気まぐれ日記
DiaryINDEX|past|will
ので、今日で終わらせるっつもり。
ブルーアの水の蔦がほどけ、彼女は二人に駆け寄った。 「やるじゃない、ロージュ」 「ま、ね」 しかし、魔族はまだ消えていない。 「グオン、あの剣本当に倒してくれんのか?」 「さあな、効果があるだけでな」 消滅させるというわけじゃない。グオンは最悪な事態を思いつつある。それが、現実に起こった。 魔族が起き上がったのだ。 「くそう、人間のくせに生意気な……」 「どうすんだよ、グオン。切り札つかっちゃったし」 「逃げ場もないわね」 ブルーアがいっそ、海に飛び込もうと思った。魔族は、こちらに歩んでくる。 「お前、剣が二本あるんだね。こうしてやろう」 魔族が腕を伸ばしブルーアの額を指で押した。それは、少し突いただけだったが、彼女は腰のもう一本の剣を抜いて、ロージュに向けた。 「ブルーア?」 「か、身体が、言うこと聞かない!」 彼女は意思とは別に、剣を振りかざした。ロージュが慌てて避ける。さっき、魔族に向かうために捨てた剣を拾った。 「あいつ、身体を操ることも出来るのか!」 多彩なる術にロージュは呆れた。振り下ろされる剣を彼は剣で受け止めた。 「あなた、剣術に心得があったのね。よかった」 「ああ、俺もよかったと思ってる」 しかし、ロージュが足を滑らせたとき、それは終わった。バランスを崩したとき手にした剣をはじかれた。更に、その場にしりもちをつく。 「お願い、逃げて!」 ロージュが逃げようにも、うまく立ち上がれずにいる。甲板に油でもまかれているかのように滑った。 そのとき、グオンがロージュとブルーアの間に立ちふさがった。剣は彼に突き刺さる。 「グオン!?」 叫んだのはブルーアだった。グオンは平然として、剣を引き抜いた。あまりのことにブルーアの力が抜ける。術もそれによって解けた。 「本当に、アンデッドだったのか……」 ロージュも、ぽかんとしている。 「はい、そこまでね」 だから、その声に全く気づかなかった。黒い長い髪の美女が現れたのも。 「オフィーリス、か」 「どうやら、あたしの知っているグオンじゃないわね」 ロージュとブルーアがぽかんとしているのを見て、「あたしのことは忘れてね」と言って、寝かしつけた。 「だって、あたしのこと呼び捨てだから」 グオンは、確かにと気づいた。オフィーリスのことを、オフィーリス嬢、と呼んでいたのだ。 「オフィーリス、なんで邪魔するんだ?」 魔族が言う。 「なんだって人間の助けをする?」 「うるさいわね。あなたは私の上等の血を殺したからよ。あの子の……べグゼッドの血は極上ものだったのに。死んだときには運命神を恨んだけれども、直接手を下したのはあなただってはっきりしたんですもの、どうしてやるか、わかるわね」 「ひっ」 引きつった悲鳴をもらし、魔族は消えていった。からん、と短剣を残していく。 「さて、と。あなたはもとの世界に返してあげないと、ね」 「出来るのか?」 「ええ、もちろん。でも、そうして親しげにしてくれるグオンに会えるのはいつかしら?」 「千年ほど先になる」 「そう、楽しみしているわ」 「しかし、この子たちは……」 グオンは甲板に倒れているロージュとブルーアを見やった。いつまでも一緒にいるわけにはいかないが、もう少し一緒にいてやりたかった。 「それなら、大丈夫よ。適任者はいるわ。まだ、あたしのことを『オフィーリス嬢』と呼んでいるグオンが、ね」 「そうだな。世話になるな、オフィーリス」 「そんなの、気にしないで。さよなら、グオン」 世界がぶっつりと消えて暗くなるのを、彼は感じた。
グオンの章 了
|