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Sail ho!
Tohko HAYAMA
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Sail ho!:映画「マスター&コマンダー」と海洋冒険小説の海外情報日記
その時歴史が動いた 薩英戦争

6月21日(水)、いつものように9時頃に帰宅した私は夕食を食べながら夕刊をながめて「えっ!」と声をあげました。

「その時歴史が動いた 幻の大艦隊・イギリスから見た薩英戦争」 地上波総合22:00〜22:43

し、しらなかった! もっと早くわかっていたら「Sail ho」にupしたのに!
残り時間45分ではテキストを作っているうちに番組が始まってしまいます。
仕方なく、とりあえず、DVDをセットして、メモをとりながら番組を見ました。

薩英戦争とは御存じの通り、1863年に薩摩藩が英国海軍と鹿児島湾で衝突した戦争を言います。
無礼にも薩摩藩主の大名行列を横切った英国人を、藩士が斬り殺した生麦事件に端を発した争いです。
英国は賠償金と責任者の処罰を要求し、これを突っぱねた薩摩は攘夷に走った。
というのが日本側の歴史ですが、

今回の放送ではこれを、英国側から見ています。
実は英国には当初、戦闘の意図はありませんでした。
彼らがねらっていたのは、あくまで圧倒的な海軍力を背景に日本側に圧力をかけることで、実際に武力を行使する予定はなかった…いえ、行使しようにも当時は、第二次アヘン戦争や太平天国の乱の鎮圧に忙しく、日本に派遣できる艦隊はなかったのです。

このあたりの事情を、英国側資料を中心に追っていったのが、今回の番組です。
詳しくは下記NHKホームページを。↓
http://www.nhk.or.jp/sonotoki/2006_06.html#02

6月27日(火)に再放送が予定されていますが、上記ページにもある通り、諸事情(というかたぶんワールドカップ)により、確実な再放送時間は当日朝の新聞で確認されるようにお願いいたします。

再放送:6月27日(火)16:05〜16:48 地上波NHK総合


海洋小説を読み慣れて、英国側のものの見方に親しんでいくと、今回の薩英戦争のケースも「あぁなるほど、この人たちったらまたこうなわけね」と思われることでしょう。
ところがどっこい。対する日本は英国がそれまで対してきたアジアの国々とはちょっと違って、予想外に知恵がまわり、手痛い反撃を受けます。

それまで鎖国をし、一見、西洋の近代化に取り残されたように見えた日本が、黒船来航以来のわずかな時間で、自前で大砲を鋳造したり、砲台を建設したり…という過程は、江戸時代の文化程度をよく知っている私たち現代の日本人から見れば、さほど不思議なことではないのですが、彼ら英国人の立場から見れば、これは確かに脅威だったかもしれません。
大名行列を横切ったというだけの理由で刀を振り回し人を斬り殺す野蛮人が、鉄製の150ポンド砲を備えた砲台を建設し、天下の英国艦隊に甚大な被害を与えるのですから。

薩英戦争当時の英国艦隊旗艦だったユーリアラス号上の混乱は、日本と戦った国の艦の話ではあるのですが、
いろいろ海洋小説を読んできた身からすると、何だかどこかで読んだ話のようでもあり、容易に想像がついて妙な親近感まで感じるという不思議な体験をいたしました。

でも、あの途中に挿入された映像は、どこまでが正しいのかしら?
アヘン戦争当時、木造帆走軍艦ってどの程度まで主力だったのかしら?
あの映像、あれでいい?…とかまぁ、ちょっと疑問に思う点はあるのですが。

よろしかったら、ぜひ火曜日の再放送をご覧ください。
なかなか面白い番組だと思います。


ところで、
オブライアン7巻、発売になりましたね。
今回いちばんのびっくりは、「え…?ヤギさんだったの!」でした。

ハンサムな騎兵将校のヤギエロ。原語ではJagielloとつづります。
「Ja」は英語では「ジャ」、スペイン語では「ハ」…と、言語によって発音が変わることは知っていましたが、リトアニア語であ「ヤ」なんですね。
まさかヤギさんだと思わなくて、なんとなくジャギエロ…だと思いこんでいたので、ちょっとびっくりでした。


2006年06月25日(日)
頭蓋骨手術セット 7500ドル

Nさんより面白い情報をいただきました。
もとは大手のブログに出ていた情報とのことです。

18世紀の頭蓋骨手術セットがオークションに。
なんと7500ドル!!!
既に落札済みですが、こちらでまだ写真を見ることができます。
ずーっと下に降りていってくださいね。
http://cgi.ebay.com/FABULOUS-COMPLETE-CASED-TREPHINATION-SET-c-1750_W0QQitemZ7412446848QQcategoryZ1210QQrdZ1QQcmdZViewItem

上記URLは器具の写真のみなので、これだけならば普通の日曜大工道具セットとあまり変わらないかと。(それも問題?)
Nさん>ありがとうございました。

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関東地方限定かもしれませんが、映画情報です。

テレビ東京 6月22日(木)21:00〜22:54 「サハラに舞う羽根」
http://www.tv-tokyo.co.jp/telecine/oa_thu_load/index.html

19世紀の英国陸軍、スーダン派兵の話です。ヒース・レッジャー&ケイト・ハドソン主演。
英国好きなら見て損はないと思います。
日本公開は2003年9月でした。私は結構はまって、原作や1930年代の前回の映画化作品(「四枚の羽根」というタイトル)までDVD購入したりしておりました。

今見るとまた感想も変わるでしょうか? 映画公開時は今よりもイラク情勢がもっと緊迫していましたから、この映画評もいろいろだったと記憶しています。


…ところで、米国のパトリック・オブライアン・フォーラム掲示板ですが、まだ熊の話しが続いています。
この「クマねた」いつまで続くんでしょう?(嘆息)


2006年06月20日(火)
国際指名手配熊&大西洋手こぎボート横断

JA [aka JJ1] wanted - dead or alive!(JA:もしくはJJ1、指名手配。生死をとわず)
オードブルにチキン、メイン・ディッシュにラム、そしてデザートにハニー。
茶色熊の「JJ1」は、イタリア、オーストリア・アルプスからドイツに戻り、グルメ・ツァーを続行中である。
ドイツ・バイエルン州政府は行く先々で家畜を襲うこの体長2メートルの茶色熊を生け捕りもしくは射殺すべく、フィンランドから専門家を招請した。

というニュースが、パトリック・オブライアン・フォーラムに掲載されていました。
まったく…オブライアン・フォーラムの皆様は本当に、クマがお好きですね。。
このニュースの原文はこちら↓
http://service.spiegel.de/cache/international/0,1518,419807,00.html

と思ったら、今度は、黒熊を追い払った勇敢なネコのジャックのはなしです。
http://abcnews.go.com/US/wireStory?id=2061209
ジャックの体重は15ポンド…うーん、かなり足りないわ。

いったい何の話をしているんだ!と怒られてしまいますね。
いやその、でも米国のフォーラムの皆様は真面目にこういう話しをしていらっしゃるのですが。

オブライアン7巻については、更新ネタのストックがあるのですが、こればっかりは新刊が出ませんとネタばれになってしまうので、7月に入りませんとお蔵から出すことはできませんのです。

オブライアン7巻は今週金曜日、23日発売です。
いましばらくお待ちください。


ついでに、もう一つ驚愕の海外新聞記事ネタを。

ニューヨーク〜ファルマス、大西洋手こぎボート横断レース
http://www.oceanfoursrowingrace.com/teams/teams.php

先週の土曜日(10日)に、アメリカ・ニューヨーク市を、4隻の手こぎボートが出発した。
めざすはイギリス・コーンウォール州・ファルマス、大西洋横断である。

ヨットレース同様、上記手こぎボートレースの進行状況も上記ホームページで見ることができます。
4隻の内訳は、アメリカ1チーム、イギリス3チームだそうです。
まったく、ほんとうに、イギリス人ってば…。


2006年06月18日(日)
聖なる暗号

友人のブログから面白い小説を紹介されました。Kさん>感謝です。

ハヤカワ文庫NV1111 「聖なる暗号」 ビル・ネイピア著(2006年3月新刊)

英国中部のリンカーン市で古書・古地図店を営むハリー・ブレイクは、地元の名士サー・トビー・テビットから古い日記の鑑定を依頼される。
ジャマイカに住むテビット家の遠縁が死去し、相続者がなかったために英国に送られてきたというその日記は、16世紀エリザベス女王時代の速記暗号で書かれていた。
解読を始めてみるとそれは、1585年に新大陸へ向かった英国移民船に乗り組んだ少年船員の手記だった。

だが解読を始めたハリーのもとに、謎の女が日記を法外な値段で売らないかと誘いをかけてくる。
依頼主から預かったものを売れるわけがないと断ると、今度は暴漢に襲われ、自宅には空き巣が。
さらには依頼主であるサー・トビーが、強盗に襲われ殺害された。だかそれは強盗というより、何かを聞き出そうとして拷問し殺害された状況に近かった。
この日記にはいったい何が隠されているのか?

サー・トビーの娘、19才のデボラ(デビー)・イネス・テビットは、殺された父に代わり、ハリーに改めて日記の解読を依頼する。と同時に自らも真相を究明すべく動き出すのだった。
ハリーは国立海事博物館の航海史研究者ゾーラ・カーンの協力を得て、少年船員の日記を読み進む。
その少年ジェイムズ・オーグルビーが乗組員として参加したのは、サー・ウォルター・ローリーが計画した1585年のアメリカ新大陸ロアノーク遠征隊だった。指揮官はサー・リチャード・グレンヴィル。
だがこの遠征隊には密かに、エリザベス女王(一世)打倒を狙うメアリ・スチュアート一派が潜入、陰謀をめぐらせていたのであった。

だが、それだけではすまなかった。
400年前のプロテスタント(エリザベス派)とカトリック(メアリ派)の陰謀は、形を変えて現代にもよみがえっていたのだ。
古文書の手記を解読しながら謎を追うハリー、ゾーラ、デビーは、テロ組織や狂信的一派からも命を狙われることに。
そして舞台は英国からジャマイカへ…。

いやはや何がすごいって、陰謀と謎が、400年の時と大西洋を渡ってイギリスから新大陸へ、時空を超えてしまうことですよ。
さすが、かつては七つの海に君臨した大英帝国。
400年前に海外に移住した先祖の日記が戻ってきて、現代つまりエリザベス二世時代の地方都市に住む古書店の店主が、400年前のエリザベス一世の暗殺に連動した世界的陰謀に巻き込まれるなんていうのは…まぁ日本ではなかなか難しい設定なんですが、イギリスではありえる…かも。かつての女王陛下の007と現代の女王陛下の007が一冊の本の中に競演してしまうんです。
メアリ女王一派の陰謀とは何か?という謎と、現代のテロ組織の目的は何か?という2つの謎が連動して解かれていく。
現代のサスペンス・ミステリを読みながら、同時進行でエリザベス女王時代の歴史小説も読めるわけです。
いや歴史小説というより、エリザベス女王時代の海洋小説が読めるんですよね。陰謀の舞台となるのは、英国からの植民船なので。
手記を残した少年ジェイムズが乗り組んでいるのは、サー・リチャード・グレンヴィルが船長を務めるタイガー号です。
グレンヴィルは、そう。後にあのリベンジ号の海戦(※)で有名になったあの方です。

でもおそらく、この「聖なる暗号」という小説を、海洋小説ファン以外の人が、単なるサスペンス・ミステリとして読んだとしたら、小説としてのバランスが悪いと指摘されるかもしれません。
現代の陰謀に巻き込まれた古書店主の話として読もうとすると、過去部分が長すぎるし詳しすぎる。
少年の手記はほぼ全文が掲載されているので、陰謀に関係ない単なる航海や冒険の部分も描かれているわけです。
もちろん、その延々と続く手記の中から現代に必要な部分を拾い出すことが謎の解明ではあるけれども。

私は海洋小説ファンなので、この400年前の部分が詳しければ詳しいほど嬉しい1人だし、不必要に長くても大歓迎ですが。
察するにたぶん、英国でもそういう人が多かったから、この小説、バランスが悪いままで通ってしまったのではないでしょうか?

何の予備知識もなくても、謎解きは楽しめますが、海洋小説その他でエリザベス一世時代の知識があったり、昔のジャマイカ島を知っていたりすると、古書店主のハリーや海事史家のゾーラと一緒になって、読みながら考えることができます。
いや私は、エリザベス一世時代のジャマイカは知らないけど、50年ほど後の清教徒革命の頃のジャマイカだったら、ダドリ・ポープのヨーク・シリーズで、200年後のナポレオン戦争時代のジャマイカだったら、ホーンブロワーやボライソーやラミジでよ〜く知ってますもの。
ついつい一緒になって、自分の海事知識や歴史知識を総動員して推理してしまいました。

この小説のヒロインであるデビーは、いかにも現代っ子のお転婆娘ですが、思うんですけど、もしアレクシス・ヨーク(ダドリ・ポープのラミジ・シリーズに登場する旧家の船主の娘)が現代に生きていたら、こんな感じになるのかもしれません。
ジャマイカ島の道はわかってるから…と言って、レンタカーのハンドルを握るのはデビーですし、そのまんま追跡を振り切って逃げ回ったり、現代の英国の旧家の勇気あるお嬢様ってこういう感じかぁ…と納得します。

ただ翻訳を読む時にちょっとひっかかるかもしれないのは、
この翻訳者はミステリを訳していらっしゃる方で海洋小説を専門に訳しておられる方ではありません。
が、少年の手記部分…400年前の海洋小説部分は、問題なく訳されています。ところが、現代のパートを読んでいると「あれ?」と思う部分が出てくるんですね。海事史を専門に研究している人ならこういう言い方はしないんじゃない?みたいな。
意地悪な勘ぐりをするに、おそらくこの本、少年の手記部分は海洋小説専門に翻訳されている方がチェックを入れられたけれども、現代部分までは入れなかった…のではないかしらんと。
ま、でもそれは、全体の流れからいくと些細な部分なので、勢いで流していけると思います。

※注)サー・リチャード・グレンヴィル:エリザベス一世時代の艦長・司令官、アルマダ海戦などにも加わっているが、テニスンの詩にもなった1691年のリベンジ号の海戦で有名。
詳しくは、hushさんの下記ページをご参照ください。↓
http://www22.tok2.com/home/ndb/name/g/Gr/Grenville.html#anchor44262

このリヴェンジ号の海戦は、ハヤカワNV文庫でSBSシリーズや、光人社でエヴァラード・シリーズが翻訳されているアレグザンダー・フラートンが、「リベンジ号最後の海戦」という小説を書いているのですが、絶版もはやAmazonでも入手不能です。
そこでこれについては、鐵太郎さんのHPの書評をご紹介させていただきます。
「リベンジ号最後の海戦」アレグザンダー・フラートン(訳:高沢次郎)

hushさん、鐵太郎さん、ありがとうございました。

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明日12日(月)NHKBS11で「モンテクリスト伯」の放映があります。
以前にもこの日記に書きましたけど、この映画の「マルセイユ港」のロケはすべてマルタ島のグランドハーバーで行っており、フェルナンの館は当時の海軍司令部だった建物です。
いずれ発売になるオーブリー&マチュリン9巻(マルタが舞台)の予習に、ぜひぜひご覧くださいませ。


2006年06月11日(日)
トマス・キッド5巻7月

昨日、本屋に行きましたらトーハンの「7月刊行予定文庫一覧」がいち早く張り出してあったのですが、これによりますと、

7月10日(月)発売
トマス・キッド5巻「新任海尉、出港せよ」ジュリアン・ストックウィン ハヤカワ文庫NV


25日の日曜発売予定でどうなるのかと思っていたオブライアン8巻ですが、発売日は前にずれるようです。

6月23日(金)発売
ジャック・オーブリー8巻「風雲のバルト海、要塞島攻略」(上)(下) パトリック・オブライアン ハヤカワ文庫NV

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さてこの本は海洋小説ではないのですが、このHPを読んでいらっしゃる中にお好きな方が多いのでこの場をお借りして。
マイルズは一応、宇宙艦隊のネイスミス提督だからお許しあれ。

創元文庫SF マイルズ・ヴォルコシガン・シリーズ「メモリー」(上)(下)ロイス・マクマスター・ビジョルド
いちおうトーハンの7月新刊リストに入ってます。下旬発売で価格までわかっていますが、創元社のHPでは「遅延」のままになっています。
果たして7月に無事、刊行されるのでしょうか? 1年延びているので待ち遠しいです。

マイルズ・シリーズって何?と思われた方はこちらを↓
http://www.tsogen.co.jp/wadai/0312_01.html


2006年06月09日(金)
カピタン・アラトリステとエリザベス続編のその後

今週も「ずばり海洋モノ!」という情報はないのですが、オブライアン・フォーラムを見ているといろいろと面白い周辺情報が手に入って。
掲示板に来ている方たちと好みが合うと言いますか。

以前にもご紹介したと思うのですが、17世紀のスペイン歴史映画「エル・カピタン・アラトリステ」、下記でトレイラーを見ることができるそうです。
http://www.fox.es/trailers/alatriste-11015/132/

この映画、米国での配給は20世紀FOXのようですが、日本でも公開されるのでしょうか?


それからこれは、昨日私がMoviestar誌を立ち読みして知ったのですが、
3月19日にザ・ガーディアン紙の記事を紹介した「エリザベス」の続編、撮影に入っているみたいですね。

近日公開「インサイド・マン」のプロモーションでインタビューに答えたクライブ・オーウェンが、「エリザベスを現在トロントで撮影中」と言ってました。良かった〜。
imdbのデータベース(http://www.imdb.com/title/tt0414055/)も「撮影中」に変わっています。
ただ、ガーディアン紙に載っていたサマンサ・モートンや、噂されていたヒュー・ダンシーなどのキャストがこのDBに入っていないのはどうしてなのか?

この映画も期待しているので、クランク・アップ、日本でも公開…に進んでもらいたいと思います。


2006年06月04日(日)