Sail ho!:映画「マスター&コマンダー」と海洋冒険小説の海外情報日記
英オブライアン・ウィークエンド2006の大物ゲスト
米国ノートン社のオブライアン・フォーラム(掲示板)に、大物の書き込みが。 コリン・ホワイト氏って、あの「ネルソン提督大事典」の著者の方です。
4月2日の日記でご紹介した、英国・ポーツマスで9月29-10月1日に開催される「パトリック・オブライアン・ウィークエンド2006」 その詳細が決定したとの書き込みでした。 講演者のお一人に、パトリック・オブライアンの義理の息子にあたるニコライ・トルストイ伯爵が招かれ、継父の思い出を語られるようです。 (オブライアンの再婚相手は元トルストイ伯爵夫人。現伯爵はその子息)
コリン・ホワイト氏自身も講演者のお一人ですし、この催し本当にメンバーは豪華です。 詳細は下記。 www.royalnavalmuseum.org/PatrickObrianWeekend2006.htm
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「やわらかい生活」という邦画を見ました。
主人公の優子(寺島しのぶ)は、一流大学を出て一流企業でバリバリに働くキャリアウーマンだったが、両親と友人の事故死をきっかけに精神のバランスを崩し、会社も辞めざるをえず、全てを失ってしまった。 ネットで知り合った「趣味の良い痴漢」Kさん(田口トモロヲ)に食事に誘われて来た町蒲田は「粋のない下町」、どことなく優子をやわらかく包んでくれた。 優子は蒲田に引っ越し、この町を紹介するHPを立ち上げる。
退院はしたものの、躁鬱病を抱える優子は蒲田の町で淡々と暮らしていく、地元から都議会議員に立候補しようとしている大学時代の同級生(松岡俊介)に再会したり、HPを見た鬱病のヤクザ(妻夫木聡)を思い出の場所だというタイヤ公園に連れていってやったり、仕事も結婚生活も破綻した従兄祥一(豊川悦司)が福岡から逃げるように転がりこんできたり、
このように書いてしまうと、優子も彼女にかかわる男たちも、不幸のどん底にいるように見えるけれども、この映画に流れる時間、彼らの触れあいはあたたかくて、決して不幸ではないように感じられる。
監督が描きたかったのは「時代感」。 今をあくせく生きる人たちに「皆、そんなに無理してがんばらないで」というメッセージ、だそうだけれども。
正直、ぐさりとイタカッたのは、たぶん私が毎日、時間に追われながら、かなり「がんばって」生きているかもしれないからなのか。
優子や祥一を見て「自分はあぁなっていなくて良かった」なんてことは全然思わなくて、あぁわかる!と共感する一瞬がある。 誰にとっても、どこかでグサリとくる…それがおそらく2006年の今の日本の「時代感」なのだと思う。 こんなふうに、突然、本流の流れからドロップアウトせざるを得ないことって、あるのだろうと、誰にとっても決して他人事ではないのだろうと。
「そうなったら怖いな」とこれまでは思っていたけれど、 この映画を見て感じたことは、そうなってもその先にはそれなりの時間とそれなりの幸福があるのだということ、 それは今の忙しい毎日よりひょっとしたら「やわらかい」時間なのかもしれない。
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来週末は、家族旅行のため、更新はありません。よろしくお願いいたします。
2006年07月30日(日)
セントラルパークのヤギエロ
7巻から初登場する、リトアニア人のヤギエロですが、このお方、欧米のオブライアン掲示板ではかなり前から有名人でした。 これは7巻が出た暁には、ご紹介しようと思って、ずっとストックしていたネタです。
米国ノートン社のオブライアン掲示板の書き込みによれば、「ヤギエロ一族」は、東欧では昔から名の通った名家で、米ニューヨークのセントラルパークには銅像まであるとか(アメリカのファンの人はこれを見に行くそうな)。
ヤギエロ一族は、14世紀に歴史の表舞台の登場したリトアニア大公家を祖とし、 一族の力は、その後現在の北部東ヨーロッパ全域に及び、一族からはポーランド王(1386–1572)、ハンガリー王 (1440–1444 および 1490–1526), and ボヘミア王(1471–1526)を出している。
リトアニア語での正式な綴りは、Jogailaitis、ポーランド語ではJagiellon、ハンガリー語ではJagajłavič、ボヘミア(チェコ語)ではJagellonec。 「J」の音は、英語の「Yes」のY音だと言うので、日本語では「ヤ(Ya)」というよりは、「ィヤ(iYa)」というか、ちょっとI音の混じった発音になるのかと。
ニューヨークのセントラル・パークにある銅像は15世紀のポーランド王だったKing Jagiello。 写真は下記↓ http://www.centralpark2000.com/database/king_jagiello.html
公園内の場所は、79thストリートのメトロポリタン美術館の裏になります(下記地図参照) http://www.centralpark2000.com/products/map/map_76e.htm
2006年07月23日(日)
丸善からネルソン提督ゆかりの万年筆が
丸善から、ネルソン提督と、エマ・ハミルトンにちなんだ万年筆が限定販売されるそうです。
これは昨年のトラファルガー200周年にちなんで、英国Onoto社が製作した記念の品。 ボディの「ビクトリーシルバー」は、ビクトリー号の修復課程で採取された銅を混入した銀とのことです。
詳細はこちら↓ 丸善ニュースレリース http://mis.maruzen.co.jp/home/release/2006/release20060713.html
このニュースはSさんからいただきました。 ありがとうございました。
2006年07月17日(月)
海賊十選
唐突ですが、牛若丸と弁慶のお話はごぞんじですか? しばらく前に友人のブログで、最近は歴史ヒーローの逸話を知らない人が多い、という話題がありました。 日本人であれば誰でも牛若丸と弁慶と五条大橋を知っているわけではないのだそうです。
いや何故いきなり牛若丸(義経)の話かというと、 欧米での海賊大人気にオドロキ呆れる今日このごろだからです。 「パイレーツ・オブ・カリビアン:デッドマンズ・チェスト」は、ロード・オブ・ザ・リングもスターウォーズもスパイダーマンも蹴散らす、世界歴代1位のオープニング興収だそうですね。 みなさん、そんなに海賊お好き???
いや、これがお好きみたいなんですね。欧米では。 パイレーツ前作でインタビューを受けたオーランド・ブルームが、「そりゃ子供の頃は海賊ごっこをやってたから、撮影は楽しかった」と答えた時、私はこれってリップサービス?と思ったものでした。 だってオーリはまだ30才にはなっていない…どう考えてもテレビゲーム世代なわけで、日本の同世代の子供時代の日常から考えると家の中でテレビゲームにはまっていても、ホントに貴方、海賊ごっこなんてレトロなことやってたの?と思うわけですよ。 なにせ海賊が活躍したのは16〜17世紀、日本で言えば戦国〜江戸時代の話しなんだから、これ日本で言えばチャンバラごっこでしょう?
昔のイギリスの子供たちが海賊ごっこで遊んでいたのは、ピーターパンを読んでもアーサー・ランサムを読んでも自明のことです。 でもあれは60年以上前ですからね。 そのころは日本だってチャンバラごっこをしていました。 ランサムの子供たちよりちょっと下になる私の老父なども、討入りごっこ(赤穂浪士の討入を模したチャンバラ)の思い出があるという。 海賊と赤穂浪士はともに17世紀で、時代的には同じでしょう。
でも、もはや「若い人」には分類されなくなってしまった私でも、子供時代にチャンバラごっこなんて…、周囲の男の子を見てもそんな外遊びはしていませんでした。 仮面ライダーごっこをして足を折ったという男の子の話しを「うそ〜」と思って聞いていて「だってあれは特撮じゃない」と悟っていた可愛くないテレビっ子でした。 テレビゲームはまだなかったけど、外遊びと言えば、テレビや漫画に憧れて、野球とかバレーボールとかテニス(バトミントンのラケットで軟球を打つマネゴト)とか。 チャンバラやらずに剣道習ってた男の子はいたけど、これも何か剣道まんががあったんですよね。 私の世代ですらそうなのですから、今の日本の30才に満たない世代はチャンバラなんてまず絶対にしないでしょう。
ところがです。 この春だったか「ナルニア国」のインタビューを読んでいて、私はちょっと驚きました。 四人兄弟を演じた子役たちが、空き時間にセットで海賊ごっこをやれたのが楽しかった、と言うのです。 この発言者は年少組ではなくて、スーザンを演じたアナ・ポップウェル。 え? 今でも英国人は海賊ごっこをするの? …とすると、オーリの幼少時体験もあながちリップサービスではないのか???
この海賊人気の秘密…および英国の子供たちの今の外遊びの実態を、ぜひぜひ知りたいものです。
さて、アメリカ・ニュージャージーの地方紙「Newdays」は、この海賊人気を、 「海賊はロマンチストなアウトローだから」と分析しています。もっとも現代のマラッカ海峡あたりの海賊は、モーターボートに乗りマシンガンで武装して、ロマンのへったくれもないようですが。 映画の世界の海賊は、Newsday紙に言わせれば「歴史とファンタジーを挽肉機にかけて作ったハンバーグみたいなもの。ハンバーグが嫌いな人はまずいない」 そして、欧米で人気な古今東西の海賊十選を紹介しています。
第10位 Patchy and Painty 米国で1993年から放映されているアニメーション「SpongeBob SquarePants」のキャラクターでアイパッチをした海賊。 2003年に劇場映画化され、数々の商品化がされている…らしい。 詳しくは下記参照 http://en.wikipedia.org/wiki/SpongeBob_SquarePants
第9位 Jean LaFoote 米国では有名なマスコット・キャラクター。Quaker Oats社のシリアルのマスコット・キャラクターであるキャプテン・クランチの敵役。 シリアルを積んだ船団を狙う海賊ラフィットと、護衛船団の指揮官クランチ艦長の戦いをシリーズ化したシリアルのCM(アニメ)は1966年〜1988年まで放映された。 クランチの本名はホレイショ・マゼラン・クランチだそうで、CMは最初、海尉から始まりクランチが艦長へと出世していくストーリーだったそうです。 クランチ艦長はこちら http://en.wikipedia.org/wiki/Cap'n_Crunch 海賊ラフットはこちら http://scoop.diamondgalleries.com/scoop_article.asp?ai=3377&si=125
第8位 Blackbeard and Jean Lafitte 海賊ラフットのモデルとなったのは実在の海賊ジャン・ラフィット。 ラフィットの物語は監督アンソニー・クイン、主演(ラフィット)ユル・ブリンナーで映画化されました。 「The Buccaneer」 http://www.imdb.com/title/tt0051436/ 実在の海賊を描いた映画として今ひとつ有名なのは、Raoul Walsh監督の「Blackbeard the pirate」 http://www.imdb.com/title/tt0044426/。 Walshはグレゴリー・ペック主演の「艦長ホレイショ・ホーンブロワー」の監督でもあります。
第7位 Crimson Pirate 50年前のジャック・スパロウと言えば、バート・ランカスターのCaptain Valloと「The Crimson Pirate」だそうな。 18世紀のカリブ海が舞台…とくれば時代も場所もまさに同じ。
第6位 The Dragon Lady ドラゴン・レディ(龍姫)の異名を持つライ・チョイ・サンは、漫画としては古典と言えるMilt Caniffの「Queen of the Pirates」(海賊の女王)の主人公。 Pat RyanとTerry Leeで1940年に映画化、1952年にはTVシリーズ化もされた。 中国の女海賊というとアーサー・ランサム・ファンとしては思うところがおありでしょうが、そう考えるのは我々だけではないようで、 同じことを考察された方のHPはこちら http://www.humboldt1.com/ar/literary/lilius.htm
第5位 Jack Sparrow 今やジャック・スパロウは、興行収入を呼び込むディズニーの宝箱。
第4位 The Black Pirate 世界最初のテクニカラー長編海賊映画「The Black Pirate」。 ダグラス・フェアバンクスが1926年に脚本・主演したサイレント・ムービー http://www.imdb.com/title/tt0016654/
第3位 Errol Flynn なぜかここだけ役名ではなくって、俳優名。 「Captain Blood」(1935)、「The Sea Hawk」(1940)などで印象的な私掠船乗りを演じ、ダグラス・フェアバンクスの後継者と呼ばれたハリウッド・スター。 Captain Blood http://www.imdb.com/title/tt0026174/ The Sea Hawk http://www.imdb.com/title/tt0033028/ 一昨年公開されたデカプリオの「アビエイター」ではジュード・ロウがフリンを演じてましたね。
第2位 Captain Hook 子供たちが初めて出会う海賊はたぶんジェームズ・フック船長だろう。 ジェームズ・バリの戯曲「ピーターパン」に登場する海賊船長である。 1960年のTVシリーズでは、Cyril Ritchardが、1991年の「Hook」(監督:スティーブン・スピルバーグ)ではダスティン・ホフマンがフックを演じていた。 Hook http://www.imdb.com/title/tt0102057/ 2004年の「ピーターパン」ではジェイソン・アイザックスがフックでしたね。
第1位 Long John Silver 海賊の中の海賊。 ロバート・ルイス・スティーブンスンが1883年に書いた児童文学「宝島」は、今日の全ての海賊の原型となっている。 1950年の「Treasure Island」ではRobert Newtonがジョン・シルバーを演じた。 Treasure Island http://www.imdb.com/title/tt0043067/
「Newdays」の記事原文はこちら: http://www.newsday.com/features/printedition/ny-ffmov4799626jul02,0,5865141.story?coll=ny-features-print
2006年07月16日(日)
勢古宗昭海洋画展 2006
毎年恒例となった海洋画家 勢古宗昭氏の個展、今年も昨日から東京・渋谷の東急本店8F美術画廊にて開催されています。 来週水曜19日までです。
勢古宗昭 海洋画展 7月13日(木)〜19日(水)11:00〜19:00(最終日19日は17:00) 東急本店 8F美術画廊 東京都渋谷区道玄坂2−24−1 (東急本店のHP http://www.tokyu-dept.co.jp/honten/index.html)
本日、閉店15分前にすべりこんできました。 あまり広くはない画廊なので、見るだけなら10分あれば十分ですが、あの世界から目を離せなくなりますから、15分で閉店というのは悲しかった。
トラファルガー100年からの流れなのか、去年に引き続き、英国の帆走軍艦を描いた作品が数点展示されています。 表のギャラリーに面した代表作3点の真中「雄魂」という作品が目を引きます。
明るい青の海と空、フルセイルに一杯の風を受けて帆走する英国艦隊、 ポーツマスまでジェフ・ハントの絵を見に行かずとも、日本国内でこんなに素晴らしい絵を目のあたりにすることが出来るなんて!
東京近郊在住の方>ぜひぜひ渋谷まで足をおのばしください。 昨日今日と東京は無茶苦茶暑く、熱中症でばたばた人が倒れているそうですが、例えこの暑さに半死半生になっても、この絵は一見の価値あり、その労苦に十分むくいてくれます。 この連休、冷房のきいた部屋に閉じこもって、この絵を生で拝まずに終わるなんて、そんな勿体ないことなさらないでくださいね。
この外気に触れたら溶けてしまうと仰る貴方> 東急本店へは渋谷駅構内からシャトルバスが出ていますから、外気にほとんどあたらずとも往復できますよ。 いやもう、ぜひぜひ。いらしてくださいませ。
絵の前に立って見ているだけでうっとり。 この海はやっぱり地中海なのかしら。青が違う。 お隣の日本丸を描いた絵は、明らかに見慣れた太平洋の青なのだけど、
個人的にお気に入りなのは、画廊内部の奥手にかけられた、アガメムノン号を描いた作品です。 海がより深い青…藍で、引き締まった感がある。 何より、アガメムノン号は、ジャック・オーブリーが海尉時代に乗っていた(設定になっている)艦ですし。
そして歴史海洋絵画といえば、なにより特筆すべきなのは、今回 「函館湾に停泊する開陽と回天」 という絵が展示されていることです。 これって、榎本武揚が函館に回航した、旧幕府海軍の艦ですよ。 今年のお正月に放映された新撰組続編の「五稜郭」にも登場しました。 たしか回天って土方歳三の「アボルダージュ!」で有名な宮古湾海戦に参加してませんでしたっけ? ちょっとばかり…感涙。じーんとしてしまいました。
それは…アガメムノン号だって、今はもうありませんから、もはや見ることの出来ない光景を絵画の中に再現していることには変わりないのですが、 開陽も回天も五稜郭軍とともに沈んでしまいましたから、その分余計に、今や絶対に見ることのできない夢の光景を見ているような気分にさせられます。
2006年07月14日(金)
サプライズ号の水面下
M&Cのサプライズ号を演じるために20世紀FOX社に売却され、現在はサンディエゴ海事博物館に係留されている"H.M.S."Roseですが、 この船の建造やセイル・トレーニングに関わってきた関係者に、今も不定期に配信されている「Rose Newsletter」に、この船とM&C続編をめぐる最近の動きが述べられているそうです。
残念ながらRose Newsletterそのものはネット上に公開されていませんが、米国のラッセル・サイトに寄せられた情報によると、 20世紀FOX社が水面下で、何とかM&Cの続編を製作しようと動いていることは確かのようです。 そしてその話は、ラッセル・クロウも承知している模様。 やはり、FOXの経営陣に異動があり、トム・ロスマン体制になったら話が動きだしたようですね。 でもこの話は実らない限り、表面には出てこないようですから、ファンとしては実現することをひたすらに祈り、待つことしかできません。
とにかく監督が決まらないことにはどうにもなりませんね。 その監督…一時名前が挙がっていたリドリー・スコットは先日、次回作が決まりましたから(グッチ一族の話かなにか)除外して考えて良いでしょう。 その逆にピーター・ウィアーはつい先日、次回監督作品がぼしゃってしまったそうですが、でも「続編はやらない」とかなりきっぱり断言していますから、やはり無理でしょうかねぇ。
低空飛行ながら何とか続いている当サイトといたしましても、もう一度帆を張って大海原に舞い上がりたいと密かに願っておりますので、20世紀FOX社さまにはひたすらお願い申し上げる次第です。
2006年07月09日(日)
外国翻訳小説の日本での映画化―ゲド前記
先週は時間不足から更新が半端で、申し訳ありませんでした。 アメリカの友人が日本に来ていて一度会おうと言っていたのだけれど、土曜の晩に相談してみたら日曜しか空いている時間がないことがわかった…という次第。
ひさびさに会って互いの近況以外に話題といえば、両国で同じものを見たり読んだりする映画とか、小説(私にとっては翻訳小説)。 彼女は海洋小説は読まないのですが、ファンタジーの分野では多少、共通の話題があります。
指輪物語やナルニア国物語の映画の話をして、 もうじき日本では「ゲド戦記」がジブリでアニメーション映画になるのよ、と言ったら、初耳らしくて驚いていました。 マニア筋を知らない一般的アメリカ人であろう彼女でも、アカデミー賞をとったジブリ・アニメーションは見ています。
さて、その「ゲド戦記」の公開が近づいているわけですが、アメリカの翻訳作品を日本で映画化するという点で、私が案じている点は2つあります。 ひとつは、日本人が日本語翻訳を通じて描いたアースシー世界と、アメリカ人が英語で読んだ原作のアースシー世界の間にイメージの乖離はないのか?ということ。 ふたつめは、今回のストーリーは原作3巻だけではなく4巻にも一部踏み込むとのことですが、かなりフェミニズム色※の強い4巻を日本人男性が監督した場合、配慮点が微妙に異なる可能性があり、その点をアメリカ人女性が見た時にどう思うのか、とうことです。
※フェミニズム:日本で言うフェミニズムとアメリカのフェミニズムには価値観の差違があり、アメリカで言うフェミニズムは日本よりはるかに、日本で言うところのウーマンリブ色の強い(最近はジェンダー問題と言うのかしら?)ものです。 私はこのあたりきちんと追いかけているわけではないのですが、新聞などで漏れ聞き推測するに、日米のジェンダー観には相当な落差があるようなので。女性の私でもアメリカのジェンダー問題は理解できているとは言えないし、日本の女性でもゲド4巻にとまどう方はいらっしゃるので。それは社会の違いだから仕方ないとは思うけれども、これは結構微妙な問題をはらんでいるのではないあかなぁと。
今回の映画化にあたり、製作者は日本語版翻訳者に、解釈が違うところなどあったら指摘してくださいという依頼をされたそうですが、翻訳者は、自分の翻訳は一つの解釈なのだから、それをもって正とすることは出来ないと、製作者に解釈を任せたという話がネットに載っていました(読売新聞のサイトからリンクしている製作者サイトだったと思います)。
この翻訳者の方のあげられた理由は、原語と翻訳で2回、同一の小説を読んだ方なら理解できることでしょう。 どんなに良く出来た翻訳でも、自分が最初に原語で読んだ時に思い描いた映像と、翻訳で日本語を通して思い描く映像とでは、どうしても微妙な差違が出てしまう。 それは、英語と日本語ではリズムが違うし、ある単語の内包する意味範囲が微妙にずれますから、本当に致し方ないことではあるのですが。 翻訳者の訳した日本語版原作が絶対のテキストではないのです。
そのあたりの話をアメリカの友人にしたのですが、彼女いわく、でもひとつめのイメージ解釈の違いは、英語の日本語のという問題ではないのではないの?と。 言語の違いよりはるかに大きい解釈の違いがあると思うわ、と言う。その例として指輪物語を挙げていました。 彼女はロード・オブ・ザ・リングを、もちろん母国語である英語で読んでいるわけですが、「あの映画は私の思っていたロード・オブ・ザ・リングじゃない。あんなバケモノがうじゃうじゃ出てくるような話じゃないわ!」と言うのです。 いや、それは全く私もその通りだと思いますが。
私は日本語、英語という原語の違いにこだわりすぎているのでしょうか?
ともあれ間もなく公開となる「ゲド戦記」 海外でも50ヶ国で公開が決まっているそうですが、海外での解釈評価がどうなるのか、日本での評価とどう異なるのか、それが言語世界によるものなのか、それともロード・オブ・ザ・リングのように演出解釈によるものなのか、そのあたりに興味があって、楽しみにしています。 それと、日本語版を見る前にこんなことを言うのは何かもしれないのですが、英語吹き替えの海外版もぜひ見てみたい。 良い機会だから、原語のリズムでアースシー世界を感じてみたいな…と思います。 うーん、六本木ヒルズあたりで英語版の上映ってないのかしらん。
英語吹替版のゲドは誰になるのだろう。 …という話を別の友人にしたら「紅の豚のフランス語版みたいにベストキャストになるといいね」と言われました。 私、今まで知らなかったんですが、フランス語版の豚さんはジャン・レノだったんですね。ぴったり!感激! じゃぁ英語版は誰?と思って調べてみたら、英語版の豚さんは、ティム・バートン版「バットマン」でブルース・ウェインを演じたマイケル・キートンでした。
個人的希望としては、ゲドの声にはクリストファー・リーのお名前を挙げたいと思いますが。いかがなものでしょう?
2006年07月08日(土)
更新の助け船はドードー鳥
日曜日に急遽、外出することになり、テキストを作ることができませんでした。 ので、今週は、マチュリン先生がモーリシャス島で探していたドードー鳥に、お茶を濁してもらうことにしました。申し訳ありません。 これ、先週の水曜日に出ていたニュースなんですけど、
モーリシャス島でドードー鳥の完全な骨を発見!(このニュースは日本語) http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060626-00000061-kyodo-int
ニュースもとのBBCを調べてみましたら↓(こちらは英語) http://news.bbc.co.uk/2/hi/science/nature/5113372.stm モーリシャスに入った調査チームの一部は、イギリスの自然史博物館の方だそうです。 現代に続く英国の伝統ということでしょうか?
調べているうちに、このようなHPを見付けました。日本にも先生のような方はいらっしゃるということですね。 http://www2u.biglobe.ne.jp/~KA-ZU/
2006年07月03日(月)
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