気まぐれ日記
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ネタがない。うーん……。
井村は続けて言う。 「あるときから変な景色が、重なって見えるんだ。医者に言っても追い返されたけれどな」 「……」 「……」 夏目はしばらく黙っていた。 「君も見えるんだよね、夏目さん」 彼は、うなずいた。それしか出来なかった。 あの原因は説明しようがない。今では彼はその景色にすっかり慣れてしまい、その景色のことでセリナと語り合うのが当たり前になってしまった。 「何とかしてもらいんだが、どうしようもないようだね」 「……はい。見て見ぬふりが一番かもしれません」 「まあ、いいさ。じゃあ、セリナに会わせてあげるよ。井上も来い」 「いいのかい? ライバル社の開発者が入っても」 「ああ、お前が入ったところでうちの技術が盗まれるってことはないだろ。お前んとこの技術の方が上だしな」 「じゃあ、ありがたくそうさせてもらうよ。僕もセリナに会いたいからね」 井村の案内で、社内の地下に向かった。そこはドールの安置室で、まだプログラムされていないドールが並んでいる。そこは暗く静か過ぎてそのドールは死んでいるようで気味の悪さを感じた。 そこを進むと、ドアがある。 「ここに君のセリナがいるよ。さあ、入ってくれ」 井村はドアノブに鍵を差し込んで回す。そして、ドアを開けて夏目に入るように促した。 夏目は静かに入っていった。 「十真様……ごめんなさい」 セリナはぐったりと横たわっていた。 「いいんだよ。セリナは悪くない。それより、充電が必要だね」 「はい……閉じ込められてから出ようとして、いろいろ考えたら電力が消費してしまいまして」 井上は内ポケットから充電パックを出した。それをセリナの電源コードに取り付ける。 「持ってきておいて良かった」 「井上さん、すいません」 「悪いのは、この会社の人だからいいの。井村、セリナは連れて行っていいんだな」 「ああ、もちろん。ただし、俺はこのままだと解雇なんだ。井上の会社に入れてくれ」 「……はあ?」 「頼む」 「そんな都合よく入れるかな……」 井上は、渋々と承諾した。承諾したのは井村は腕利きだからだ。 「俺から、お願い」 夏目は井村に向かって言った。 「この子にちゃんとした名前と、マスター認識プログラムの消去を頼むよ。じゃないと、かわいそうだから」 「かわいそう? ドールがか? 面白いこというね」 井村は笑った。しかし、夏目の言うとおりにすると約束した。
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