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言の葉
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2004年03月22日(月) 別れの瞬間-12


入試の発表も終わって
4月から晴れて大学に通うことになったボクは
その日
新しい部屋に引っ越すために
部屋の片付けをしていたんだ

一年間のいろんな思いを呑み込んだ
その部屋とも明日でお別れ
田舎から母親も上京していた

部屋の片付けも概ね終わって
フトンの周りに積み上げられた段ボールの山
一仕事終えた母親は先に銭湯に出掛けていった

遅れて部屋を出ようとしたボクが
鍵をしめていると
部屋の中で電話が鳴っている

母親が何か忘れ物でもしたかと思って
あわてて鍵を開けて
電話に飛びついた




押すと言葉がかわる投票釦


今日この瞬間を逃したら
もう二度と話ができないのを知っていたかのような
微妙な瞬間だった

「もしもしー、久しぶり。元気だった?」
彼女が電話してきたのには理由がある
現役で東京の大学に合格していたボクは
あえて留年して地元の大学を受験していたんだ

そしてどうしても別れたくないって
渋る彼女を説得するためにだした



押すと言葉がかわる投票釦


「で、受験どうだったの?」と
楽しげに尋ねる彼女の声
その明るい響きになんともやるせないものを感じたボクは
「ウン、受かった」ってウソをついていた

「そう、じゃあ本当にお別れなんだね」
一瞬にしてトーンダウンする彼女
「ああ、仕方ないよね」
ぶっきらぼうに答えるボク
ウソを並べる自分に嫌悪を感じながら

「そっかー、残念だなー。
 アナタに会わせて神奈川の方に就職したのに」
「でも東京に遊びにきたらまた会おうね」
「なんだかいろいろ話たいことがあるんだ」
 …
電話の向こうで話し続ける彼女の声を聞きながら
どうしようもなく拘泥していたあの頃を思い出していた

チン
電話の中で小さな鐘が鳴った
「別れ」というけじめをつけるかのように

受話器を置いて
銭湯に出掛けたボクのアタマの中は
妙にすっきりとしていたんだ

ボクにとっての別れの瞬間は10月のあの日であり
彼女にとっての別れの瞬間は3月のあの日だった

こうして人は互いに
隠し
誤解し
すれ違っていくものなんだろうか

これはボクだけが抱える病なんだろうか

++++++++++++++++++

月曜日から終電が無くなるまで飲んだくれて
早朝にこんなこと書いていること自体
やっぱりどこか欠落してるに違いない(笑)





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