| 2003年11月21日(金) |
どうせ阿呆なら踊る阿呆 |
「劇前死亡」 大変なことになった。 もうすぐ、某公会堂にて、寺崎淳吾の一人芝居が行われる・・・はずだった。 が、演出家である私が、先程最終チェックのために寺崎の楽屋に行ったら、なんと、彼は死んでいた。 しかも、明らかに状況から見れば、それは他殺であった。 その状況を見た瞬間、なぜかデジャ・ビュ(既視感)を覚えた。 他殺された死体なんて、今までに見たことないのに・・・ それにしても一体誰が・・・? まぁそれは今はいい。 言い忘れていたが、私は寺崎とは兄弟で、しかも彼とはうり二つである。 私は迷いに迷ったあげく、皆にはヒミツで自分が一人芝居を行うことにした。 淳吾の控え室は、やつのズボンのポケットに入っていた部屋の鍵で閉めておくことにした。
芝居の最中のこと。 ふと、淳吾とマネージャーの仲が、最近悪いことを思い出した。 そのことは、淳吾自身からから聞いた話だった。 舞台袖を盗み見ると、そのマネージャーが、何やら驚いた表情でこちらを凝視している。 もしかしてあいつが犯人か? まさか・・・。
休憩になった。 一部と二部の間に、15分の休憩があるのだ。 私は、淳吾の控え室に戻ることにした。 なんと、ドアは開いていた。 そして何と、死体は消えていた。 もしかして犯人が? ということは、犯人は、舞台で演じている人間が淳吾でないことをもう知っただろう。 もう休憩は10分を過ぎた。 舞台袖に戻らないといけない。 私はそこへ通じる廊下を急いで進んだ。 すると、途中で例のマネージャーに出会った。 彼は言う。 「お芝居も上手いんですね」 彼はそこを立ち去った。 私は呆然とした。 が、すぐに冷静になり、残りの休憩時間を時計で確認し、舞台袖に向かった。
二部の芝居の最中。 袖にやつはいる。 無表情にこちらへ顔を向けていた。 私は気が気でなかった。 だが今のところ芝居の役をきちんと演じている。 奴が誰か人と耳打ちしているのが見えた。 何を話しているのか?
もうすぐ芝居は佳境に入る。 私は死体を演じなければいけない。 はっ、奇しくもさっき、本物の死体を見たばかりだ。 参考になるだろうか?
芝居は終わった。 私は廊下に出て、自動販売機のコーヒーを飲んだ。 すると後ろから足音が聞こえてきた。 「兄さん」 何と、死んだはずの淳吾であった。 「いや、兄さん俺の立場ないよ。」 あれ、もしかして・・・いや、そうだ。淳吾は・・・ 「兄さん気付くの遅いよ、もちろんさっきのはそういう(他殺に見せかける)芝居だよ、劇中にもあった・・・」 そう、私は淳吾の控え室に入った時、デジャ・ビュを覚えた。 それもそのはず、それは、芝居に出てくる他殺を演じる稽古中の淳吾だったのだ。 確かに気付くのが遅かった。 すっかり弟、淳吾は、現実の世界で殺されたものだと思っていた。 だから、脳がそれらを結び付けようとしなかったのかもしれない。 同じ廊下の向こうの方で、淳吾のマネージャーがこちらを向いてニヤニヤとしていた。
(完)
―END―
ついしん TVである女性が、<女は脳でなくて、子宮で考える>と言っていたが、そう考えたのは、脳でないのか?
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