気まぐれ日記
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ケーキ続きで肥えそうです。一年うちでケーキが嫌いになるとき。 ああ、しょっぱいものが食べたい。
「引き止めて、本当にごめんなさい」 マルアニアが淋しそうに、もう一度言った。 その言葉が、全ての呪縛を解くような気がした。ヘネシーは身体が軽くなるのを感じた。 ガシャン ガラスが割れる音が聞こえた。ヘネシーは無意識に手が柄に伸びる。 「なんでしょう?」 「ここで待って」 ヘネシーは音のするほうへ駆けて行った。 「あ、お父様は……」 マルアニアも結局へネシーの後をついていく。 「誰だ?」 ヘネシーは数人の影を見て、叫ぶ。ついてきたマルアニアは幸い父親の部屋に入って行った。 「ここはロクなもんがねえな」 強盗だった。数は少ない。二人のようだ。 「当たりめーだ。目的はここのお嬢さんだとよ」 誰かの差し金なのか、ただ単に人攫いなのかわからなかった。ヘネシーは剣を抜き、向かっていった。強盗はまさか相手が剣を振るってくるとは思わず面食らった。そして、一瞬で片が付く。マルアニアが縄を差し出したのでそれで縛った。 「マルアニア、その部屋から出るな」 マルアニアを部屋に押し込めてヘネシーは玄関から外に出た。やっぱりいた。女の勘ではなく、自分の強い者を求める勘。 「大盗賊の頭、だな」 何か物語のように、雲が晴れて月明かりが降り注ぐ。影がはっきりとした。クセの強い長めの髪を一つにまとめ、右目のしたあたりには傷らしきものがある。 「おや、俺の部下たちは?」 のんきな口調でヘネシーに聞いた。 「悪いが、倒した」 「あ、そう。強い女は好きだけど、強すぎるのはちょっとな……」 「何か、この屋敷に用か?」 「落ちぶれた屋敷に盗るものはねえな。でも、興味があるんだ。その落ちぶれ貴族の娘に。噂じゃ、大貴族と王様に言い寄られているってな。で、あんたは何だ?」 「護衛だ。この家のものではないが、仕事はきっちりする」 「頼もしいなあ。でも、女だからって俺は手加減しねえぞ」 「構わん」 女だからと手加減するものに、彼女は手加減しない。 盗賊頭が剣を抜いて向かってくる。ヘネシーはそれをかわした。そして、今度は彼女が切りつけようとする。剣がぶつかり鋭い音を立てて交わる。 「おい、あんた。ずいぶん重い剣を使うんだな」 「お前もな」 「腕悪くしないか?」 「鍛えてるから」 一度剣を解き、二人は離れる。今度は彼女から踏み込んだ。盗賊頭のわき腹を掠める。 「うわ、早っ!」 盗賊頭が逃げるように身を引いた。 「こりゃ、出直したほうがいいな」 「もう、終わりか?」 「残念だけど、あんたの相手してれば朝になっても決着つかねえだろうし、今夜は仕事だ。割の合わないことはしない。じゃあな」 今度、ゆっくりお相手願うよ、と消える間際に言った。 屋敷に戻ると、手下二人の姿は消えていた。助けが入ったのだろう。部屋に閉じこもっていたマルアニアとその父は無事だった。 「ありがとう、ヘネシー。助かりました」 マルアニアがにっこり笑った。 「でも、そろそろあなたを自由にしないといけませんわ。あなたの大切な方が待っていますものね。だから……」 マルアニアは、一度言葉を止めてから続ける。 「あなたを、解雇します」
ヘネシーの章 了
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