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言の葉
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2004年03月20日(土) 別れの瞬間-10


朝方はしとしとと雨模様だったんだけど
二人で公園に向かう時には
日が差していた

「なんかごちゃごちゃ話している間に
 いい天気になってたんだね」って微笑む彼女
「なんだかここ最近の事が夢のよう…」

さっきまでの部屋の中の空気がウソみたいに
気持ちの良い秋晴れの空の下
ボクたちはあいているベンチに腰掛け
なんとなくボンヤリと話していた

「実は私、アナタに隠していたことがあったの」




押すと言葉がかわる投票釦


瞬間彼女の顔がサッと曇った
「そう、わかっていたんだ。何かその印でもあるの?」
さも残念そうに尋ねる彼女

別にわかっていたわけでもなんでもない
これまで彼女が語った事以上に
本人にとって話にくいことがあるとしたら
そんな所かと想像しただけであって
そんな印が初めて女性のカラダを見たボクにわかるはずもない
でも絶対ありえそうにない事を答えたつもりだったボクは
見かけはどうあれ正直いって動揺していたんだ

…そう、あの二人目の下宿屋の息子が
全然避妊なんてしてくれなくて
私は妊娠しちゃったの
でももちろん高校三年生の私が産めるはずもない
アイツったらオジサンに泣きついて
医者のお金だしてもらったんだよ
情けないったらないよね
だったらしなけりゃいいのに…
だったら避妊すればいいのに…

…生理がこなくて、子どもができたってわかった時
目の前が真っ暗になった気がして
もうどうしたらいいのかわからなくなって
死のうと思った
ほらここに傷があるでしょ?
一生懸命死のうとしたんだよ
でも
でも、どうしても死ねなかった
笑っちゃうよね
アンナクズノコデモ殺シチャイケナイ
なんて思って
その後堕胎してるんだから
結局殺してるのにさ…

30分以上一人で語り続ける彼女に
ボクは何を言えただろう
たった数年の人生経験の違いとはいいきれない
なんとも切なく重い思いを
ボクには受け止めることなんて到底できやしない
彼女自身それがわかっているから
この時になって初めて話したんだと思う

「最期にこんな暗い話してゴメンネ」
泣き笑いする彼女はこれまでで一番美しく見えた
何も隠さず何も気取らない人の姿は
こうもすがすがすく見えるものなんだろうか
ボンヤリとしたアタマの片隅でそんなことを考えていた

最期のキスは彼女の涙の味がした
ちょっとしょっぱくそして切ないキス
それが二人の最期のはずだったんだ…



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