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Sail ho!
Tohko HAYAMA
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Sail ho!:映画「マスター&コマンダー」と海洋冒険小説の海外情報日記
19日(木)にトップガン

今度の木曜日3月19日21:00〜22:54
木曜洋画劇場で、なつかしの「トップガン」の放映があるようです。

テレビ東京HP
http://www.tv-tokyo.co.jp/telecine/oa_thu_load/

関東がテレビ東京なので、あとはテレビ大阪とか愛知とか、ひょっとしたら大都市圏だけの放映になってしまうかもしれないんですけれども、

今にして見ると、この主人公って単細胞な奴だなぁとも思うんですけど、
でも、むかしここに書きましたけど、この映画が公開された冬はスキー場でこの曲に乗ってガンガン滑った…いわゆる青春思い出…っていう映画かもしれません、私にとっては。
それにしても、F−14トムキャットが今やもう懐かしの機体に入ってしまうとは。
何度見ても、あの朝靄の飛行甲板から始まるオープニングが大好きです。

Kさん>情報ありがとうございました。


2009年03月16日(月)
ベタニーの歴史映画、英で6日公開

ポール・ベタニーが重要な脇役をつとめる歴史映画が3月6日から英国で公開になっているようです。
タイトルは「The Young Victoria」
表題からおわかりのように、ビクトリア女王の若き頃を描いた歴史ドラマです。

英新聞の映画レビューや、映画紹介サイトなどの情報を総合すると、
17才で即位することになったビクトリアが、周囲から若すぎる女王と見なされつつも、政府内の権力闘争や、政略結婚という名のヨーロッパ国際政治など大人たちの思惑が渦巻く宮廷に果敢に立ち向かい、少しずつ地歩を固めていく時代を描いたドラマのようです。

ベタニーの役は、即位時の首相、メルボルン卿ウィリアム・ラム。女王にとては信頼のできる、だがつむじまがりで意地悪な(reliableand wry)政治家…だそうですが。
この人物についてちょっと調べてみたのですが、ウィリアム・ラムは1779年生まれ…ということはほぼアダム・ボライソーと同年代ということになりますが…、子爵家に生まれイートン校からケンブリッジ大学を経て、1806年から国会議員を務めています。
1834年、1835-39年、1839-41年と首相職にありました。
1837年に即位したビクトリア女王に、政治の何たるかを教える役を勤めましたが、選挙で大敗し政争に敗れ、首相を辞任しました。
保守的な貴族政治家で、当時の新興勢力であった中産階級をあまり重要視しない傾向があった…とのこと。

この映画を彩るもう一つの要素は、後に夫となるアルバート公とのロマンス…と言って良いのかどうか、国際政治における政略結婚の駒として送りこまれたアルバートは、自分もまた駒であることを知るビクトリアとチェスをしながら意気投合、友情と信頼を深めていく…という展開だそうです。

この映画レビューを読んでいると何となく、これって去年の大河ドラマ「篤姫」みたいな話?…とか思ってしまったり( 碁とチェスと友情)、
もちろん日本と英国では社会習慣や事情も違いますが、知的で勇敢な女性が、荒波にめげず宮廷を果敢に渡っていく…あたりの面白さは共通するのかな?などと、

まぁこの映画、日本公開になることはまず無いだろうと思いますが、DVDになったら英国から購入してみたいもの、と思い始めています。
1830-40年代って意外と空白なんですよね。
1820年くらいまではナポレオン戦争関連の小説やら映画やらがありますし、ビクトリア朝後期…19世紀後半については小説や映画もいろいろあるのですが、この時代のことは意外と抜けていて、そのあたりの興味もあって、ちょっと注目の映画だったりします。

「The Young Victoria」スタッフとキャストは以下の通り:

監督: Jean-Marc Vallée
脚本: Julian Fellowes

キャスト
Emily Blunt …… Queen Victoria
Rupert Friend …… Prince Albert of Saxe-Coburg and Gotha

Miranda Richardson …… Princess Victoria, Duchess of Kent
Mark Strong …… Sir John Conroy
Jim Broadbent…… King William IV
Harriet Walter …… Queen Adelaide
Paul Bettany …… William Lamb, 2nd Viscount Melbourne

Thomas Kretschmann …… King Leopold I of Belgium
Jeanette Hain …… Baroness Louise Lehzen
Julian Glover …… Arthur Wellesley, 1st Duke of Wellington
Michael Maloney …… Sir Robert Peel
Michiel Huisman …… Ernst I, Prince of Hohenlohe-Langenburg
Johnnie Lyne-Pirkis …… Prince Ernest Augustus, Duke of Cumberland
Liam Scott …… Prince Augustus Frederick, Duke of Sussex
Dave A. Hewitt …… Henry Howard, 13th Duke of Norfolk
Danny Dalton …… the Prince of Prussia
Sophie Roberts …… Lady Emma Portman
Rachael Stirling …… Anne Sutherland-Leveson-Gower, Duchess of Sutherland

参考サイト
imdb
http://www.imdb.com/title/tt0962736/

wikipedia
http://en.wikipedia.org/wiki/The_Young_Victoria

official web site
http://www.theyoungvictoria.co.uk/

Independent review
http://www.telegraph.co.uk/culture/film/filmreviews/4937942/The-Young-Victoria-review.html

Lord Melbourne
http://www.bbc.co.uk/history/historic_figures/melbourne_lord.shtml


2009年03月15日(日)
ニュース二題

今週は小さなニュースを2つ。

オブライアン・フォーラムによれば、12月に死去した海事史家で海軍博物館館長のコリン・ホワイトの公の葬儀が3月3日にポーツマスの教会で執り行われました。
ネルソン研究の第一人者であったホワイト氏の葬儀には、ネルソンの血を引くアナ・トライブ氏(エマ・ハミルトンの娘ホレイシアの子孫)も参列されたとのこと。

詳細は英語ですが、こちらの書き込みを。
http://www.wwnorton.com/cgi-bin/ceilidh.exe/pob/forum/?C350e5a913KHc-7001-1127-90.htm


こちらのニュースは、日本のyahooにも出ていましたが、
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090303-00000065-scn-int(日本語)

グーグルアースのおかげでスコットランドの英国海軍潜水艦基地がまる見えになってしまい、英国防省はグーグル社に抗議しているが、状況はあまり改善されない…という記事。

スコットランド・ファスレーンのクライド海軍基地って、ダグラス・リーマンの「原潜救出」とかクリス・の「ニミッツ・クラス」とかに出てくるあそこですよね。
小説のイメージから想像すると、スコットランドの荒涼としたロッホの奥に隠れた、一般人には容易に近づけないところ…という印象なんですが、げにおそろしきはインターネットというか、
そりゃ軍事衛星が軌道上をまわっている以上、第二次大戦当時のような軍港の機密はありえないんでしょうけれども、それはあくまでCIAのお仕事で…とか思ってましたから。一般人でもワンクリックで容易にまる見え…っていうのは、びっくり。
今でも横須賀の米軍基地は、ゲート前の錨の写真を撮ろうとしただけでも衛兵に誰何される、一般の人は海の日しか軍港は見学できない、等といろいろ厳重じゃないですか、それなのにこれってなんだかあまりに落差が大きくて。


2009年03月08日(日)
エリザベス一世時代の技術革新

米国のパトリック・オブライアン・フォーラム(掲示板)の書き込みによれば、
2月21日(土)に英国のテレビ放送BBC2で、午後8時から「Elizabeth's Lost Guns」(長年知られることのなかったエリザベス一世の砲)という番組が放映されました。
この番組では、エリザベス一世時代の海軍軍艦の強さの秘密が明らかにされています。
以下、BBCのホームページからこの番組の概要をご紹介します。

原文はこちらです(写真もあります)
http://news.bbc.co.uk/2/hi/science/nature/7899831.stm

16世紀半ばヘンリー八世の時代、海ではフランスやスペインに押され気味だったイギリスですが、16世紀末エリザベス一世の時代になると、その艦の火力を恐れられるようになります。
スペインのフェリペ二世も、英国艦の砲撃力の高さについては用心するよう、アルマダ海戦以前に警告を受けていたことがわかっています。
しかし、いったい何がイギリス艦の砲撃力を高めたのか、その攻撃力の秘密が何であったのかについては、これまで解き明かされてはいませんでした。

このたび、英仏海峡のチャネル諸島沖の海底から、1592年に沈んだエリザベス一世時代のピンネースが発見され、昨年夏、その大砲の一部が引き揚げられました。
引き揚げられた2門の砲については、当時の方法・材料で復元され、発射実験が行われました。
その結果、この砲の射程は1マイル(1.6km)、当時の砲撃戦における相手艦との交戦距離100ヤード(91m)では、ガレオン船のオーク材の船体を撃ち抜く十分な破壊力があることが証明されました。
更に、このピンネースが搭載していた砲12門が全て、鋳鉄、同一規格で、同一砲弾を共有していたことが明らかになっています。

帆走軍艦が同一規格の砲を搭載し、同一規格の砲弾を使用するのは、18世紀の海洋小説では当たり前の話ですが、エリザベス一世の父、ヘンリー八世の時代には行われていませんでした。
ヘンリー八世の旗艦メアリーローズ号は、砲のサイズも砲弾のサイズも異なる様々な陸戦用の大砲を、艦の諸処に搭載していたことがわかっています。
これらの砲は破壊力も射程も異なるものでした。

ところが今回確認された1592年のピンネースは、砲の搭載方法が大きく異なります。
それまでの艦には存在しなかった、一種の砲列甲板(a gun platform)が存在し、そこに同一規格同一砲弾の小型砲が並ぶという設計になっていたのです。

海事史を専門とするSalford大学のエリック・グローブ教授によれば、「これは戦争のメカニズムを完全に変えるもの」であり、
オクスフォード大学の海事考古学者メンスン・バウンドによれば、「これにより集中砲撃が可能となった」

ピンネースは比較的小型船ですが、100ヤードの破壊力を持つ12門の砲で集中砲撃を行えば、大型のガレオン船とも十分にわたり合うことができます。
この艦が沈んだ4年前に当たる1588年、イギリスはアルマダ海戦で、数で勝るスペインに対し勝利を得ました。
この勝因については、焼き討ち船による夜襲、スペイン艦に十分な水深が無かったこと、暴風雨により艦隊が分散を余儀なくされたこと、などが従来挙げられてきました。

今回発見されたピンネースは小型船であり、アルマダ海戦の主力であった大型艦も同様に最新式大砲で武装されていたか否かはわかりません。
が、この革新的な同一規格の砲が、イギリス艦に有利に働いたことは多いに考えられると、このBBCのドキュメンタリー番組は結論づけています。


2009年03月01日(日)