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Sail ho!
Tohko HAYAMA
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Sail ho!:映画「マスター&コマンダー」と海洋冒険小説の海外情報日記
ノリントン提督とトマス・キッドと非情の海

先日、サンディエゴ海事博物館に、レディ・ワシントン号が来訪するというニュースをお伝えした時に、
「ご存じですか? 映画『パイレーツ・オブ・カリビアン』でノリントン提督を演じたジャック・ダヴェンポートは、英国ではジュリアン・ストックウィンのトマス・キッド・シリーズ(邦訳はハヤカワ文庫NV)の朗読CDを出しているんです」
というメールをくださった方がありました。
ひゃ〜! 全然、存じませんでした。
情報ありがとうございます。Mさん>

さっそくamazon.ukで調べてみたところ、現在入手できるのは最新刊のSeaflower(邦題:快速カッター発進!)だけのようです。
いやでも、ノリントン提督がキッドを朗読している…と考えると、ちょっとその落差に笑えるんですけどね。

いま提督…と書いたのですが、実は正確に言うとノリントンの職位は司令官(Commodore)なので、提督の一つ下です。
詳しくは、左側の「映画を楽しむために/18-9世紀英海軍の階級システム」をご参照いただきたいのですが、ご存じの通り、当時の職位はLieutenant→Commander→Captain→Commodore→Admiral となっております。
でも司令官と言っても慣れない人にはピンとこないでしょうから、これを「提督」と訳すのは、まぁ仕方がないかな…とは思うんですが、
「パイレーツ…」の字幕にはひとつ間違いがありまして、CaptainからCommodoreに昇進するというのを、「大尉から提督に昇進した」としています。
陸軍では大尉がCaptainなので、それが間違いのもとなのでしょうけれど、大尉から提督では出世しすぎですってば!
ノリントンは正確には、映画の冒頭(幼いエリザベスが海の上でウィルを発見するところ)ではLieutenantで、エリザベスが子役からキーラに変わった時点でCaptainからCommodoreに昇進します。
ちゃんとそう呼ばれていますので、今度耳をすませて英語を聞いてみてください。

さて、そのノリントンを演じたジャック・ダヴェンポートが朗読している作品の一覧がこちらです。
ジョナサン・リース・マイヤーズ主演で去年日本公開された「テッセラクト」の原作とか、「ブラボー・ツー・ゼロ」の作者アンディ・マクナブのスパイ小説「リモートコントロール」「クライシス・フォア」「ファイアーウォール」(いずれも日本では角川文庫)とか、面白い作品を朗読していて、おやまぁ…と思いました。

いやでも私、同じ傾向ならマクナブよりはハヤカワNVから出ているクリス・ライアンの方が好きなのだけど…、ライアンの朗読CDって出ていないのかしら?
と思ってついでに調べてみましたら…ありました。あったんですけど、誰が朗読していたと思います?
ポール・マッガン。
ホーンブロワーのブッシュ役ですよ。あらら…。


ま、話しは、先ほどのリストに戻って、
ダヴェンポートが声の仕事をした作品の中で、「あ…これは!」と思ったのがこの作品です。
The Cruel Sea:Starring John Thaw & Cast (BBC Radio Collection)
これは、BBCラジオが制作したニコラス・モンセラットの小説「非情の海」のラジオドラマ。
主演のジョン・ソーは、日本ではNHKBSで放映された「主任警部モース」で、主人公のモースを演じていた役者さんです。
主演というのですから、おそらく彼が主人公のジョージ・イーストウッド・エリクソン艦長の役(声)なのでしょう。
ダヴェンポートはいったい誰の役なのか?

ニコラス・モンセラットの「非情の海」は、第二次大戦をあつかった英国の海洋小説では古典的名作とされる作品です。
モンセラットの小説は、むかしフジ出版から数冊、徳間文庫からも3冊出ていましたが、これらは今では古本屋でしか入手できません。
このうち徳間文庫から3分冊で出版された「海の勇者たち」は、ドレイク〜ネルソンの帆船時代を舞台にしています。
しかしこの「非情の海」だけはその後、至誠堂から再版されていますので、今でも大きな書店に行けば手に入れることができます。

この「非情の海」が海洋小説の傑作と言われる理由は良くわかります。
去年、ダグラス・リーマンの小説「起爆阻止」がハヤカワNV新刊となった時に、私はこの小説を「非情の世界の情を描いた逸品」と紹介したと思うのですが、「非情の海」もまったく同じ。
第二次大戦中の北大西洋、荒天と寒さとUボートに常に脅かされる非情の海に浮かぶ小さなコルベット艦コンパス・ローズ号艦上の、ささやかな乗組員たちの情の世界を描いて…、無惨な戦場を描きながらも、最後には人のぬくもりが残る小説。
リーマンがエピソードでぐっと引きつけるのに比べると、モンセラットはセリフで来る。忘れられない印象的なセリフがあります。
ラジオドラマとして魅力を発揮する作品でしょう。

作者ニコラス・モンセラットは大学卒業後文筆業に従事していましたが、戦争勃発とともに海軍に志願し、少佐で終戦を迎えました。
戦争前はジャーナリストだったという「非情の海」の副長ロックハートは、モンセラットの実体験なのだろうと思います。
この小説は1953年に英国で映画化もされましたが、近年この映画はDVDでよみがえっているようです。


偶然ちょっと土曜日の某予告が懐かしいタイトルだったので、来週も海洋小説の古典的名作シリーズを続けようと思います。
…ので、次週予告は「インド洋の死闘」D.A.レイナーということで。


2005年01月31日(月)
サンディエゴ砲撃戦(1月12日)の顛末

1月5日にご紹介したサンディエゴ海事博物館へのインターセプター号…ではなかったレディ・ワシントン号の訪問と模擬砲撃戦。
このサンディエゴのイベントに参加、砲撃戦を目のあたりにした!というファンの方のレポートが、米国ノートン社のパトリック・オブライアン・フォーラム掲示板に上がっていましたので、ご紹介します。

ハンドルネームをakatowさんとおっしゃるこのファンの方は、レディ・ワシントン号に乗船し、甲板から一部始終を目撃されたそうです。
1月12日のサンディエゴは快晴でしたが、風は弱く、船足はようやく3ノットといったところだそうです。
下記に写真を交えたレポートのURLをご紹介しますが、この写真、最初の一枚は今回の砲撃戦のものではないそうですのでご注意。
2枚目からが、このakatowさんが撮影された、今回のサンディエゴ砲撃戦の写真となります。

サンディエゴ湾からの砲撃戦レポート

このイベントに参加したakatowさんは、「横帆船が帆走し砲撃戦を行うというのがどのようなものか、やっと本当に理解することができた。もっとも愉快な体験だった。
もしあなたが砲撃戦に参加する機会に遭遇した時には決してこの機会を逃してはならない
最後の太字部分は、原文では全て大文字!でした。
よほど貴重な体験だったのでしょう。

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今週の金曜日2月4日に、日本テレビ読売系の洋画劇場で「マスク・オブ・ゾロ」の放映があります。
ダイアナにキャサリン・ゼタ・ジョーンズを、と仰有る方のイメージは、この映画でキャサリンが演じたヒロインに由来しています。
今のキャサリンでこの役を演じたらもっと素敵だろうと思います。
ちょっとのぞいて見てくださいな。
あ…ゾロのバンデラスも、そして先代ゾロのアンソニー・ホプキンスも、とてもとても素敵です。


2005年01月30日(日)
P. O. W.

M&Cで副長のトム・プリングスを演じたジェームズ・ダーシー主演のTVドラマシリーズ「P.O.W.」(DVD)を見ました。
強力なお勧めとともにCさんからお貸しいただいたのですが、
Cさん>本当にありがとうございます。
私もここで、これから強力に皆様にお勧めしてしまいますね。
では、ねたばれ無しで、ご紹介いきます。

「P.O.W.」は2003年に英国ITVで放映された6回シリーズのTVドラマ、ダーシーは2002年にM&Cの撮影を終えた後、このドラマに取り組んだようです。
P.O.W.とは、Prisoners of War すなわち戦争捕虜の略です。

第二次大戦中の1940年、ダーシー演じる英国空軍の軍曹ジムは、撃墜されパラシュートで脱出、ドイツ領内に降下し捕虜となります。
彼が送られた先はStalag 39というドイツの捕虜収容所。そこには既に、50人ほどの陸軍部隊が収容されており、厳重な監視下にありながら脱走を狙ってしぶとく密かに抵抗を続けていた、という実話に基づいた物語です。

このドラマに関する詳細はこちら
カバー写真右の青い制服がダーシー演じる空軍軍曹ジム(Fright Sergeant Jim Caddon)。中央がStalag 39収容所の捕虜の中では唯一の士官である陸軍大尉アターコム(Captain Richard Attercombe)。左は兵卒の一人ドルー(Private Drew Pritchard)。

収容所でジムはかけがえのない仲間たちとめぐりあいます。
年配の伍長ジョン(Corporal John Stevens)は、苦労人で厳しいけれども情も知っている、TVのホーンブロワーのマシューズを思わせるキャラクター。演じるEwan Stewartは「タイタニック」の一等航海士役(氷山に衝突する時に当直で、後にパニックを鎮めるために発砲した後自殺してしまうあの航海士です)や、「ロブロイ」などにも出演しているベテラン。

私は19世紀の帆船小説だけではなく第二次大戦当時の海洋小説も多少読んでいますが、第二次大戦ものの人間ドラマに特徴的なのは、これは日本でも事情が同じですが、兵士がもとは普通の市民であること。
それがある意味、第二次大戦の悲劇でもあるのですが、少なくともこのドラマ「P.O.W.」においては、この、戦争にならなかったら普通の市民だった兵士たちが、重要な役割を果たしているだろうと思います。
それが、Craig Heaney演じるホントにいい奴、ラリー(Private Larry Boyd)であったり、温厚なとりなし役のフランク(Private Frank Brown)だったり。このフランクを演じているのは「シャクルトン」で金髪の航海士役だったShaun Dooley。
彼らが感じること、大切に思うこと、守ろうとするものは、一般市民の幸福。これは戦いの時代を知らず平和に暮らす今の私たち市民として共感しやすく、身近に感じられる人たちです。

カバー写真で大尉の左にいるドルーは、Joe Absolomが演じてますが、彼はたぶん戦争前は町のチンピラだったんだと思います(ヒアリングに自信が無いので断言はできませんが)。でも彼にも彼なりに守りたいものや正義もあって、決して仲間は裏切らない…いやぁホントにイイ奴なんですよ。
ちょっと年齢は若いけど、私、ラミジ・シリーズに出てくるロンドンっ子の元スリにして泥棒、スタッフ(スタフォード)ってこんな感じなのかしら?と思いながら、ドルーを見てました。

収容所の所長は、名誉を重んじる昔気質の独逸軍人Kommandant Reinhold Dreiber、戦争前に国際結婚をしていて妻のアリスは英国人、自身も英語が堪能です。演じているのはAnatole TaubmanとAmelia Curtis。

本当によく出来たドラマだと思います。悪いドイツ軍に果敢に抵抗するイギリス軍…ではなく、本来そうであった単調な収容所の日常を描きながら、英独どちらの側も同じものを守りたいと願いながらも、戦争というシステムの中で命のやりとりをしなければいけない、その残酷な構図を描き出す。
おそらく、英国人唯一の士官である大尉の孤独を理解しているのは、部下たちよりもむしろ、ドイツ人の所長でしょう。
妻と子供たちの待つイギリスに帰りたい、自分の家庭を守りたいと脱走準備に励む兵士に対して、兵士が脱走したらドイツ人の夫との自分の家庭の平和が壊れると知っているイギリス人の所長夫人。底に流れる思いは、本当は同じものなのです。

ゲストで登場するSSを除いては悪役がいないゆえに、それでも生じる犠牲者にやりきれない気分になる回もあり、軽々しく見られるドラマではありませんが、本当によく出来た価値のあるドラマだと思います。
1話50分の6回シリーズですが、各回の密度が非常に濃いので、1回分見るとぐったり…まぁヒアリングが難しいという問題もあるのですがね(兵隊さんたちの英語は訛が強すぎてさっぱりわかりませんわ)。
私はPtrick Baladi演じるアターコム大尉がお気に入り。

さて、このドラマでジェームズ・ダーシーが演じているジムですが、プリングスや「ドット・ジ・アイ」で演じた青年などに比べると、素直な熱血漢という印象です(いやプリングスもある意味そうですけど、副長という立場上もうちょっとあちこちに気を使っているので)。
空軍さんだから空色の制服…どうもサプライズ号首脳部は第二次大戦になると空軍さんに転職(?)するみたいですね?
ラッセル・クロウがかつて演じたのはオーストラリア人の連合軍パイロットだったし、ポール・ベタニーも「スカートの翼広げて」では空軍将校。
マウアットのエドワード・ウッダルは「エニグマ」で海軍の変人暗号解読者だったけど、軍服着崩して提督に怒鳴りつけられる役でしたし。そういえばまともな海軍さんがいないかもしれません。
クリス・ラーキンは「ムッソリーニとお茶を」では陸軍将校です。

戦争ものゆえ、残酷なシーンを含むということで、このDVDはR指定になっています。
あまりにも地味ですから、英国以外ではまず放映されることはないと思いますが、価値あるドラマです。
砲弾は一発も炸裂しませんが、戦争というシステムの非情さがよくわかります。
是非おすすめしたいと思います。
Cさん>教えてくださって、本当にありがとうございました。


2005年01月29日(土)
カティーサーク号の保存プロジェクト、目途がたつ

19世紀の快速帆船として英国グリニッジにて展示公開されていたカティ・サーク号は、船体の腐食の進行から、いずれ公開中止が予定されていました。

腐食部分の改修と、更なる錆の進行を抑えるため船体を覆う建造物の建築には莫大な資金がかかり、この目途がつかない限りカティサークの保存は不可能、いずれ解体の運命と言われていました。
この保存資金調達に目途がついたようです。

このスコッツマン紙の記事によると、Heritage Lottery Fundから1,300万ポンドがカティサーク号保存プロジェクトに注入されることになり、工事は2006年から開始されるとのこと。

改修工事後のカティサーク号はガラスドームで覆われることになります。
完成予想図 いちばん下の写真です。

その美しい姿がいつまでも保存されるのは嬉しいけれど、キール(竜骨)が塩水から、マストや帆が風から隔離されてしまうのは、少々寂しい気もします。


ついでながら、この記事を掲載したスコッツマン紙(スコットランドの日刊紙)には下のような記事も載っていました。
ボンデンを演じたビリー・ボイドの近況。
サンダンス映画祭の参加作品に出演しているようですね。


2005年01月27日(木)
津波から1ヶ月

インド洋大津波から1ヶ月がたちました。
死者・行方不明者の数は29万とも言われています。
小説でよく「こんなこと、神様はお許しにならない」という表現を耳にしますが、亡くなった方の数を思うとき、人間の力およばぬ自然災害とは言え、こんなことあってはならない…と。
でもそれを何処にぶつける先もないのですが。

それでも、災害直後に心配されていた災害後の伝染病などが、各国の緊急支援などにより事前にくい止められたことは、今後に希望のもてるニュースでした。
おそらく20年前だったら、このような迅速な国際社会の協力はできなかったでしょう。

TVなどメディアの発達で、今度こそ世界中の人が津波の恐ろしさを知ったでしょうし、今度は潮が引いたら皆が一散に逃げるでしょう。
この大災害がもたらしたものが、少しでも良い結果に向かうきっかけとなれば良いのですが。
それでも、今後の被災地の復興、防災対策などを考えると、遠く離れた国に住む者でも気が遠くなりそうです。

復興資金が必要になるのは、むしろこれからなのでしょう。
今回、私がひそかに感心したのは、やはり欧米諸国って奉仕の伝統があるんですね、ということ。
アメリカでは政府拠出金をうわまわる民間からの寄付が集まったとか。
一般の人の実行力と反応が積極的。
こういうところが日本はまだまだだなぁと思います。

赤十字の募金は1月末までだそうです。
海に係わるHPを管理しながら、これを座視するのは心苦しく、別に特定機関の回し者というわけではないのですが、このHPからも、募金への協力などお願いする次第です。
さあ、お近くのコンビニの募金箱へGO!


2005年01月26日(水)
アレクサンダー・ケント:ボライソーシリーズ新刊

今週、アレクサンダー・ケントのボライソー・シリーズの27巻「無法のカリブ海」がハヤカワNV文庫から新刊で発売されます。
と書こうとしたら、もう先週末に店頭に出ていたところがあるようで。
あらら、いつもは25日以降だったのに、今月は早いわけですか?
ぬかったわ。週末は家にお籠もりしていたので。
私はこれから本屋に走ります。

さて、気をとりなおして。
私が初めて出会い夢中になった海洋歴史冒険小説は、新刊として平積みになっていたボライソー6巻「コーンウォールの若獅子」で、1984年1月のことでした。
よくよく考えると青くなるものがありますね。なんと21年前ですよ。
ボライソーは、あらゆる本の中で、私が人生でいちばん長いお付き合いをし、新刊を待ち続けているシリーズになってしまいました。
もっともボライソー1巻は、日本では1980年に発行されていますから、このシリーズとは25年のお付き合いという方も大勢いらっしゃることでしょう。

作者アレクサンダー・ケントが英国で第一作を発表したのは1968年。
以来1998年発表の24巻「Sword of Honour(提督ボライソーの最期)」までの30年をかけて、ケントはこの、1756年にコーンウォールのファルマスに生まれ、1815年に地中海でその生涯を閉じたリチャード・ボライソーという海軍士官の一代記を描いてきました。
リチャードの死後は、甥のアダムが主人公となってシリーズは引き継がれ、今月発売になる27巻が、英国、日本とも現在の最新刊となっています。
パトリック・オブライアンのオーブリー&マチュリンの第一作が1970年発表ですから、英本国ではオブライアン以上に長い年月わたって読み継がれている海洋冒険小説です。
ちなみに、次作、最新の28巻ですが、先日からAmazon.ukでは予約が始まっています。
発売予定は2005年10月6日。
う〜ん、ネットで予約してもいいけれど、もし10月に英国旅行が実現できたら、現地で購入…は夢ですね。

海洋小説に何を求めるかは人それぞれ、ゆえに海洋小説の評価も、何を求めて小説を読むかによって異なってくるものです。
そして私の場合はやはり、フォレスターの「ホーンブロワー」よりオブライアンの「オーブリー&マチュリン」より、
ケントのボライソー・シリーズを選んでしまう。
海軍士官の一代記ということであれば、ホーンブロワーの方が有名ですし、オブライアンは確かにキャラクターを描くのが上手い。
でも、じゃぁボライソーの魅力は何なのかと言われたら、それは群像劇、すなわち「人と人とのつながり、複雑な人間関係のドラマ」ではないかと私は答えます。

TVドラマシリーズの「ホーンブロワー」の第2シリーズ(第5話:反乱、第6話:軍法会議)は、原作の「スペイン要塞を撃滅せよ」とは趣が異なりますが、この違いがケントとフォレスターの違いだと私は思っています。
初めて第2シリーズを見た感想は、「これはアレクサンダー・ケントが書いた『スペイン要塞…』だわ」でした。
この第2シリーズを例にして、私が思うところのフォレスターとケントの違いを書いてみたいと思います。

フォレスターのホーンブロワーは基本的にはホーンブロワー視点で描かれていて、視野に入ってくるキャラクターの数が限られます。
唯一「スペイン要塞」のみがブッシュ視点で、ゆえにこの話は面白いのですが、それでも登場人物のすべてに目が行き届いているわけではありません。
TVドラマ化された「スペイン要塞…」の面白いところは、TVドラマゆえに各俳優さんの演技が細部まで豊かで、バックランド副長、ホッブス掌砲長、クライブ軍医といった脇キャラクターと、複雑に張り巡らされた人間関係が隅々まで丁寧に描かれている。これがドラマが原作を補っている点です。
各人が独自の自己主張をして動き回り、それゆえに人間関係の糸がもつれたりほぐれたりしていく、
これがアレクサンダー・ケントの小説に共通する、ストーリー先行になりがちなフォレスターにはない魅力だと私は思っています。

ケントの小説は常に複数視点で進行します。
主人公は一応リチャードとアダムというボライソー家の二人の海軍士官ですが、通常は艦内の様々な持ち場につく数人(その中にリチャードとアダムが含まれるのは言うまでもありません)を視点(副主人公)として、物語は進行します。
視点役は、部下として巻をまたがり同行する場合もありますが、その多くは一巻限りの副主人公です。もっともシリーズそのものが海軍士官の人生一代記である関係上、むかし同じ艦に乗り組んだことのある人間に何十年後に再会することもあり、10巻以上後に再び視点として活躍する復活脇役などもいて、この再会の喜びもシリーズを読み続ける魅力だったりするのです。

そのようなわけなので、もしこれからボライソーを読んでみよう!と思われる方がありましたら、出来ればやはり1巻から順番に手に取られることをおすすめします。
それと…これはオブライアンでも、ラミジのダドリ・ポープでも言えることなんですけど、やはり海洋小説はフリゲート艦時代までが一番面白い。ゆえにボライソーも一桁巻の方が面白い。
提督まで昇進してしまうと、現場主義のリチャードでも陸上の話が多くなってしまうので、16巻以降は15巻より前に比べるとちょっと苦しい部分はあるだろうと思います。

おまけとして、せっかくですからちょっとみぃはぁな話を。
去年の夏にこの日記で映画「キング・アーサー」の感想を書いた時に私は、クライブ・オーウェンを見ていると、とある艦長のことを思い出す、と書きました。
この「ある艦長」とは、リチャード・ボライソーのことです。
私的には、もし今ケントの小説をドラマ化する…という話があったら、リチャードは是非、彼に演じてもらいたいと思っています。

ヨアン・グリフィスにリチャードを、という意見を掲示板で読んだことがありますが、私、ヨアンはむしろ甥のアダム・ボライソーの方だと思うのです。
ヨアンは鋭角的なというか攻撃的な影を表現するのが上手いと思うのですが、リチャードの背負う影はアダムのようにはっきりと表には出ない。
リチャードには兄、アダムには父であるヒュー・ボライソーが、祖国イギリスを捨てアメリカ独立軍に走ったことで、ボライソー家の二人は、「裏切り者の身内」という軍人としては致命的な影を背負って生きていくことになりますが、この影の現れ方が、リチャードとアダムでは微妙に異なっていて、ゆえにヨアンにはアダムを…と私は思うのでした。


最後に、
これからボライソーを読まれる方へ>24巻に関する注意:
ボライソー24巻初版には、翻訳にトラブルがあります。
この点については、出版社である早川書房が第二版を発行し既に対応されていますが、知らずにまだ初版をお持ちの方、それから最近は古本屋が大盛況なため、ここで初版を購入してしまった…という方がいらっしゃると思われます。
今、初版をお持ちの方は、トラブルの拡大を防ぐため、これを誤って古本屋にお出しにならないようにお願いいたします。
また、ご購入前には、その版が初版であるか第二版であるか確認の上、レジにお進みください。

今お持ちの本が初版だった…という方>
トラブルの箇所はこちらの通りです。
削除・移動後のものがオリジナル原文にそった翻訳になります。

作者アレクサンダー・ケントは24巻と同時に発行した「ボライソー・ニュースレター」の中で、本来書くつもりではなかったリチャードの死について敢えて筆をとった理由を、
「私は非常に個人的な理由で、(リチャードの死について)他の誰にも、その人なりの解釈を後になってから書いてもらいたくはなかった。そのようなことになったらぞっとする」と述べています。
リチャードの死がこのようなものに描かれた理由についてケントは、
「往々にしてよくあるように、そして私自身も(自身の第二次大戦での体験で)目にしたように、このようなことは、まったく劇的にではなく、唐突に突然におこるものなのだ」と、記しているのです。

どうか作者ケント氏の願いをくみ取っていただきたく、僭越ながら私からも、初版の古本屋経由の再配布防止など、この場をお借りしてお願いする次第です。


2005年01月24日(月)
[Sea Britain 2005] 6月末国際観艦式と海の祭典

1月にロンドンで開催されたスクローダーズ・ロンドン・ボートショーの席上で、第一海軍卿(*)サー・アラン・ウェスト提督は「トラファルガー海戦200周年を記念した「Sea Britain 2005」において英国海軍は中心的な役割を果たす」と語った。
その皮切りとなるのが、ソレント海峡(ポーツマス沖)で6月に行われる国際観艦式(International Fleet Review)である。
6月28日に行われる観艦式には、既に30カ国が参加を表明。軍艦、帆船、ヨットなど150隻以上が参集する。

また6月30日〜7月3日にかけて開催される世界の海の祭典(International Festival of the Sea)には、さらに多くの船が集まり、総数は500隻を超える。古い小型船舶、業務用船舶なども一般公開される。
ポーツマスでは同時に、陸の上でも数多くのイベントが企画されている。海の祭典にちなんだパレード、コンサート、海洋画展、19世紀を再現したストリート・マーケット、目を見張るような模擬戦(combat display)、伝統的な海の手仕事の実演、模型展、陸海空軍のデモンストレーションなども予定されている。

詳しくは以下のプレスレリースをご参照ください。
30 Nations to attend international fleet review
Europe's greatest celebration of the sea returns to Portsmouth - IFOS 2005

*訳注
ここの原語は、Admiral Sir John West, First Sea Lordです。敢えて19世紀ふうに第一海軍卿と訳してみましたが、First Sea Lordという役職は、現代では正式は「Chief of Naval Staff and First Sea Lord」で、ジャパンタイムズ発行の「主要国行政機構ハンドブック」によれば「海軍参謀長兼海軍委員会第一委員」という訳が正しいのだそうです。
この行政機構図を見ていると、このChif of … Staffというのは、陸海空軍省(英国国防省の各下部組織)のトップのようですが、and以下がついているのは海軍だけで、陸軍と空軍はChief of … Staffのみです。これはやはり名称に伝統を残していると考えて良いのでしょうか?
ちなみにChief of Naval Personnel and Second Sea Lordという役職もあって、これは海軍人事局長兼海軍委員会第二委員だそうです。


さて、英国の観光産業は今年よほど熱心に「海のイベント」を売り込もうとしているようですね。
こんなものがあるのをご存じですか?
「マスター・アンド・コマンダーと英国海洋地図」
海洋関係の史跡を訪ね歩くには便利な地図のようですが、ちょっとM&Cがダシにされているというか…(苦笑)。


さて、6月のポーツマスでのイベントのニュースは、「Sea Britain 2005」のプレスレリースHPから引いていますが、ここには他のマイナー・イベントのニュースも掲載されています。
その中に英国マン島の海の伝統を紹介したドキュメンタリーがレリースされるというニュースがありました。
これはあまりに地味かつ英国ローカルなのでここでご紹介するまでもないと思いましたが、ちょっと驚いたのは、このドキュメンタリーのナレーターがサー・アンソニー・クエイルだということ。

アンソニー・クエイルと言えば、アレック・ギネスの艦長にダーク・ボガードの副長が反旗を翻す映画「デファイアント号の反乱」で、渋い掌帆長を演じていたり、個人的にはジャック・ヒギンズの「鷲は舞い降りた」のヴィルヘルム・カナリス提督役が印象的で、冒険小説ファンにはおなじみの名脇役。
すでに鬼籍に入られていますが、作品は残っているということなのでしょう。
確認のためフィルモグラフィーを調べていて、おや?と思ったのは、1980年代半ばにドラマ化されたヒギンズ「黒の狙撃者」(原作はハヤカワ文庫NV)で、クエイルが教皇を演じていたことでした。

私はこの小説の原作が好きだったので、むかしわざわざこのドラマを見たのですが…、原作をあまりに踏みにじったストーリー改変が行われていて、途中で悲しくなって投げてしまいました。
ところが今回知ったのですが、この「黒の狙撃者」の主演はなんと、「ホーンブロワー」のペリュー提督ことロバート・リンゼイだったのですね。
いやはや…、でまぁ今回埋め込んでいたビデオを掘り出して見てみたんですけど。
当たり前ですけど、15年前なのでリンゼイ…若いです。アイルランド人の父とロシア人の母の間に生まれたソビエト連邦の工作員…IRAを装って英国の要人を暗殺するのが任務ながら、内省的で自身の行為に悩む男…を好演しています。
危険な男のように見えて実は繊細…という表現が上手い。いやはやさすがだと思いました。


2005年01月23日(日)
グレゴリー・ペックのホーンブロワー

米国ノートン社のオブライアン・フォーラムに、
グレゴリー・ペック主演で1951年に映画化された「艦長ホレイショ」で、レディ・バーバラを演じた女優Virginia Mayo死去」というニュースの書き込みがありました。

この書き込みをなさったマックスさんは、どうやら本業はハリウッドのギョーカイ関係者のようで(ただし20世紀FOX社ではない)、M&Cの映画化に関してはときどき面白い情報を提供してくださる、掲示板常連さんのお一人です。

今回の書き込みには、1951年の映画>「艦長ホレイショ」(原題:Captain Horatio Hornblower R.N.)の脚本の一部が添付されていましたので、ご紹介します。
書き込みのアドレス:
http://www.wwnorton.com/cgi-bin/ceilidh.exe/forums/POB/?C318ab82dd00A-5496-1256-30.htm 

この映画、私は以前に1時間半に短縮された縮小吹替版を、テレビ東京のお昼の洋画劇場で一度だけ見たことがあるのですが、グレゴリー・ペックは、繊細な一面を巧妙に覆い隠し自信をもった艦長のふりをするホレイショ・ホーンブロワーを演じるにはぴったりだったような気がします。
ペックが演じた他の映画で言えば、「ナヴァロンの要塞」(これは今でも時々TV放映されますね)のニール・マロリー役…あんな感じで演じていると思ってくだされば良いと思うのですが。
ただ、ほとんど全編をハリウッド内のスタジオセットで撮影(洋上の艦の甲板も)しているので、ロケのないNHK大河ドラマのようなスタジオ・ドラマになってしまっていますが。

Virginia Mayo演じるレディ・バーバラは、いかにも1950年代ハリウッド好みのゴージャスな美女…という印象でしたが、現代のバーバラ(いずれヨアンが年齢を重ねてこの作品を演じる近い将来の…と言うべきか)はきっともう少し違った印象の女優さんになるのかなぁと思います。


2005年01月22日(土)
Finding Neverland

ジョニー・デップ&ケイト・ウィンスレットの「ネバーランド」を見てきました。
原題は「Finding Neverland」ですが、「ネバーランドを探して」というこちらのタイトルの方が、内容をきちんと表しているような気がします。
まだ公開1週間ですから、ねたばれ無しのご紹介になりますが、
とても良い映画なので、是非ご覧になってください…まる(句点)。
では紹介になりませんか、

これがBAFTAノミネート作品なのは至極納得。
映画を見ている人に、忘れかけている大切なことを思い出させてくれる映画だと思います。
私の場合は、10才〜15才にかけての記憶でした。
子供から大人になる年齢…思春期…の頃って、純粋にいろいろなことに悩んでいたと思うのですが、大人になってしまうと当時真剣に悩んでいた事でも、結構忘れ果ててしまうんですね。
あの頃はそれが大切なことだと思っていて、大人になっても忘れないでいようと思っていたのに。

この映画は見る人によって受ける印象が違うと思いますし、得るものも異なると思います。
ただ私の場合は、昔の記憶が刺激されて、そこから昔の価値観が一緒に引きずり出されてきて、忘れかけていたものを思い出すことが出来た…ことが、もっとも大切な収穫だったような気がします。


これは本編とは全く関係ありませんが…、
オーブリー&マチュリン原作2巻のファンの方は、この「ネバーランド」、楽しめるのではないかしら。
く、熊使い…。(絶句)
こういう発想する英国人って、一人ではなかったということですか???
まぁその…、詳細は映画でご確認ください。ごく始めの方のシーンなので、映画には絶対に遅刻しないように。

海賊ジャック・スパロウのファンの方へ>
ジョニー・デップ演じるジェームズ・バリーが、子供たちと海賊ごっこに興じる場面があります。ピーターパンの作者にふさわしくフック船長していますが、劇中ごっこ劇とは言え、なかなか楽しめます。
そうそう、バリの戯曲「ピーターパン」でナナ役を演じることになった気の毒な劇団員ライリー氏を今回演じているのは、「パイレーツ・オブ・カリビアン」で凸凹コンビの海兵隊員のかたわれを演じていたアンガス・バーネットですね。眉毛が特徴的なのですぐわかる。

デップの演じるジェームズ・バリはスコットランド人なので、デップは映画の中ではスコットランド訛りの英語を話しているそうです。
それを聴いて、そうかラミジの副長のエイトキンの英語はこういう英語か…と思っていた私です。


アーサー・ランサムお好きな方へ>
ピーターパンとダーリング家の子供たちのモデルとなった、実在のディヴィス家の子供たちは、一緒に海賊ごっこやインディアンごっこに興じてくれるジェームズ・バリを、「ジムおじさん」と呼んでいます。
それが符号だというわけではありませんが、やはりこの映画を見ていると、アーサー・ランサムがあの12冊の物語を書くきっかけとなった、アルトウニアン家の子供たちのことが思い起こされ、25年後の1928年、北部湖沼地方コニストン湖での夏休みに、友人の子供たちと帆走に興じていたランサムの姿を想像してしまうのでした。
イギリスはこのようにして、優れた児童文学を生み出していくのでしょうか。

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先日「今年はゴールデン・グローブ賞の授賞式中継があるんでしょうか?」と書いたところ
「ありますよ」とメールにて教えていただきました。
ありがとうございました。

放映は2月5日(土)NHKBSで19:45〜22:00予定です。
放映時間などにつきましては、当日、新聞などで再びご確認ください。


2005年01月21日(金)
「ウィンブルドン」公開日訂正(4月)と、Golden Globes受賞作、BAFTAノミネート

1月14日付の日記でポール・ベタニーの「ウィンブルドン」が2月…と書きましたところ、
「違いますよ〜、4月ですよ〜」というメールをいただきました。

「ウィンブルドン」は4月23日公開だそうでございます。
くわしくはこちら
お詫びとともに訂正させていただきます。
お知らせいただきありがとうございました。


せっかく日記を更新するので、昨日おとといに結果の出たゴールデン・グローブ賞と、英国アカデミー賞(BAFTA)のノミネートも、せっかくだから載っけてしまいましょう。今年は海洋系に関係ないからHPではフォローしないつもりだったんですけど、しっかりチェックはしていたので。
クライブ・オーウェンがゴールデン・グローブの助演賞とれました。うふふ。嬉しい。
去年は渡辺謙がノミネートされていたからNHKBSで授賞式放映してくれましたけど、今年はどうなのでしょう?

BAFTAでは、外国語映画であるにもかかわらず、「モーターサイクル・ダイアリーズ」と「LOVERS」が大健闘ですね。
「LOVERS」の衣装デザインはワダ・エミさんです。この勢いでは26日のアカデミー賞にもノミネートされるかもしれません。


ゴールデングローブ賞受賞作品
作品賞
ドラマ部門「アビエイター」
ミュージカル・コメディ部門「Sideways」

主演男優賞
ドラマ部門 レオナルド・ディカプリオ「アビエイター」
ミュージカル・コメディ部門 ジェイミー・フォックス「レイ」

主演女優賞
ドラマ部門 ヒラリー・スワンク「Million Dollar Baby」
ミュージカル・コメディ部門 アネット・ベニング「Being Julia」

助演女優賞
ナタリー・ポートマン「Closer」

助演男優賞
クライヴ・オーウェン「Closer」

脚本賞
アレキサンダー・ペイン、ジム・テイラー「Sideways」

監督賞
クリント・イーストウッド 「Million Dollar Baby」



英国アカデミー賞(BAFTA Awards, British Academy of Film and Television Arts )
ノミネート作品


作品賞(Film)
アビエイター.
エターナル・サンシャイン
ネバーランド
モーターサイクル・ダイアリーズ
Vera Drake.

主演男優賞(Actor in a Leading role)
ガエル・ガルシア・ベルナル「モーターサイクル・ダイアリーズ」
ジム・キャリー「エターナル・サンシャイン」
ジョニー・デップ「ネバーランド」.
レオナルド・ディカプリオ「アビエイター」
ジェイミー・フォックス「レイ」

主演女優賞(Actress in a Leading role)
シャーリーズ・セロン「モンスター」
イメルダ・スタウントン「Vera Drake」
ケイト・ウィンスレット「ネバーランド」「エターナル・サンシャイン」
章子怡「LOVERS」.

監督賞(The David Lean Award for achievement in Direction)
マーク・フォスター「ネバーランド」
ミシェル・ゴンドリー「エターナル・サンシャイン」
マイク・リー「Vera Drake」
マイケル・マン「コラテラル」
マーティン・スコセッシ「アビエイター」

助演男優賞(Actor in a Supporting role)
アラン・アルダ「アビエイター」
フィル・ディヴィス「Vera Drake」
ジェイミー・フォックス「コラテラル」
クライヴ・オーウェン「Closer」
ロドリゴ・デ・ラ・セレナ「モーターサイクル・ダイアリーズ」

助演女優賞(Actress in a Supporting role)
ケイト・ブランシェット「アビエイター」
ヘザー・クラニー「Vera Drake」
ジュリー・クリスティ「ネバーランド」
ナタリー・ポートマン「Closer」
メイル・ストリープ「The Manchurian Candidate」

Orange Film Of The Year (一般投票による昨年度ベストヒット10作品)
ブリジット・ジョーンズの日記/キレそうな私の12か月
デイ・アフター・トマロウ.
ハリー・ポッターとアズカバンの囚人
Mr.インクレディブル
アイ・ロボット
スクービー・ドゥー2/モンスター パニック
シャークテイル
シュレック2
スパイダーマン2.
トロイ

英国作品賞(The Alexander Korda Award for the Outstanding British Film of the Year)
Dead Man's Shoes.
Harry Potter And The Prisoner Of Azkaban.
My Summer Of Love.
Shaun Of The Dead.
Vera Drake.

外国語作品賞(Film Not In The English Language)
A Very Long Engagement.
Bad Education.
The Chorus.
LOVERS
モーターサイクル・ダイアリーズ

脚本賞(Best Original Screenplay)
The Aviator
Collatera
Eternal Sunshine Of The Spotless Mind
Ray
Vera Drake.

脚色賞(Best Adapted Screenplay)
The Chorus.
Closer.
Finding Neverland.
The Motorcycle Diaries
Sideways.

音楽賞(Achievement In Film Music (The Anthony Asquith Award))
The Aviator.
The Chorus.
Finding Neverland.
The Motorcycle Diaries.
Ray.

撮影賞(Cinematography)
The Aviator.
Collateral.
Finding Neverland.
House Of Flying Daggers.
The Motorcycle Diaries.

編集賞(Editing)
The Aviator.
Collateral.
Eternal Sunshine Of The Spotless Mind.
House Of Flying Daggers.
Vera Drake.

プロダクション・デザイン賞(Production Design)
The Aviator.
Finding Neverland.
Harry Potter And The Prisoner Of Azkaban.
House Of Flying Daggers.
Vera Drake.

衣装デザイン賞(Costume Design)
The Aviator.
Finding Neverland.
House Of Flying Daggers.
The Merchant Of Venice.
Vera Drake.

音響賞(Sound)
The Aviator.
Collateral.
House Of Flying Daggers.
Ray.
Spider-Man 2.

特殊効果撮影賞(Achievement In Special Visual Effects)
The Aviator.
The Day After Tomorrow.
Harry Potter And The Prisoner Of Azkaban.
House Of Flying Daggers.
Spider-Man 2.

メイクアップ・ヘア賞(Make-Up And Hair)
The Aviator.
Finding Neverland.
Harry Potter And The Prisoner Of Azkaban.
House Of Flying Daggers.
Vera Drake.


2005年01月18日(火)
幕末の洋装と海軍のはなし

今となってはもう随分と昔の話になってしまいますが、昨年の11月23日の日記に、幕末の洋装と海軍の話を書きました。

「幕府海軍の榎本の洋装は何処で調達したのか? 日本国内で洋服が製産されるようになったのはいつ頃か?」

という疑問を掲げていたのですが、この疑問の答えを教えてくださった方がありました。
Sさん、本当にありがとうございました。
しばらく前にいただいていたのに、ご紹介がすっかり遅くなってしまって申し訳ありません。

ご紹介いただいたのは、「日本洋服史」というホームページです。
こちらは、東京洋服商工協同組合のホームページの一部で、トップページから「スーツの歴史」>「近代洋服史」とたどって行くと、幕末の洋服事情がわかります。

このホームページの内容を簡単に解説しますと、日本で初めて本格的な洋装を採用したのは、幕末の長崎に設立された幕府海軍伝習所でした。
理由は、まぁ必要に迫られて…というか、皆さんも想像がおつきだと思うのですが、羽織・袴に大小の刀をさしていては、とてもではありませんが、帆走軍艦上で機敏な振る舞いはできません。(段索に袖や刀が絡まって、さぞかし大変だったろうと思います)
そこで、この伝習所の伝習生たちの為の制服用にオランダから洋装が輸入された。
ですから、そもそもここの伝習生だった榎本武掲は、オランダ留学前から洋装に親しんでいた…ということになるのですね。

この洋装が国内で大量生産(というほどでもないけれども)されるようになったのは、それから9年後の長州征伐の時だったそうです。
このとき幕府は足袋職人や仕立屋を使って2000着の段袋(洋装まがいのもの)を仕立てたとか。
というわけで、11月の話題だった鳥羽・伏見の戦いの時の洋装は、おそらく国産のものだったのでしょう。

もうひとつ、この日の記事に関して教えていただいたこと。
鳥羽・伏見の戦いのあと大阪を脱出することになった幕府海軍のどたばたについて。
実は今、朝日新聞の夕刊では、吉村昭氏の「彰義隊」という新聞小説が連載されていますが、この小説にかなり詳しいことが書かれているとのこと。該当部分のコピーを送っていただいたのですが、英国軍艦だけではなく、アメリカ軍艦なども絡んでいたようですね。
新聞掲載は昨年の11月頃になります。
新聞縮小版またはこの小説がハードカバーになりましたら、ご参照ください。


2005年01月16日(日)
東京銀座:ザ・ロープ帆船模型展

毎年恒例の「ザ・ロープ 帆船模型展」が、今年も東京・銀座の伊東屋で本日から開催されます。

「ザ・ロープ 帆船模型展」第30回記念
会期:2005年1月15日(土)〜1月30日(日) 入場無料
主催:ザ・ロープ
会場:銀座 伊東屋 本店9Fギャラリー

伊東屋 銀座本店 ITO-YA1・ITO-YA2・ITO-YA3
〒104-0061
東京都中央区銀座2-7-15
03-3561-8311(代)
平日(月〜土)/10:00am〜7:00pm
日祝日/10:30am〜7:00pm
地下鉄銀座駅下車A13松屋口より
京橋方面に向かい約100M 徒歩2分

明日16日の午後あたりのぞきに行ってみようかな…と、会場で見かけたらお声をおかけください。

《改訂情報》
左側の「はじめに」を一部改定しました。当初のupから1年半が経過して時代遅れになってしまったので、アップデ−トしてみました。


2005年01月15日(土)
夢物語と現実的な映画の話

今週末はゴールデン・グローブ賞の発表、日本時間では17日(月)の午前中になります。
去年は作品賞にも主演男優賞にもM&Cがノミネートされていたので、そわそわしていましたが、今年は他人事。
もっとも個人的にはクライブ・オーウェンが助演男優賞ノミネートなのでちょっと…ではあるんですけど。
アカデミー賞前哨戦と言われるゴールデン・グローブ賞ですが、下馬評では「サイドウェイズ」有利と言われてます。さてどうなりますことやら。

そうそう、夏頃に密かにお奨めしていた「キング・アーサー」ディクターズカット版DVDは、来週金曜1月21日の発売です。
劇場公開版と値段は同じなので、ぜひ是非ディレクターズ・カット版の方をご購入くださいませませ。
上の段落との関連は主演がクライブ・オーウェンってことでつながっているのですが、もちろん海洋小説ファンの皆様には、準主役のランスロットが、ホーンブロワーを演じたヨアン・グリフィス…ということでプッシュしたいと思います。

映画カレンダーを見ていると、1月の上映作品入れ替えは18日と19日の間、つまり19日(水)封切りという映画が多いのですね。
日本はこれまで土曜日初日だったのに、今年からアメリカ並みに水曜日になるのでしょうか?
これって勤め人にはちょっと不便なんですけど。初日の初回に行けないじゃありませんか。
アメリカの知人が、一昨年「ロード・オブ・ザ・リング:王の帰還」のために公開初日に休暇を申請したと聞いて、つくづく、休みをとらなくってすむ日本はありがたい…と感謝していたというのに。

私はたぶん、当分は休みをとるほどの映画はないと思いますが、もし「M&C2」なんていう話があったら(今のところはありません)、それこそ1日ではなくって3日休んでアメリカかオーストラリアに見に行っちゃうだろうし。

私のネットでの情報収集先の一つにラッセル・クロウのファンサイトがありますが、ここではもうラッセル最新作初日までのカウントダウンが始まっています。といってもまだ150日近くあるらしいですが。今度は大恐慌時代のボクサーを演じるようです。
この最新作「シンデレラ・マン」の日本公開は、来年2006年…という噂です。

アメリカの今年の公開作(日本は来年2006年)で楽しみなのは、やはり「ナルニア国物語:ライオンと魔女」でしょうか?
このイギリスの古典ファンタジーは、以前に一度英国BBCテレビでドラマ化されていますが、いかんせん予算の制約があり苦しい映像になっており、現代の最先端の映像技術を駆使して映画化される今回、ファンタジー映像がどうなるのか楽しみなところです。
でも…ディズニー映画なので、原作の渋さが消えて娯楽色が強くなる可能性も…ちょっと不安。

実は先日、ファンタジー好きな方とちょっとブラックな予想をして…、
ナルニアの映画が公開されたら、もちろん、当然、東京ディズニーランドは、映画とのタイアップ企画を打ち上げると思うんですよね?
それって…つまり、「アスランの着ぐるみがディズニーランドで踊っちゃう」…ってこと?
アスランは獅子の姿をとって降臨するナルニアの絶対神ですが…、ライオンの着ぐるみはいやだよ。

でも、もしこの映画が成功したら、続編が作られるかもしれない。そしたら3巻目の「朝びらき丸東の海へ」も映画化されるかもしれない。
もし映画会社が「朝びらき丸」の復元船を建造して、それが東京ディズニーシーに来てくれたら、私、泣く泣く着ぐるみのアスランは許す…けれども。
もちろん、こんな夢物語、ここに書きながらも私自身は全く期待しておりません。
サンディエゴのサプライズ号が大阪のユニバーサルスタジオ・ジャパンに来るのと、どっちが可能性高いのでしょう?

冗談はともかく、夢物語ではない一番現実的な映画の話は、ポール・ベタニーの最新作がまもなく日本公開になるということ。
「ウィンブルドン」の公開は2月と言われていますが、20日発売の映画雑誌にはそろそろ予告が載るかしら?などとちょっと楽しみにしています。


2005年01月14日(金)
アークティック・ミッション

東京・東中野の「ポレポレ東中野」という小さな映画館で、1月18日まで「アークティック・ミッション」という海洋記録映画が上映されています。
カナダの海洋調査船セドナ号の北極(アークティック)探検航海(ミッション)を記録したドキュメンタリー。
友人のおすすめで見に行ってきたのですが、私にはとても面白い…というか幸福になれる映画でした。

なにが幸福なのかはちょっと置いて、まずは映画のご紹介。
この映画でとりあげられている海洋調査船セドナ号の北極(アークティック)での任務(ミッション)とは、
(1)地球温暖化の影響調査。
(2)1845年に北極航路開拓のため探検航海に出て行方不明となったサー・ジョン・フランクリンと指揮下の2隻H.M.S.エレバスとH.M.S.テラーの調査
の2点です。

カナダの海洋調査船セドナ号は、十数名のクルーとともに、カナダ大西洋岸のハリファックスを夏の初めに出航、北アメリカ大陸の北(ラブラドル海とクイーンエリザベス諸島を抜けてボーフォート海)をまわり、ベーリング海峡経由で太平洋に向かいます。

途中、融けだした永久凍土や、氷がなく陸続きにならないため海が渡れず餓死したシロクマなど、地球温暖化の明らかな証拠を記録しつつ、流氷の隙間をぬって北極海を進むのですが、地球温暖化が進み気温が上昇したと言われる21世紀に、最先端の科学機器のサポートを受けても、真夏の短い期間に流氷の残る北極海を北まわりで大西洋から太平洋に抜けるのは、容易なことではありません。
レーダーやGPS、気象衛星、さらに航空機による上空支援を受けても、流氷に閉じこめられかねないピンチに再三再四遭遇、閉じこめられたら最後、翌年の夏まで脱出できなくなりますから大変です。

ベテランの船乗りと科学者、男女十数名の混成チームがどのようにこのピンチを乗り切っていくか?
記録映画であると同時に冒険航海ドラマとしての側面も、この映画はもっているというわけ。
それが、昔大好きだったある番組を思い起こさせてくれて、私に楽しいひとときをもたらしてくれました。

昔むかし、まだ私は小学生だったので1970年代の話だと思うんですけど、日本テレビ読売系で「驚異の世界」という紀行番組があって、そこで定期的に「クストーの海底世界」というドキュメンタリーを放映していました。
ジャック・イブ・クストー船長率いるフランスの海洋調査船カリプソ号の冒険ドキュメンタリーです。

クストーは記録映画も幾つか撮影していて、「沈黙の世界」と「太陽の届かぬ世界」は有名。これはビデオでは昔出ていたのですが、今では入手がむずかしいかしら。
TVで放映していたのは、映画ほど大がかりなものではなく、例えばオーストラリアのグレートバリアリーフとか、南極の氷の海とか、ギリシアの沈没古代船の発掘など、カリプソ号が手がけた調査の過程を記録し、紹介する30分番組でした。

最初は海中撮影の物珍しさに惹かれて見ていたのですが、シリーズを何作も見ているうちにカリプソ号の乗組員たちの顔を覚えてしまい、また抜群のチームワークを誇るカリプソ号クルーの独特の雰囲気というか、あの船の持つ空気みたいなもの…を楽しみにするようになりました。

カナダの海洋調査船セドナ号にも、セドナ号独特の空気というかチームワークのようなものがあるのです。それが映画を見ているとつたわってくる。なんだかとても嬉しくなります。
これはフィクション、ノンフィクションを問わず存在する海洋モノの一つの魅力でしょう。
もう一昨年の日記になりますが、オーストラリアにM&Cを見に行って初めて書いた映画感想(2003年12月23日)に「サプライズ一家」のことを書いたと思うのですが、これも同じようなものです。

してみると、私に海洋モノのもう一つの楽しさを教えてくれたのは、あのクストーのカリプソ号だったのでしょうか?
先日、朝日新聞をぱらぱらと見ていたら、活動を停止したクストーのカリプソ号は、カリブ海のバハマで博物館として展示公開されることになった…という記事が出ていました。
あぁ行ってみたいなぁと思ってしまったりして、でもカリブ海遠いなぁ。

さて、セドナ号のもう一つの調査対象であるフランクリン探検隊について。
19世紀の半ば、まだパナマ運河の無い時代、イギリスは、ホーン岬まで南下せずカナダの北をまわって太平洋に抜けることのできる航路を開拓しようとしていました。
北極海を木造帆船で航海しようとしたのです。

1845年英国海軍はサー・ジョン・フランクリンの指揮するH.M.S.エレバスとH.M.S.テラーという2隻の軍艦を北極海に派遣しました。
彼らは短い夏を利用して果敢に西をめざすものの、やがて流氷に閉じこめられ、そのまま一冬を越冬します。翌夏航海を続行しますが、結局流氷からは逃れられず、三冬目にその消息は完全に消えました。

極北の島々に残されたわずかな手がかりから、フランクリンは1947年の冬に死亡したこと、1948年までは一部の乗組員が生存していたことが確認されていますが、2隻の艦の運命はいまだに謎のままです。
先日テレビで放映されたシャクルトンのエンデュアランス号のように、氷に押しつぶされ沈没したのではと推測されているようですが。

今回の調査でセドナ号は、この2隻のものと思われる船の肋材や金釘の一部を発見します。
今後の調査が待たれるところです。

このフランクリン探検隊の話を最初に聞いた時には「そんな無茶な」って思ったのですよ。
網走まで流氷が来る日本人の常識からしたら、そんなカナダの北なんてまわれるわけない…って思うでしょう? でもよく考えてみたらヨーロッパの常識って日本の常識とは全く違うんですよね。
ロシアのムルマンスクでも海が凍らない。

それでヨーロッパというか、大西洋の東側の流氷限界を調べてみたら、なんと北緯70〜75度なんです。だからイギリス人たちは「北極海も行ける!」って思ってしまったんでしょうか?
でも実はカナダ…大西洋の西側だと流氷限界は北緯45度で、流氷の来るハリファックスは、日本の稚内とほぼ同緯度。だから日本の常識で「これは無茶」っていうのは、この場合、間違ってないと思うんですけど。

さらに、じゃぁ日本で流氷の来る北緯45度はヨーロッパでは何処になるかというと、イギリス最南端よりさらに南、フランスのボルドー(ビスケー湾)、イタリアのヴェネツィア…が、なんと稚内か網走かって緯度なんですね。ヴェネツィアなんてアドリア海ですよ。うそだぁ〜。

ところで、この悲劇の探検隊の指揮官だったサー・ジョン・フランクリンは1786年生まれでした。
ということはナポレオン戦争の時代に、士官候補生として海軍に入っている筈、1805年に19才だから、M&Cのカラミー候補生くらいの年回りです。
当時の資料(王国海軍士官名簿)をお持ちの方が調べてくださったのですが、

サー・ジョン・フランクリンは1786年4月16日生まれ。1800年14才で海軍に入り、1807年12月に21才で海尉任官試験に合格、翌1808年22才で海尉、この時代が長く、1821年35才で海尉艦長(コマンダー)、翌1822年36才で勅任艦長の地位にたどりついています。ナイトに叙せられたのは1829年、1834年に海軍を引き1845年までヴァン・ディーメン島の総督を務めますが、この探検の指揮をとるために1845年に海軍に戻り、1847年北極海にて死去、61才。死後少将に叙せられる。

これは単に数字だけの記録なのですが、あの時代(19世紀前半)の海洋小説に親しんでいると、この数字記録からも見えてくるものがあります。
一度は現役を引き、総督職にあったフランクリンが何故、このために復帰の決意を固めたのか…、小説家が物語を書きたい!と思うのは、きっとこういう記録に出会った時のことなのでしょう。

話がまわりまわってこんなところまで来てしまいましたが(だから更新が遅いのだろうって? えぇその通りですね)、この映画まだ1週間ほど上映してますので、興味をもたれた方はご覧ください。
映画の詳細は映画館のHP: http://www.mmjp.or.jp/pole2/ にて。

映画を教えてくださったKさん、資料をご提供くださったTさん、ありがとうございました。


2005年01月10日(月)
ノリントン提督のH.M.S.インターセプター、H.M.S.サプライズにご対面?

アメリカのファンサイトで「サンディエゴの海事博物館に展示されているサプライズ号は、ちかぢか補修のために乾ドック入りが予定されており、3月からしばらく公開は中止になるらしい」という情報がアップされていました。

それで、この情報のウラをとるためにサンディエゴ海事博物館のHPに行ってみました。
が、現時点ではまだ、3月のニュースは掲載されておらず、サプライズ号ドック入りの真偽は確認できておりません。

ところがところが、ここで思わぬニュースを拾ってしまったのでございます。
1月12日に、レディ・ワシントン号、ハワイアン・チーフテン号、リンクス号の帆船3隻がサンディゴに来航し、海事博物館のカリフォルニアン号とともに、「エキサイティングな砲撃戦を行う!」。
このニュースの詳細はこちら(英文です).。この戦いを見るためにはチケットを買わなくてはならないようですよ。

砲撃戦と言っても空砲の模擬戦みたいなものでしょうけど、ここで問題なのは、これに参加するのがレディ・ワシントン号だということ。

レディ・ワシントンって「パイレーツ・オブ・カリビアン」の快速フリゲートH.M.S.インターセプターですよ!
あの、ジャック・スパロウと鍛冶屋のウィルがたった2人で盗み出した(到底不可能!)、あのノリントン司令官のフリゲート艦を、映画の中で演じた船なんです。
映画ではありえないけど、現実には実現してしまうH.M.S.サプライズとH.M.S.インターセプターのご対面!
あぁサプライズ号を砲撃戦に出してくれればいいのに!

映画の年代で言えば、この2隻の活躍年代は80年ほどずれているのですが、実際のレディ・ワシントンは1750年建造の米国商船の復元船、サプライズは1794年建造のフランスのコルベット艦の復元ですから、この場合のずれは40年ほどですか?

ちなみに今回サンディエゴにやってくる他の2隻、リンクスと、ハワイアン・チーフタンですが、
リンクスは1812年建造のアメリカの私掠船の復元です。1812年の英米戦争に活躍したということですから、オリジナルの艦はサプライズ号と出会っていても(砲撃戦を繰り広げていても)おかしくありません。
ハワイアン・チーフタンはもう少し時代が下り、19世紀半ばに建造された米国商船の復元だそうでございます(ハワイアン・チーフタンの詳細スペックはこちら

なんだか想像しただけでワクワクどきどきしてしまいます。
あぁ私がアメリカに住んでいたら、何としても行くのに!

ところで、最初のニュースであるサプライズ号の公開一時中止ですが、未確認情報によると現在のところは11月までの9ヶ月とか。
船体下部の銅板の張り替えなどを行うとのことです。
船体上部については、FOX社との契約に「サプライズ号の形状を変えてはならない」という一条があるので、損傷部分の補修に留めるとのこと。
この件については、確認のとれ次第またお伝えしたいと思います。

ともあれ3月からしばらくの間は、サンディエゴに行ってもサプライズには会えないようですので、この時期にアメリカ渡航を計画されている方、事前に博物館に問い合わせをされて、見学の可否を確認されることをおすすめします。


2005年01月05日(水)
M&C全米DVD売上が1億ドルを越える

米国のDaily News紙によれば、M&Cの全米DVD売り上げが1億ドルを突破したとのこと。

これは「Video sales revenue give studios extra incom from multiplex also-rans」という記事の中で紹介されています。この記事のURLは下記。
http://www.dailynews.com/Stories/0,1413,200%7E20950%7E2623106,00.html

昨今の映画のヒットは必ずしも興行収入(観客動員数)では計れないという内容の記事で、例えばヴァン・ディーゼルの「リディック」は、興行収入が5,800万ドルに対しDVD売上は9,000万ドル。「ブラザー・ベアー」は興行収入8,500万ドルでDVD売上は1億5,800万ドルと2倍以上。

このような例の一つとして上げられているのが「マスター・アンド・コマンダー」。
全米興行収入は9,400万ドルと1億ドルに届かなかったが、DVD売上は1億ドルを上まわった。
これについて製作会社であるFOX社の上級副社長スティーブ・フェルドスタイン氏は、「M&CのDVDは、じわじわと広がっていく。この作品を見た人が、まだ見ていない人に広め、公開時に映画館に行けなかった人たちがDVDを購入していくのだ」と語っている。

いまだにアメリカでは、じわじわと人気が広がっているようですね。
嬉しい限りです。

現在まで米国内で20世紀FOX社が上げた「マスター・アンド・コマンダー」の総収入は、劇場公開とDVDを合わせて1億9,400万ドル超、これはメガヒットとは言えないにしても、FOX社にとって悪い数字ではないと思うのですけれども、あぁいったい何が続編製作の障害になっているのやら。やっぱり監督なのでしょうか?

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12月18日、19日の「なにわの海の時空館」「国立民族学博物館」について、遡り更新を致しました。
ううう、お正月休みにもっと宿題を片付けようと思ったのに、意外と更新が進みませんでした(今日はこれから新年会でお出かけ、明日から仕事です)。
続きは申し訳ありませんが、次の3連休ということで。
今年もマイペース更新になりますが、よろしくお願いいたします。


2005年01月03日(月)
2005年は区切りの年

今日はちょっと真面目で堅い話です。

日曜朝、我が家では「関口宏のサンデーモーニング」という報道解説番組が定番です。
今年初めての放送は、「歴史の区切りとなる年2005年」というような内容の特集でした。
今年は戦後60年という区切りの年、記憶を風化させないためにも、あの時代を知る人たちにインタビューし、この60年の歳月を語る…という内容だったのですが、スタジオの解説者たちの論説はこの60年に留まらず、明治維新までの150年を語るものになりました。

解説者の一人の発言がなかなか興味深いものでした。
「日本の転換点は実は100年前だった。1905年の日露戦争の勝利を国民に喧伝したことで、日本と国民は勢力拡大の魅力を知ってしまった。それまでは植民地化の恐怖が近代化の原動力だったのに、1905年を境に日本は変わったのだ…うんぬん」

そのときに思ったのは、今年は日本海海戦100年だけれども、日本ではきっと英国の「Sea Britain 2005」のようにこれを記念することは無いのだろうなぁということ。
逆に言えば、イギリスはこれを素直に祝える国なんだなぁというか。
それがいいのか悪いのかはわからないけれども。

英国というのは戦勝記念碑の多い国で、観光名所の教会に行っても意外なところにまで戦勝記念プレートが飾られている。
何年か前に英国とドイツを続けて旅行したことがありますが、ドイツの教会には対照的に、そういうものが一切なく、逆に空襲で溶けた鐘などが大切に安置されていて、日本人としてはやはりこちらのほうが落ち着く…と思ってしまったことがあったのですが。

ただ英国の海洋小説や第二次大戦関連の冒険小説を読んでいる限りにおいては、そのような居心地の悪さは感じません。
基本的には、フォレスターにせよ、オブライアン、ケント、ポープにせよ、あの戦争の時代を実際に経験した人たちが書いているということが多いのでしょう。
英国は連合軍として第二次大戦に勝利をおさめたけれども、それは決してハッピーエンドではなく、その為に支払った代償があまりにも大きすぎた。それを実際に経験した世代は、英国人が主人公として活躍する海洋小説を書いても、決してそのことを忘れない。
そのあたりが理由なのではと思います。


2005年01月02日(日)
元旦、2日「シャクルトン」放映

明けましておめでとうございます。
本年も宜しくお願い申し上げます。

今年2005年は、英国海洋小説ファンにとってはトラファルガー200周年の年です。
日本人としては、日本海海戦100年の記念すべき年でもあります。
この情報日記は、主に英米の海外情報を中心にお伝えしますが、今年もまた内外の記念イベントなどオフラインでも宜しくお願い致します。

さて、早速といいますか、新年早々からあたふたと言いますか、
間抜けな管理人は今朝新聞のTV欄を見て「びっくり!」でございました。
今日、ケネス・ブラナーの「シャクルトン」の放映が地上波であるんですね。

これはもう絶対のおすすめでございます。
本当に良く出来たドラマです。
「M&C」からは海兵隊長クリス・ラーキンと、掌帆長イアン・マーサーが出演しています。
吹き替えも見事です。

「シャクルトン」
前編:1月1日 22:00〜23:45 NHK教育テレビ(地上波)
後編:1月2日 22:00〜23:45 NHK教育テレビ(地上波)

本日の「ホーンブロワー」
第一話「決闘」 1月1日 24:50〜26:35(2日0:50〜2:35) NHK衛星放送第二(BS11)


2005年01月01日(土)