狂ってしまう状態は、笑ったり泣いたりする状態の延長線上にあるものだ。 著しい自我の崩壊が訪れた時、人は発狂し、他人に狂人扱いされるのである。 しかし、その狂人にとっては狂っている状態が自然なことに思えている。 少なくとも狂っている間は。 つまり素直に感情を爆発させているのでそれは健康的といえば健康的なのである。 きっと狂った後というのは気持ちがいいのである。 私が今までに狂ったことがあるかどうかは覚えていない。 どれほどの規模の感情爆発をすることによって人は狂人と呼ばれるのか。 実は私は、狂人に憧れている。 しかし他人に自分が狂人になった様を見られるのが怖いばかりに私はそうならないようにしてしまう性癖がある。 それは簡単に言ってしまえばイメージトレーニングである。 あらゆる自我の崩壊に陥れられる状況を想像し、頭の中でシュミレーションさせることにより、私は狂人にはなり得ないのである。 少なくとも今のところは。 ただ、私は密かに自分が狂人になることを夢見ている。 本当に夢で見ることもある。 自分が狂人になった姿を。 夢の中での私は世の中は公害に満ちているからと自宅に篭もりっきりであることが多い。 そうして自宅の自室で日長ヒステリックにキャーキャーとやっているのである。 そんな夢から覚めると私はいつもキャーと一声上げながら起きる。 もしかして夢から覚める前にもキャーキャーとやっているのだろうか。
× × ×
しばらく経った日のこと。 私は近所で自分に関する噂を小耳に挟んだ。 それは私が夜中中キャーキャーとやっているというものだった。
―END―
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