Sail ho!:映画「マスター&コマンダー」と海洋冒険小説の海外情報日記
デジタル教育で「シャクルトン」10月2日、9日放映
NHKデジタル教育放送で、10月2日、9日に「シャクルトン」が放映されます。 残念ながら…デジタル教育…、私は見られませんが、もしご覧になれる方がありましたら、ぜひ是非ぜひご覧くださいませ。
詳細はこちら↓ http://www3.nhk.or.jp/kaigai/shackleton/index.html デジタル教育放送を受信できない方も、このページだけでもご覧になって損はありませんので。
前編:10月2日(土)17:10〜18:55 後編:10月9日(土)17:10〜18:55
「マスター・アンド・コマンダー」からは海兵隊長のクリス・ラーキンと掌帆長のイアン・マーサーが、 「ホーンブロワー」からは、第3シリーズで艇長ウォルフを演じたローカン・クラニッチが出演。 先日放映の「シャーロック・ホームズ:バスカビルの犬」のヘンリー卿ことマット・デイ…はまたもや熱血青年を演じております。 二等航海士クリーンのマーク・マッガンは、ホーンブロワーのブッシュことポール・マッガンの弟さんだったりします。
しかし何よりともかくこれは、ケネス・ブラナーが素晴らしい! 吹替えの磯部勉氏も見事です。 特に後編。ブラナー演じるシャクルトンが、マット・デイ演じるハーレイに言う印象的なセリフが忘れられません。
この番組、本放送が去年5月(BS11)、再放送が昨年8月(地上波総合深夜)だったのですが、是非お勧めのドラマですので、なんとかもう一度、地上波で再放送を…、皆様上記HPの「ご意見・ご要望」のところから、「再放送希望」をクリックして送信しましょう。
ちなみに、この作品でのクリス・ラーキンのトレードマークはパイプを愛用していること…です。これを目印に探してくださいませ。
Uさん>情報提供ありがとうございます。
2004年09月29日(水)
航海続行(10月以降の当サイトについて)
昨日ご紹介したガラバゴス島の記事で、映画「マスター・アンド・コマンダー」公開に関する海外の手持ち記事はほぼ紹介し尽くしたことになります。 DVD発売から2ヶ月、新たなファンの方もほぼ一巡したと思われますし、M&C海外情報HPとしての「Sail ho!」の役割はほぼ終了かと思われます。
本来の予定では、これにてこのHPは終了…だったのですが、実は今このHPを閉めてしまうのはどんなものか?…という動きがありまして。 それは8月12日にご紹介したFOX社の対応。 どうも水面下では続編をねらっているらしいのですが、いろいろ難航しているようで正式には何の発表もありません。 現在サンディエゴの海事博物館に引き渡されたサプライズ号の契約は、オプションでFOX社へのリース契約が付いているという話もあり(これは未確認情報)、米国のファンサイトでは、あと1年程度は様子を見ようという意見のようです。 …となると、可能性がゼロで無い以上、私もいちおう後1年はこのサイトをこのまま置いておいたほうがよいかな…と。
というわけで、引き続き10月以降もパトリック・オブライアンとマスター・アンド・コマンダーに関する何らかの海外情報があれば中継していきたいと思っています。 ただし、当然のことながらニュースは減るでしょうから、更新は前ほど頻繁ではなくなるでしょう。 少し余裕もできますので、少々網を広げて、海洋小説・海洋映画全般についても、何かあったら拾っていきたいと思います。 ただし、第4シリーズが決まっている「ホーンブロワー」関連については、専門サイト「順風満帆」のほうが詳しいと思いますし、海外の帆船レース情報などは「Salty Friends」で速報してくださいますので、私の出る幕ではありません。
もっとも逆に、専門が限られないゆえに拾える情報…もあるかもしれませんし、ま、しょせん風まかせの海の上、なりゆきまかせに漂ってみるのも一興かと。 来年はトラファルガー海戦200周年ということで、英国では「Sea Britain 2005」と題して数々の記念イベントが行われるようですし、何か面白い情報など拾えるかもしれません。 個人的には来年から撮影が始まるスペインの海洋歴史映画「エル・カピタン・アラトリステ」を楽しみしているのですが、スペイン語HPを訳せるほどの能力は無いので、これについては、どこかに英語サイトでも見つかれば。
また10月以降は、現在よりは多少、私が個人的に書かせていただくページ(映画、小説評など)が増えると思います。 と言ってもここをプライベートな日記の場にするつもりはありませんし、話題も海洋関係と、網を広げても歴史・冒険小説あたりまでに限るつもりです。 今アマゾンUKにジェフ・ハント(M&Cの表紙を描いた画家)の画集をオーダーしているのですが、一緒にジェームズ・ダーシー&リー・イングルビーの「ニコラス・ニックルビー」DVDを頼んでしまいました。いずれこのドラマの話なども。 できたら他の海外歴史ドラマなどもご紹介したい…という野望も密かにかかえていたりします。
そのようなわけで少なくとももう1年、「Sail ho!」は航海を続ける予定です。 なにとぞよろしくお願い申し上げます。
2004年09月27日(月)
魔法の島ガラパゴス
英国タイムズ紙2003年11月22日号から、「A Great Place to Meet Lounging Lizards」をご紹介します。 この記事は新聞の旅行欄に掲載されていたので、私は旅行案内だと思い紹介を後回しにしたのですが、今読んでいると撮影の裏話などが多く、もっと早くにご紹介すべきだったと、ちょっと反省しています。申し訳ありません。
A Great Place to Meet Lounging Lizards By Graeme Grant, 2003/11/22 (タイムスのバックナンバー記事は一定期間がすぎるとリンク切れになりますので、トップページ(http://www.timesonline.co.uk/?999)のarchivesから記事名で検索をお願いいたします)
「ガラパゴスに数日滞在すると、」 ポール・ベタニーは私(タイムズ紙の記者)に語った。 「僕はあの島に完全に圧倒されてしまって、監督のピーター(ウィアー)のところに行って言ったんだ」 「僕のこれまでの演技は、ぜんぜん違う、これでは映画が台無しになる。僕が動物にかかわるシーンすべてを撮り直してくれないか、とね。ガラパゴスでなければわからない。僕は驚異の世界を実感し、大自然への賛美の思いに満たされた。ガラパゴスの自然の前では自分は実にちっぽけな存在だとわかる。あの島は素晴らしい場所なんだ。あなたも是非行ってみるべきだよ」 そこで、私(記者)は実際に行って解き明かしてみることにした。この驚異の世界を。
ガラパゴスはもともとは「ラス・エンカンターダス」(魔法をかけられた諸島)と呼ばれていた。 だが、人間がこの島にやってくるようになると、その魔法の幾分かは失われていった。 漂流したパナマの司教がこの島々を「発見」したのは、1533年のことである。スペイン王への書簡の中で司教は、この島の巨大な亀については述べているが、島そのものについては価値を認めていない。
16世紀末頃には海賊たちが基地として使っていたようだ。彼らは南米に突如出現したスペイン帝国の、ガレオン船と黄金をねらっていた。 18世紀になると捕鯨船がやってきて、島と周囲の海域を荒らし始めた。19世紀前半の50年の間だけでも700隻近い捕鯨船がこの海域で操業し、ガラパゴス島から20万頭の大亀を捕獲し、幾種類かの亜種を絶滅に追い込み、島にネズミ、家畜、ロバと犬を持ち込んだという。
ガラパゴス島で映画の撮影が行われたのは初めてのことである。 この映画のロケーション担当マネージャーは、この島でのロケにこだわった理由を、 「今や大抵のものはコンピューター・グラフィックスで作り出すことができる。だが、のそのそ這い回る海イグアナや、縦横無尽に飛び回るフリゲート・バード(グンカンドリ)、そのビーズのような目でこちらをじっと見返す、水色の足をした不思議なカツオドリを作り出すことができるだろうか? 俳優たちを全くおそれず近寄ってくる動物たち。それはデジタルでは絶対に代用のできない映像だ」
自然保護の徹底しているガラパゴス島のこと、撮影隊も通常の観光客以上の動物への接近は許されなかった。 映画の登場人物たちが動物を捕獲するシーンはガラパゴスではなく、すべてメキシコで撮影された。
少人数の撮影チームだけが島への上陸を許され、機材はすべて人力で搬送した。 「我々は、通常より大型のカメラを持った観光客にすぎなかった」とロケ担当マネージャー。 「だが撮影時に生じたもっとも大きな問題は、海イグアナの群れの中に踏み込めないことではなく、彼らに『岩の上から立ち退いてください』と言っても通じないことだった。アシカ同様イグアナも興奮しやすい生き物で、一日中太陽の下でゴロゴロしては、「アー」とかなんとか鳴いている。まったくうらやましいご身分だ」
実際に島に行って、私(記者)も驚かされ放しだった。 たとえばアシカたちは、実際にいたるところいて、まるでラブラドール・レトリバーの子犬の群れのようだ。 我々観光客は彼らに手を触れることが許されていないのに、彼らのほうからすり寄ってくる。 ポール・ベタニーの話を思い出す。 「撮影の合間に僕はうとうとと昼寝をしていた。目を覚ましてみると、なんとアシカの子が僕のすぐ横で丸くなって眠っていたのさ」
海の中でも観光客は、この豊穣の楽園の住人たちにしてやられる。 ガラパゴス以外の何処に行ったら、シュノーケリング中にカメラをつつかれて撮影が台無しになる…などということがあるだろう。カメラをつついたのは、遊び相手を欲しがっているアシカだ。 そして私は昼食をねらって急降下爆撃(dive-bombing)するペンギンの姿を撮り損なったのだった。 取り落としたカメラは、あやうく巨大なカメに踏んづけられるところだった。 このような場所が他にあるだろうか?
ガラパゴスは美しい島とは言い難いという意見もある。 そこにあるのは、人間の手の届かぬ荒涼とした光景だ。映画に登場するBartolome島は全くもって生き物の姿が見られぬような島だが、真黒な火山岩、暗褐色の溶岩がすべてを焼き尽くした地には荘厳さと、荒涼の美があり、地球のコアに触れたような気がする。
ガラパゴスを離れる日には、誰もが「もっとここに居たい、もっと見たい」と願うことだろう。 私はついぞ「飛べない鵜」を見ることができなかった。 だがラッセル・クロウ演じる艦長のセリフにもある通り その鵜は飛べないのだから、きっと何処にも逃げてはいかないだろう。
ガラパゴスへの旅(英国から) 飛行機でエクアドルの首都キト市へ、ガラパゴスへの1週間クルーズ「ビーグル」はキトから出発。 英国からの往復航空賃とキト市(ヒルトン・ホテル)での2泊を含むツァー代金は2,775ポンド(約55万円)。 2週間クルーズは4,175ポンド(約83万円)から。
ベストシーズン 1年を通じて気候は安定しているが、比較的涼しく過ごしやすいのは5月〜12月。 海の透明度を求めるなら、1月〜3月。 この島はエル・ニーニョ現象の影響を非常に受けやすいため、エル・ニーニョの年は避けたほうが賢明。
ガラパゴス関連ホームページ The Galapagos conservation Trust : www.gct.org Galapagos National Park : www.ga;apagospark.org Charles Darwin Foundation : www.darwinfoundation.org
2004年09月26日(日)
こんどは津軽海峡を渡って開陽に会いたい
先週の3連休は結局、旅行に出かけてしまい、ネットにはすっかりご無沙汰してしまいました。 JR東日本には「3連休パス」という割引きっぷがあり、3連休限定でJR東日本乗り放題(新幹線、特急含む)26,000円。これを利用して本州の果て下北半島の大間崎まで行ってきたのでした。
本州最北端の地は、津軽海峡を挟んで対岸に北海道をのぞむことができます。 お天気がよかったので函館から松前まで一望のもと。
大間崎より津軽海峡と北海道をのぞむ
時節柄(というかこの日は日曜日だったので)函館といえば五稜郭(日曜8時は大河ドラマ新撰組!)。 それでハッと思い出したのですが、ここは「開陽」が沈んだ海なのですね。 司馬遼太郎「街道をゆく」の松前編を読んでいると、繰り返しこの開陽の話が出てきます。 開陽は、幕府海軍の機帆走軍艦。榎本武揚が率いて五稜郭まで航海してきたものの、嵐のためにこの津軽の荒海に沈みます。 このあたりの事情は「燃えよ剣」にはさらっとしか書かれていませんが、「街道をゆく」を読むと、司馬先生ご自身のこの艦への思い入れがひしひしと。
この開陽、現在は海底から引き揚げられ、10年ほど前には復元船も建造されました。 レプリカ艦は現在、江差町に係留されています。 新選組(土方歳三)にかこつけた(苦笑)、榎本と開陽の詳しい事情はこちらのHPを 新選組、北へ!「江差・開陽沈没」
このHPでは開陽の艦内が写真で紹介されています。 開陽は1860年頃にオランダで建造された艦で、サプライズ号の時代とは60年ほどの開きがあるのですが、砲列甲板の雰囲気などはあまり変わっていませんね。もっとも大砲そのものは、この60年でおそろしく進歩している筈ですが。 開陽の水兵さんたちは相変わらずハンモックで寝ていた模様、上記のHPによるとハンモック体験も出来るそうです。 これはちょっと、行ってみたいかも。 次回はぜひ、津軽海峡を超えて江差まで、サプライズ号体験を味わいたいもの。
先週末からのもう一つのマイブームはシャーロック・ホームズ。 18日の土曜日にNHKBSで放映されたシャーロック・ホームズ「バスカヴィルの魔犬」はさすがBBC製作、丁寧に作られた長編ドラマでした。 ホームズのドラマと言えばやはり、10年以上昔にNHKで放映された英国グラナダTV制作のシリーズが有名ですが、今回のドラマ化ではグラナダ版より若い俳優が演じていたこともあり、アクション部分もあって、ある意味楽しく見ることができました。 リチャード・ロクスバラのホームズは、グラナダ版のジェレミー・ブレットほど妖しいところは無いけれど、いかにも頭の切れる、猫のような身のこなしの完璧な英国紳士。 そう言えば、むかしグラナダ版を地上波NHK総合で放映した時にはカットされていた、ホームズがあやしげなクスリを打つシーン、今回はしっかり放映されていましたが、BSだからよいのかしら? ワトソン(イアン・ハート)が予想外に活躍して、あら?この話ってこんなにワトソン格好良かったっけ?…と思いました。
一部原作をはしょっているという話だったので、確認のために新潮文庫版の「バスカヴィルの魔犬」を買ってじっくり読みなおしてみました。 カットされたのは1エピソードのみ、結末が変わったのも1箇所のみですが、これはこれでよいのではないでしょうか。
実は私、大人向けのホームズを読むのはこれが初めてなんですね。ホームズはその昔、小学校4年生の時に、ポプラ社から出版されていた子供向けシリーズで読んでしまったので。 大人向けのシリーズは、新潮文庫版も創元推理文庫版も翻訳者が明治生まれの方で、日本語に訳されたのはかなり昔のことと思われます。それゆえにホームズもワトソンも少々古風な話し方…夏目漱石の小説に出てくるような明治時代の会話口調…ですが、それ何ともあの時代らしい雰囲気です。 講談社文庫の「バスカヴィル」は大沢在昌が子供むけに簡訳したものであるため、二人の会話は現代口語。子供むけであるからには致し方ないとは言え、比べてみるとやはり新潮や創元のほうが「いかにも明治の男」で味わいがあります。
早川文庫のオーブリー&マチュリンも、やはり会話は古風。 もっとも彼らの場合は、明治の男ではなくって、実は江戸時代(文化・文政:将軍家斉の時代)なのですが、英国は既に近代化しているためか、日本語的には明治でも違和感はありません。 これはホームズでもコナン・ドイルの事件簿でも言えることですが、昔の英国紳士たるものは外出したり客に会ったりする時は常に完璧に身なりを整えているもので、その格式があの古風な口調に見事にあいまっていますし、規律を第一とするサプライズ号の世界にもなじむものなのでしょう。
え?最後をムリヤリM&Cの話題に落としているって? そんなことありませんってば。 今回ひさしぶりにホームズを読んでつくづく、友人同士の機知ある紳士の会話って良いものだなぁと思った次第なので。 海軍というのは基本的に縦社会ですから、上下関係がつきまとい、対等の会話をかわせる友人同士を探すのは結構難しい。 敬語なしに話せる友人は、縦社会の外にしか登場しないというのが実状のようです。 英語だとsirがつくかつかないか程度の差しかないのですが、日本語は敬語が厳格なので、上下関係が結構はっきり出てしまいます。 ジャックとスティーブン以外にこの友人同士の会話パターンを探そうとすると、至誠堂から出版されたダドリ・ポープ描くところのニコラス・ラミジ艦長と、商船船長の友人シドニー・ヨークくらいしかないのではないかと思うのですが、シドニーはレギュラー出演者ではないので出番があまり多くないのが残念です。
2004年09月24日(金)
「ホーンブロワー」第二期発売、あと7日
来週の金曜日、9月24日に「ホーンブロワー」DVDボックス第2期、第2シリーズと第3シリーズの4枚組DVDが発売となります。 ホーンブロワー・サイト「順風満帆」には紹介ページが。 http://www.interq.or.jp/venus/blanca/blue/hornblower/release.html
第2期4本、とくに第2シリーズの2本は、海洋小説を人間ドラマとしてご覧になっている方には、最大級のおすすめです。(思わず強調してしまう) 小説のドラマ化という観点から見れば、これはこれまでに見た最高の作品、申し訳ないけどドラマという点では「M&C」より上だと思います。 「ホーンブロワー」第1シリーズと第3シリーズには私、そこまでの高得点を付けないんですけどね。第2シリーズは別格。
ひとことで言えば、 原作小説に欠けていた詳細なドラマを、見事に補完した脚本と俳優陣に拍手! でしょうか? フォレスターの原作に足りないところを見事に補ったドラマだと思っています。
フォレスターの人物造形は、主人公のホレイショ・ホーンブロワーに特化しているところがあって、周囲の脇キャラの印象がどうしても薄くなるのですが、その部分を脇を固めた俳優さんたちが見事な演技で補っていて、ドラマに原作以上の厚みが出ています。 圧巻はやはりディビット・ワーナー演じる狂気にとりつかれた艦長ソーヤー。 他にも能力以上の重責に苦悩する副長バックランド(ニコラス・ジョーンズ)、どこまでも艦長に忠実な掌砲長ホッブス(フィリップ・グラニスター)、微妙な立場の軍医(ディビット・リントール)の人間味あふれる(というか、こんなこと現代の会社組織でもありそうというか)態度が、原作になかったドラマの面白さを加味してくれます。
ホーンブロワー第2シリーズの原作となった2巻「スペイン要塞を撃滅せよ」は、ミステリと要塞攻撃作戦の2つの側面があるのですが、これをミステリの側面に絞って、軍法会議から過去にさかのぼる形にした脚本も優れものです。 そして、後編の最後で泣かされました。原作には無い思わぬ展開に感動。
第2シリーズはみーはーにも最適でしょう(笑)。素敵な紳士(海尉)方(やっぱりあの格式にイケメンというのはちょっと…)が揃っていらっしゃいますので。 私も最初に見た時は、年甲斐もなくのたうちまわっておりました(あはは恥ずかし。4年前の過去ログが無いのは幸いなるかな)。
DVDではたぶんオリジナルの音声も聴くことができると思うので、もしよかったらオリジナルのブッシュ(ポール・マッガン)の声を聴いてみてくださいまし。 吹替えの郷田ほづみも良いですが、マッガンの声は、一種の悪声だとは思うのですが、森進一的な独特の味があって私は好きです。
第3シリーズのお勧めはやはりジュリア・サワラのマライアでしょう。 今回は私、フォレスターに厳しいですが、これはべつにフォレスターには限らず、海洋小説に限らず歴史冒険小説作家は、女性を描ききれない方が多いような気がします。 むしろパトリック・オブライアンとダドリ・ポープが例外的に女性キャラクターを描き出すのが上手いと言うべきなのかもしれません。
フォレスターの描く原作のマライアは、キャラクター性に乏しいのですが、彼女を演じたジュリア・サワラのキャラクター解釈と、きめの細かい演技は、見事にマライアに血肉を与えています。 見ているとむしろマライアに肩入れしてしまって、「ホレイショったらひどい亭主!」とか思ってしまうのですよね。
これは「シャープ」の時もそうでした。ジェーン・ギボンズというキャラクターは原作では結構「嫌な女」なのですが、彼女を演じたAbigail Cruttendenが上手いので、ジェーンの気持ちがよくわかる、これはシャープにだって悪いところはあるわよね、現代ならさしずめ寂しい妻のカード破産…うんうん、この気持ちわかるわ…などと思ってしまいまして。 このようなところも、ドラマ化の面白さかもしれません。
今までの数々の苦い経験(苦笑)から、「ドラマ化とはドラマを簡略化することであり、小説では丹念に描かれる主人公の心理状態などは映像で表現しきれるものではない」、と思いこんでいた私の価値観を、みごとにひっくり返してくれたのが「ホーンブロワー」のドラマ化だったような気がします。
また、上記の紹介ページに詳しく書かれていますが、9月24日発売の「ホーンブロワー」日本版には、欧米版にもない映像特典が数多く収録されています。 第2シリーズの「Behind the Scene」は欧米版のDVDにはありませんでしたし、キャスト・インタビューの半分以上も初めて見るものだと思います。 ホレイショはあぁいう性格なので、本編ではヨアン、ずっと眉間に皺をよせています。あの衣装のままで笑っているヨアンという珍しいモノ(失礼!)は、特典映像でしか見られないかもしれません(笑)。
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月曜(13日)からNHKBSで放映されている「コナン・ドイルの事件簿」はなかなかの秀作で、楽しみに見ています。 私はあのあたりには詳しくなので、どこまで事実に沿っているのかわかりませんが、ドイルのキャラクターがなかなか魅力的です。 コナン・ドイルというと映画「フェアリーテイル」でピーター・オトゥールが演じた老紳士のイメージですが、ロビン・レイン(学生時代)とチャールズ・エドワーズの演じるこのドラマのドイルと、老人になってからのドイルの間には一本筋が通っていて、あぁこの青年が年齢を重ねるとあの老紳士になるのだな…という時の流れは理解できるような気がします。
エジンバラ大学の医学部を卒業したドイルが開業したのは軍港の町ポーツマスなので、第3話の事件にはクリミア戦争で心の傷を負った元海兵隊員が絡んできたり、海洋ファンとしてはおや?と思うような脇エピソードもあります(あくまでも脇です。期待してはいけません)。
そういえば、自身も心の傷を持つドイルがアヘンチンキのもっと高級なもの(もうちょっと難しい名前の薬)を飲んでいるところを下宿の女主人に見つかって、「お医者さまが何を飲んでいるんですか! 患者より先に自分から毒を飲むお医者さまなんて、初めて見ましたよ!」と怒られるシーン。 …あら、初めてですか? 私、数十年前に同じことしていた別のお医者さんを知ってますが…と思わず笑ってしまいました。 つくづく…戸棚から頭蓋骨が出てきても驚かないグレーブス亭(誰かさんのロンドンでの定宿)の女将ミセス・ブロードは素晴らしい…と思った次第でした。
今度の3連休、旅行に行くかもしれないので(まだ宿がとれていないのでわかりませんが)、その場合は更新は無いかもしれません。 PCトラブル?…は解決をみてませんが、放ったらかしで行ってしまうでしょう。
2004年09月16日(木)
7日夕刊 ダ・ヴィンチ・コードの謎
「ダ・ヴィンチ・コード」というダン・ブラウンのベストセラー・ミステリーがあります。 私は未読なのですが、この本に関する記事が9月7日の朝日新聞夕刊3面に掲載されました。 なんでも…このミステリを読んだかなりの数の読者が、物語の舞台を尋ねてパリやロンドンをうろうろしているのだそうで、「普通は素通りするようなところばかり見るから、すぐに読者だとわかる」(物語の舞台とされたサン・シュルピス教会の神父談)。 いやはや何処のジャンルにも「巡礼」がお好きな方は多いようで。
本は違えど同類の皆様方なので、思わず苦笑してしまうのですが、問題なのはこの朝日新聞の記事の最後の2行。 「(この小説)ロン・ハワード監督、ラッセル・クロウ主演での映画化も決まっている」
「ラッセルの次の次の仕事はもう決まったのですか?」って尋ねられた方があるんですけど、私も思わず「えっ? うそ…」と。 実はM&C続編の件で、3日に一度はラッセル・クロウの情報サイト見に行ってるんですけど、「ダ・ヴィンチ・コード」が決まったという話しは私まだ読んでいない…読み落としはしていない…筈だけど。
海外の先取り映画情報サイトもいくつか検索して見たのですが、今のところ「キャストが決まった」というサイトには当たりません。 朝日新聞のニュースソースは何処なのでしょう? このサイトによれば、ラッセルのキャスティングは噂のレベルのようですが…。 それにしてもこの噂は豪華ですね、他にはトム・ハンクスとジョージ・クルーニーとヒュー・ジャックマンですって。さすがベストセラー。
実はアメリカの「ダ・ヴィンチ」ファンサイトのBBSも読んで来たのですが、まだ誰がいい、あの人はダメとか侃々諤々中でして、この様子だとまだ…キャスティングは決まってないのではないかと。 ちなみに…そのBBSではクロウよりはクルーニーの方がファンには支持されていたようです。 「何処にも名前が出ていないが、私は絶対に主人公はショーン・ビーンだと思う。強く彼を推薦する!」という書き込みもあって、思わず笑ってしまいました。
ロン・ハワードが監督というのは確定のようです。 クロウ(ビューティフル・マインド&シンデレラ・マン)とハンクス(アポロ13)の名前はこの関係から噂になっているようですが。
ロン・ハワード監督、ラッセル・クロウ主演の「シンデレラ・マン」はどうやら撮影が終わったようです。 ラッセルの次の仕事はオーストラリアの短編映画「Eucalyptus」が決まっていて、その次はまだ未定…の筈だと思うんですけど。 彼は既にオーストラリアに帰ってしまったようなので、しばらくはマスコミの前には出てこないかもしれません。 これはどっちかというと、先日から「ウィンブルドン」のプロモーションに駆け回っているポール・ベタニーの発言をチェックしていた方が良いのでしょうか? こちらの次の仕事は「The Wrong Element」(ハリソン・フォードと共演)が確定のようですが。
そうそう、先日の記事でご紹介した「特殊効果撮影がウィンブルドン・プレーヤーらしく見せてくれる」というポールの発言のからくりは、打ち返したボールはCGに入れ替える…ということのようです(下記参照)。 映画「ウィンブルドン」で観客のエキストラを演じたライターの記事↓ Match-fit and ready for 'action' ただ座って応援しているだけのエキストラも、結構たいへんですね。
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「M&C」には関係ありませんが、来週のNHKBSの海外ドラマはなかなか面白そうです。
9月13日(月)〜17日(金)20:00〜21:57(曜日によっては21:29) 「コナン・ドイルの事件簿」 ホームズの作者コナン・ドイルの若き医学生時代の物語とのことですが…。
9月18日(土)19:30〜21:10 シャーロック・ホームズ「バスカヴィルの魔犬」 ホーンブロワーのダゥティことロン・クック(最近では「サンダーバード」のパーカーと言った方が通りがいいでしょうか?)が、またまた執事バリモアを演じるのでございます。
このドラマ、キャストが豪華です。ホームズがリチャード・ロクスバラ(ヴァン・ヘルシングのドラキュラ様)、ワトソンがイアン・ハート(ハリポタ1のクィレル先生)、ヘンリー・バスカヴィルがマット・デイ(「シャクルトン」の写真家ハーレイ)、紅はこべ様ことリチャード・E・グラントの名前もあります。
この勢いに乗って、放映終了と同時に「ジェームズ・ダーシーのホームズ放映希望!」メールをNHKに送ってみたら、願いを叶えていただけるでしょうか?
PCの不調は、モデムの通信速度では? とプロバイダーからの返答。 「少しずつ通信速度を変えて調整してみてください」だそうです。 うわ〜、前途多難。
2004年09月10日(金)
港から出られません(PCトラブルのお詫び)
PCトラブルは予想以上に長引いていまして、予定していた「ガラパゴス案内」(The Times紙)のご紹介はかなり先になりそうです。
今回コケてしまったのは、昨年買ったばかりのWin XPのノートPC。 Win98のデスクトップは5年使い込んでいるのに風邪ひとつひjかず(?)元気だというのに、モバイルに使っているノートが先にトラブルとは。
金曜時点ではバックアップのリストアで何とかなるかと思っていたのですが、結局フォーマットして工場出荷時の設定に戻すことに。完全記憶喪失どころか0才児状態です。
昨今の物騒な世の中、無垢な赤子がそのままネットの大海に出ることは出来ず、Windows updateというパッチを当てなければならないのですが、このダウンロード中に何故かまた、接続が切れてしまう。 そもそも今回のトラブルの発端は、ノートン・アンチウィルスのパターンファイルダウンロード中に突然PCがシャットダウンしてしまったことだったんだけど。 工場出荷時設定のWindowsでこれが起こるということは、OSのせいではないのかしら? いまプロバイダーに問い合わせをしています。
海洋小説系のネットでは、PCにソフトをインストールすることを「艤装する」と言うのですが、現状は艤装どころかまだ乾ドックからも出られない状態。週日はPCの面倒を見ている時間もないと思うので、続きはまた来週でしょうか? 実は翻訳だけしておいて、まだネットに上げてなかったファイルが消えてしまった…ことに結構がっくり来ていたします。 もういちど、ほんやくしなきゃいけないのね…、とほほのほ。でも一からではなくてとりあえず単語ひいてあるだけまだましか。
とりあえずタイムリーな小ネタやニュースなどは、おんぼろWin98などを使って更新できると思いますが、しばらく不自由が続く見込みですのでよろしくお願いいたします。
2004年09月05日(日)
浅間山噴火で、9月5日に「L.A.コンフィデンシャル」放映
本日の朝日新聞朝刊によりますと、テレビ朝日は先日の浅間山噴火に配慮し、9月5日21:00〜放映予定だった日曜洋画劇場「ボルケーノ」の放映を中止、9月12日予定だった「L.A.コンフィデンシャル」を1週間前倒して放映する…とのこと。
ご存じの方が多いと思いますが、これもラッセル・クロウの代表作の一つ。 おすすめです。 ラッセル演じるバドは、彼とは対照的な性格のエド・エクスリー(ガイ・ピアース)との、言葉では全くコミュニケーション出来ていないようだが(笑)でもハートは通じていたんですね…な関係が面白いのですが、3人のLA市警の刑事さんの中で誰が一番好き?と尋ねられれば、私の答えはケヴィン・スペイシーが演じたジャック・ヴィンセンスだったりします。 ひと昔前の、旧き良きアメリカの雰囲気が良く出ているのも魅力です。
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実は先週末にノートPCが、ノートン・アンチウィルス・ファイル受信中に突然落ちて、立ち上がらなくなりました。 どうやってもダメだったので、やむをえず最終バックアップ状態に設定を戻して何とか立ち上げたのですが、当然のことながら、PCが約1年分の記憶喪失になりまして…。 週中にはこの事態に立ち向かう気力も時間もなかったので、今度の週末にあちこちから記憶のかけら(フラッシュメモリーや外付けハードやフロッピィに残っているデータのこと)をかき集めようと思っています…が、以前にいただいたメールのかなりの部分が復元できないかもしれません。ご迷惑をおかけしますが、なにとぞご了承ください。
今週メールをいただいた方へ>そんなわけでまだサーバーからダウンロード出来ておりません。 メールソフトを設定して、Windowsのアップデートが終了してからお返事さしあげることになりますので、今しばらくお待ちください。
2004年09月03日(金)
医者の不養生?――「ウィンブルドン」記者会見
ポール・ベタニーの次の主演作品「ウィンブルドン」が欧米で8月末から順次公開となり、関係記事が新聞などに載り始めました。
その中であら?っと思ったのが、デイリー・テレグラフ紙のこの記事。
8月30日にロサンゼルス・ビバリーヒルズのフォーシーズンス・ホテルで記者会見を開いたポールはインフルエンザでよれよれでした。ホテルへ往診を呼び、薬をもらってから臨んだ席で、 「僕はたいへん具合が悪いので、マスメディアの世界を内から崩してやろうと思っているんだ」 と、咳をしながらもジョークを一発。「僕は(ぼーっとしていて)、なんだか別人の頭が乗ってるような気分だから、あなた方が後で気分が悪くなっても、僕を許してくれよ」
久しぶりに聞くと嬉しいですねぇ、彼の毒舌。 M&C関係のインタビュー記事があちこちの紙面を飾っていた去年の秋、ファンサイトに紹介されたある記事に「この記事には新しい情報は何ひとつ載っていないが、ポールの言うことはいつも面白い」とコメントされてました。 そういう人よね、ポールって。
ところで、この会見で思わぬことがもう一つわかりました。 ポールは、ちょうど同時期にロサンゼルスに来ていたラッセル・クロウと会う約束をしていたらしいのですが、彼が殆ど出ない声で「僕はすごく具合が悪いんだけど、それでもかまわなかったら来てみないか?」って言ったら、ラッセルは来なかった…のだそうで。「彼のところには赤ん坊がいるから、そんな危険は冒せなかったんだろう」
あらら、この二人って、忙しい互いのスケジュールを連絡しあってランデブーするほど仲が良かったんですか? 確かに去年の記者会見では息がぴったり合って、掛け合い漫才まがいの間合いではありましたけれど。撮影中はポール、日曜ごとにチームワークを奨励するラッセルを置いて、ロサンゼルスのジェニファー・コネリーのところに通ってたんじゃなかったでしたっけ?
まぁFOX社がM&C続編を検討しているというこの時期ですから、ちょっとでも会って話しでもしてくれたらプラスに働いていたかも…などど、ファンとしては考えてしまうのですが。
でもラッセルはどうしてロサンゼルスにいるのだろう? 次回作「シンデレラ・マン」(カナダ・トロントで撮影中)はクランクアップしたのかしら?
しかし子供に風邪を伝染してはいけないからと出てこないところが、ラッセルはお父さんですね。 これがジャックだったら、ほいほい出て来ちゃうでしょうけどね。それでもってアシュグローブ荘に風邪を持ち帰り、小さいセシリアと双子が時間差攻撃で熱を出して、ウィリアムズ夫人は「おぉいやだ嫌だ、私に伝染って肺炎にでもなったら大変じゃないか。まったく老人に対する労りの無い婿だね」…とかなんとかブツブツ言って、子供の看病と親の嫌みでソフィーは大変お気の毒。 …違いますね。
それにしてもポールがドクターを往診に呼ぶというのは苦笑ものかも。 でも彼も、自分の子供達のことはちゃんと考えているようです。 「ウィンブルドン」のプレミアは、9月1日がオーストラリアで、その後がロンドンのようですが、オーストラリア〜ロンドンは23時間フライトになるので、彼は奥さんのジェニファーと子供たちについては、アメリカからロンドンに直行させたとのこと。
ところでその映画「ウィンブルドン」ですが、ベタニー演じるピーター・コルトは、落ち目のイギリス人テニスプレーヤー、ワイルドカードでウィンブルドン出場を果たし、そこでキルスティン・ダンスト演じるアメリカ期待の新星リジー・ブラッドベリーに出会う…これはラブコメディだそうです。
監督のRichard Loncraineにとって一番の問題は、ベタニーとダンストが全くのテニス音痴(hopeless tennis player)だったこと。 そこで1987年のウィンブルドン・チャンピオン、オーストラリア人のパット・キャッシュが呼ばれ、数ヶ月二人に付ききりでコーチをした結果、二人はなんとか様になり(respectable tennis player)、さらに特殊効果撮影が残りの仕事をしてくれた結果、最終的にはウィンブルドン・プレーヤーらしく見えるようになった…のだそうで。 …この表現は新聞記者の地の文をそのまま引いているのですが、ポールの毒舌から起こしているに違いない。
ところでこれは別情報からなのですが、この映画のどこかに、「ホーンブロワー」のペリュー艦長ことロバート・リンゼイが、カメオ出演している…とのこと。 ニコラス・コスター・ワルドウもクレジットされてますね。「ブラックホーク・ダウン」の物静かなデルタや、「エニグマ」のポーランド人暗号解読者などが印象的な俳優さんです。 それから、LOTRでセオデン王を演じていたバーナード・ヒル…はエドワード・コルト役ですから、ひょっとしてベタニーの父親か…ともかく身内の役になるのでしょう。
日本での公開がどうなるのか、まだよくわからないのですが、ぜひ見てみたい映画になってきました。
2004年09月02日(木)
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