気まぐれ日記
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フェアリードール、長かったなあ。去年よりは短いと思うけど……。
「それで、妖精の女王がドールを暴走させたわけ?」 信じられないといった顔をして、梶元はコーヒーを手に取った。アイスからホットになっている。 「そういうこと、らしい。俺は寝てたからよく覚えてない」 梶元が、恐る恐るカップに口をつける。普通のインスタントコーヒーだったので、安心してカップを置いた。 「ドールになつかれたって聞いたけど?」 「ああ、まあ、そうなんだ。で、お袋が気に入っちゃって、家事を全部教え込んでいるよ」 「お手伝いさんになりつつあるんだ」 「それが、セリナちゃんと同じで、失敗することがあるんだ。この間、塩と砂糖間違えていたんだぜ」 「ふうん」 夏目は、少し笑った。セリナも同じことをたまにやる。 「月一でメンテやった方がいいよ」 と、製作者の一番の悩みの種を教えた。 「でも、スティック社つぶれただろ。どこでやってくれんだよ」 「それなら、井上さんが引き受けてくれるってさ」 会社がなくなり、美紗は井上の会社に入りたいと頼んできたので紹介した。井上は、上に聞かないと分からないと答えたが社長の山田は喜んで美紗を受け入れた。スティック社のドールデザインが気に入っているからという理由らしいが、同じ女性であるから、ということもあるらしい。更には、スティック社員の一部もスタッフに入れたいと逆に申し込んだ。 それによって、スティック社のドールのメンテナンスも井上の会社で引き受けることになったという。 寛大な会社だよな、と夏目は思う。セリナについてのことも、井村についてのことも。 チャイムが鳴る。 「はい、どちら様ですか?」 「セリナさん、私、美紗です」 夏目はふと思う。セリナが来てからうちに人が来るようになった、と。 「いらっしゃい、美紗さん」 「こんにちは、セリナさん。夏目さんいる?」 「ええ、ここにいますよ」 「どこに?」 セリナの横にいる夏目を見ても美紗は分からなかった。 「ああ、本当に何も聞いてないんだ。美紗さん」 美紗が、ものすごく驚く様子を梶元は大いに笑った。 「だって、女の人の姿しか見てないから……ぜんぜん分からなかった」 ソファーを勧められて美紗が座る。 「ずっと、元に戻らなかったからね……」 たぶん、女王が出てきたくてうずうずしていたのかもしれない。女王が出てくるには女の姿の方が都合が良いのかもしれない、と夏目は思う。 「なあ、夏目。この姉ちゃん、紹介してくれ」 「美紗さん。元スティック社のデザイナーだよ。梶元さんところに来たドールも多分、美紗さんがデザインしたものだよ」 「ほとんどのドールをデザインしたから……。今度、あなたのうちへ見に行ってもいいかしら」 「もちろんです。美人は大歓迎です」 「ありがと」 梶元のお世辞を笑顔で受け取る。 「あの、美紗さん。これ、どうぞ」 セリナが美紗にコーヒーを勧めた。 「あら、気を使わせちゃったわね。ありがとう」 数秒後、美紗の妙な悲鳴があがった。 終わり
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