| 2003年10月28日(火) |
テンポとミュージック |
映画とは何だろう? 何でもいい。 個々の創り手が、それぞれに的確なビジョンを持っていれば、何でもいい。 少なくとも、それは映像と音(セリフ、効果音、ミュージックetc・・・)で成り立つものである。 もっと言えば、映像があり、音があれば(もしくはなくても良い)、ストーリーがなくても成立する。 また、言葉を変えれば、映像にさえ拘れば、映画には個性が生じる。 あとは味付けである、とも、大胆ながら言える。 バランスは必要だが。 よって、味付けも重要である、と一応言っておけば、もっともらしいだろう。
大抵、映画を観る場合、前もってどんなものかを知ることになる。 ストーリーはともかく、あらすじくらいは目にしたり、少なくともジャンルはどんなものか?くらいは気にして選択する。 みなさんはどのような好みがあるだろうか? 人それぞれだと思う。 今更語る必要も無いが、映画には様々なジャンル、いや、ジャンルでは括れないようなものもあるし、とにかく映画の数だけの映像世界がある。 が、最近の映画には個性が感じられないし、あったとしても、どういうところを観客に楽しんでもらいたいか、というのがはっきりしない映画が多い。 あったとしても、皆かぶっているのである。
昨日観た「Kill Bill」、好みが分かれる映画だろう。 どうやらR−15指定らしい。 それもそのはず・・・(以下一部省略)。 監督はクエンティン・タランタィーノ。 今回が四作目。 二作目の「パルプ・フィクション」は、カンヌで最高のパルムドール賞を受賞。 ビデオでそれを観た時、(こんなものがカンヌで最高の賞になるなんて、カンヌも心が広いなぁ)と思った。 つまらないのによく選ばれたなぁ、という意味ではない。 賞に選ばれる映画と聞くと、大抵シリアスな人間ドラマを想像する。 が、「パルプ・・・」はそういった映画とはかけ離れた、内容はまさにパルプ・フィクション(三流小説)なものである。 ではなぜ、そんなのが賞を取ったのか? ひとえに脚本、編集、音楽のおかげである。(ひとえではなかった) 脚本がいい、というのは、構成がいい、ということである。 三つの独立した物語が時系列に沿って描かれるのでなく、あっちこっちに飛ぶ。 編集の緩急がある。 音楽が抜群にいい。(と筆者は思う) それ以外に特にいいことはない。 話はバカバカしい。 だが、そのバカバカしさも、いいと言えばいい。 時間が長いのに、あまり気にならない。 見終わって、何も残らないような映画だ。 あれは何だったんだ・・・というようなものである。 しかし、面白い映画だった。 映画としての面白さで言えば、ベスト10に入れてもいい。
「パルプ・フィクション」を思い出して感じた。 映画って言うのは、ストーリーではなく、テンポなんだ!と。 小説よりも、テンポを押し付けるメディアなんだ、と思った。 字を読ませるよりも、映像を見せるというのは、受け手には負担である。 小説は、読み手が想像するという自発的な面があり、その分押し付けがましくない。 が、映画はストーリーに加え、映像も見せるのだ。 かなり押し付けがましいメディアだ。 だから、そこでテンポが重要なのだ。 ずっと速ければいい、ていうものでなし、じっくり見せればいい、というものでなし、である。 はっきりいえば、ストーリーが単純であるほど、映画には都合がいい。 受け手が考えている間にどんどん話が進み、話がこんがらがってくるような映画は、受け手にテンポを感じさせない。 そもそもカオスなところを味わってもらうのが目的のものは別だ。(キューブリックの映画とか) スピルバーグの「激突!」なんて、話はいたってシンプルだ。 ただ一台の乗用車が、タンクローリーに追い回されるだけの映画だ。 オチらしいオチさえない。 なのに案外評価が高い。 「激突!」で言えば、あの手この手で、観客をハッとさせる演出が、最後まで効いていた。
映画はストーリーを語るものではない。 形を見せるものだ。 そう、形と捉えた方が良い。 ワンショットの長さ、画、音、そしてそれらの繋がりによって映画は形成される。 ストーリーに拘ると、画が似たようなものだらけになる。 映画は見せるものだ。 何を物語るか、でなく、何を見せるのか、をもっと考えた方がいい。 もちろん、ストーリーとの兼ね合い、バランスは、うまくとらなければいけない。
「Kill Bill」は、まさにシンプルなストーリーを痛快なミュージックとテンポで見せ切った、映画らしい映画だ。 映画らしい映画とは、見せて魅せる映画のことである。 どんなものを観客に見せるのか? どうやって興味をもってもらうのか? そういったコンセプトがしっかりしたもの、そして独自のものであるものが、僕は、映画としては面白いと思う。
結局言いたいのはこういうことだ。 タンランティーノ作品は、話がどうってことないのに、面白い。 彼は映画らしい映画を創る希少な監督である。 映画好きとしては、オススメの監督で、特に「パルプ・フィクション」がオススメだ。 話が難解でないから、見やすいのも、普段観ない人にはいいだろう。
―END―
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