込めてつければなんでも」 「わかりました」 「わたしはこれで。幸運を祈ってるよ」 魔女は、そのままくるりときびすを返すと、家の出口まで向かう。 「あの、ありがとうございます」 その魔女は、振り向かずに家を出て、森へ帰っていった。
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