「?の飛行船」
どうやらその船は、晴れた日の、それも昼下がりの午後に浮かんでいるらしい。 これを今までに見たことがある人は、ざっと1000人ほど。 目撃した人達の証言によると、その船の両側面には「?」の文字がデカデカと 描かれているらしい。 実際それを見た瞬間は、「おぉ・・・」と口をあんぐりとさせずにはいられないら しい。そして気がついた頃にはすでに、晴れ渡る青空のどこに目をやっても、そ れはあとかたもなく消え去ってしまうという。その間およそ2秒弱。
他の目撃証言はこんなかんじである。 「その飛行船には窓らしいものが一切無かった。中には誰がいるのか・・・」 「だいたい普通の飛行機と同じ位の高さを飛行してたと思ったら、急に目の前を 通って行ったのでビックリした。」 「大きさは・・・東京ドームくらいかなぁ。」 「船体は主にねずみ色で、<?>の文字は黄色だったような・・・あれ?もしか したらその逆かもしれない・・・」 と、こんなかんじである。
本当のことを言おう。ここだけの話、僕はこの飛行船の正体を知っている。 今現在、五月二十八日。時刻は十四時二十八分。 われわれの調査によると、中には三人の調査員と二人の操縦者が乗っている。 この五つの生命体達はどうやら、とっても美しい星からやって来た生命体らしく、 理由は分からないが、この地球を滅べすべく故郷の星へ連絡を取り、戦闘部隊を 呼ぼうとしている所だった。そんなことをされれば、地球の明日がなくなってし まう。 マズイ!このままでは。このことを知ったのはつい昨日であり、その飛行船は 19世紀の終わり頃から地球に潜伏し、今に至るまでその1000人ほどに目撃 されながらも今日に至っているらしかった。
そしてそれは昨日の出来事。僕はこの非常事態を相棒のミス・マーガレットと供 に発見した。しかし彼女は五月二十七日、十四時三十一分に命を落とした。 そのときは丁度、彼女がその非常事態のことを上司に報告しようとしていた時で あった。マーガレットは、他の人にその美しい星からきた生命体にとっての秘密 を伝えようとしたからそうなってしまったのだと推測した。 僕は彼女の命を無駄にしない為に、一人で飛行船に戦いを挑むことを決めた。
現在は五月二十八日、十四時三十分。もうやるしかない。僕は覚悟を決めて、飛 行船が現れるのを待った。今日は絶好のピクニック日和だ。
来た!意外にあっさりと現れた。と同時に僕は船体めがけて彼女の形見である矢を放った。 「ザスッ!!」 ?の飛行船はみるみるうちに萎んでいき、終には跡形もなく消えてしまった。 「やった!」 それは十四時三十一分のことだった。 戦いは終わった。 でも安心はできない。いつまたそんなような飛行船がやってくるか、分かったも んじゃない・・・ 明日は、明日にやってくる。 −END−
[ぢぇんのコメント] ふっ・・・これが<コラム的なもの>か?<物語的なもの>の間違いではないのか?
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