気まぐれ日記
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2003年11月29日(土) フェイントついてみました。

 いや、いいんですけど。これでフレクアが旅立つことで、新たな『ウォンテッダー』の物語が始まります。こうやって、どんどか話が増えていきます。つまり、自分の首を絞めるのと同じ……。

 フォーランズには三日で着いた。順調で何事もない船旅だった。まあ、それでいいのだが。船を降りると、止まっていた馬車から、少年が降りてきた。赤毛の十六、七の少年。イーリスだった。
 「よう、イーリス」
 「ビアソーイダ王から手紙がきたから……」
 「それで、俺たちを迎えに来たってわけか」
 イーリスがうなずいた。
 「あの馬車に……」
 「サンキュー。助かるぜ。おい、お迎えだってよ」
 バルクたちが馬車に乗り込む。イーリスも最後に乗った。
 「久しぶりね、イーリス」
 「うん」
 「相変わらずらしいのう」
 「うん」
 イーリスは、酷く無口だった。
 彼は、五年ほど前魔族に取りつかれ、声を出すことで完全にその魔族に支配される、というものだった。しかし、その魔族をアニムが排除したため、彼は口を聞くことができるようになった。もともとが無口ゆえか五年も口をきかなかったゆえか、彼の言語が著しく低下し、何かを聞かれても「なにを言ってよいかわからない」という状態である、らしい。ただ、単にしゃべる言葉を選ぶのが面倒、ということもあるらしいが。
 「ヘネシーは元気か?」
 「うん」
 「そうか、そりゃそうだよな」
 「あのなあ、会話、よく成立するな」
 と、ブロード。イーリスの返答はあいまいでブロードにはよくわからないらしい。
 「気にするな。イーリスは極度の無口なんだ」
 「無口ねえ」
 「あ、そっちの人は?」
 「そうだった。知らなえよな。こいつはブロード。棺桶で六百年くらい寝てたんだと」
 「棺桶?」
 「誤解すんなよ。ただちょっと仮死状態になってただけだからな」
 「……不死者?」
 「そうだ、不死者だ……って、わかるのか?」
 「一人、いるから」
 「まさか……」
 ブロードが絶望的な顔をする。
 「あ、グオン元気?」
 と、ルイの明るい声。
 「うん、まあ」
 「そうよね」
 ルイが話を続ける。その横でブロードは、あの女性至上主義者を思い出していた。


草うららか |MAIL

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