umityanの日記
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2010年02月28日(日) 僕たちの旅(11)

 僕たちの二日目の旅が始まった。一日目はさんざんの出来。今日がまさに本命の旅だ。おごそかにバスに乗り込んだ。いつものとおり、僕たち五人は後部座席へ。おばん諸氏は前の席へ。途中、五つ星のホテルへ泊まった二人ずれの若い女性(かなりかわいい)を迎え入れ、全員が揃った。さああーーー出発だ。

まずは、バッチャン村という当国で最大という陶器のふるさとへ向かう。バッチャン村という名前がついている。「この名前は絶対、忘れることはないなあーー」とジャイアンは思った。なんとなれば我が故郷では、じいちゃん、ばあちゃんのことを、「じっちゃん、ばっちゃん」と呼んでいたからだ。さぞかし、「ばっちゃん」の多い村なのかなーー?と、変に勘ぐってしまった。

バスの中から、昼間の風景を観察した。さすが、農業国である。なんでも、一年に三回も米を作るのだそうだ。こういうのを何と言うんだったっけ?。三毛作か?。小さな町を過ぎると田んぼが一面に広がり、また町を過ぎると田んぼだ。その田んぼでは、忍者もどきの先のとがった竹編み帽子をかぶり、もんぺ姿のような服をまとった農夫達が黙々と田の手入れをしている。聞けば、働いているのは、皆、女性ばかりとのこと。男達は町へ出稼ぎに出ているため、そういうことらしい。しかも、農業機械はほとんど、見当たらない。手作業ばかりである。

僕、ジャイアンは、この光景を眺めたとき、数十年前の日本の田園風景を思い出した。日本も昔はそうだったんだ。学生時代、アルバイトをしたからわかる。きつくつらい作業だが、愛情を込めた田畑は、作物がすくすくと育ち、たわわな収穫を約束してくれる。手作業での実りだからこそ、喜びもひとしおだ。こんな風景を眺めていると心が落ち着く。のどかで平和だった昔があざやかによみがえる。恐らく、皆もそう思っているのだろう。黙って風景を眺めている者もいれば、腕組みして、鼻提灯を膨らませている者もいる。脳裏には、あぜみちで食らった、饅頭のことでも思い浮かべているのだろう。これ誰のこと?。もちろん、ドラえもん君のことである。

道すがらの風景で、もう一つ興味深いものがあった。建物である。実にカラフルで横幅は狭いが、二階建て三階建てが多々ある。恐らくチャイナや、タイやフランスの影響を受けているのだろう。僕たちは飽きることなく、風景に見とれた。この国では地震はないが、台風はたびたび、やってくるとのこと。細長い建物が多いので大丈夫かな?と思ったが、ほとんどの建物がレンガやモルタルで作られているようで、木造よりは強度ありと言うべきか?。

1時間くらいで、目的地へ到着した。広場の一角にバスは停車した。すでに、ホテルを先に立ったバスが停車していた。タイムラグはあれど、行き着くところは皆一緒か?と、思わず苦笑だ。周りを見回すと、右も左も前も後ろも陶器店ばかり。どこまで族くのかこの村は?、いや、この町はといった方が正しいか?。店もいろいろあるようで、やはり1000度以上の高温で焼いた陶器をおいている店が高級らしい。ネズミ男君が懇ろに解説してくれた。現地案内人も、それを知ってか、高級な店を紹介したようだ。

店の門をくぐった。所狭しと、大小の陶器が置いてある。皆、三々五々と好きなコーナーへ散って行った。僕は、骨董品に興味があったので、もっぱらそのコーナーを見て回った。値段表示はドルである。一人の若い女性店員さんが近寄ってきた。「何が欲しいか?」と、身振り手振り、片言英語で聞いてきた。僕は、「オーノー」といいながら見て回り、商品を手に持っと、先ほどの女性が、「これ何ドルよ、まけるわよ」という。僕が思いきって、半額以下に値切ると、「にこっ」と笑い、首を横に振る。「ねえーー、お願い」とおねだりしても、半額以下は無理のようだ。商談は不成立だ。小さな物で、荷物にならないなら買っても良いと思ったが、帯に短し、たすきに長しだ。

「持って帰れそうな物はないなあーーー」と、そのコーナーを離れようとしたとき、ふと目に入った物があった。なななんんと、それは「杖」だ。陶器製の大きな握り口があり、黒檀か紫檀で頑丈に出来ているようだ。三段階に切り離しが出来るので、荷物にはならない。何を思ったか、それが欲しくなった。40ドルの値段表示がしてあった。僕は、「お願いーーーーっ、20ドルにして」と懇願すると、先ほどの店員さんが「駄目、30ドル」という。僕はあきらめて、出ようとすると、僕の肩をポンポンとたたき、「いい、それでオッケー」と言う。商談成立だ。正直20ドルでも高いと思ったが、外国で買ったことに意義がある。1ドル札20枚で支払うと、「あなた、お金もちね」と言う。「と、とんでもない。大きな 誤解です」と言ってやりたかったが、その場は、そのまま切り上げだ。

バスに戻ると、メンバーはほとんど、買い物をしていないようだった。結構、高いと思ったのか、荷物になると思ったのだろう。バスの中で、のび太君が「さっき買ったやつを見せて」というので、袋から出して見せると、「いいんじゃないの」と、複雑な笑みを浮かべながら言う。「この買い物は失敗だったか?」と、その時思ったが、意外や意外、日本に帰ってからこの杖が大いに役立ったのだ。

後日談になるが、日本に帰って、数十日たった頃、二年前になくなったボス(仕事上の大先輩)の奥さんが、股関節の手術で入院するとのこと。僕は即、「この杖が役に立つ」とプレゼントした。だが、しかし、バット、見舞いに行ったとき、この杖が見当たらず、もっと、こじんまりした細い杖をしていた。「あの杖はどうしたのですか?」と、今更、聞くわけにも行かない。恐らく、病院の中を、突いて歩くには大きすぎたのだろう。どろころ、仙人が歩いていると間違えられてしまう。気を利かした奥方の娘が、小さい杖と取り替えて持ち帰ったのだろう。「返してください」とも言えないが、まああ一時的にせよ、役に立ったと思えば、僕の気持ちも救われるというもの。

さてさて、僕たちはバスに揺られて、もう一件の店へ立ち寄ることになる。


2010年02月23日(火) 僕たちの旅(10)

トイレ騒動、いびき騒動はあったが、僕たちの一日目の旅が終わった。長い一日だった。ジャイアンの目覚めは爽快。ネズミ男君は不機嫌そのもの。貴公子のび太君は、さすがに冷静沈着。意に介せずといったところか。それぞれに洗面をすまし、朝食をとることになった。二階に設けられたバイキングルームへ行くと、既にドラえもん君と長老、夜泣き爺さんは席について、我々の登場を待っていたようだ。

開口一番、ドラえもん君が聞いてきた。「昨夜はどだった?」と。すかさず、ネズミ男君が、「もう、ジャイアンのいびきがうるさくて、寝られりゃしない。ぐぁおー、むにゃむにゃー、ぐぁおームニャムニャ。たまらんでー。ほとんど寝とりまっせん」と言う。皆大笑いだ、僕、ジャイアンは、長老、夜泣き爺さんの方を見ながら、「ドラちゃんも、相当のいびきじゃなかったの?」と聞くと、さすが、長老。我が子をかばうがごとく「にこっ」と笑みを見せ、無言で返した。皆、そく察した。「やはり、そうだったんだ」と。まあ、いいじゃないの。

周囲を見回すと、我々以外に見知らぬ日本人客が結構いた。なるほど、ツアーとはこういうものか?。当ホテルは違ったツアー客のねぐらでもあるわけだ。当然と言えば当然か?。既知のおばん諸氏はとっくに食事を済ませたとみえる。早起きは三文の得とばかり、恐らく先陣を切ったのだろう。

僕たちは壁際に配膳されている料理の数々を、めいめい皿に盛り、慣れないフォークとナイフでついばんだ。バイキングの朝食は、特に変わった物はなかった。というより、定番以外のものに、あまり食指が動かったせいもあり、そう感じたのだろう。それでも、数回席を立ち、おかわりをした。食欲だけは皆、旺盛だ。今日も健康、食事がうまい。旅はこれからだ。

美しいアオザイを来た若い女性が、残り少なくなっている料理の補給のため、行ったり来たりしていた。なんでも、ネズミ男君が彼女と肩がちょっとぶつかったそうだ。謝りをいれたが、相手は無表情で、無視されたとのこと。「愛想が悪いぜ」と、ぶつぶつ言っていたが、「さもありなん。風前の灯火とも言うべき、ネズミ男君の頭髪を見て、相手が恐怖心を覚えたっさ」と、僕たちは大笑いだ。だが、確かに、愛想が今ひとつだったことは否めない。あえて、彼女を弁護すれば、いちいち愛想を振りまいていては、仕事にならない。皆、早くこの労働をてきぱきと終えて安心したいと思うのは働く者の常というものだ。

朝食も終わった。出かける準備をしてロビーで待機した。二日目の空もどんよりとした曇り空。思っていた以上に暑い。これじゃあ、汗だくだくだぜということで、薄着のシャツに着替えたので幸いだ。別の日本人ツアー客のバスが先に到着した。僕たちは手を振ってバスを見送った。この不思議な親近感。異国の地だからこそ、同類を親しく思うのだろう。我々の旅は今日がメインだ。皆、おごそかな気持ちで迎えのバスに乗り込んだ。いよいよ出発だ。どこだったっけ?。そうそう、じいさん、ばあさんがいる村を連想させる、「バッチャン村」が最初だったっけ。


2010年02月22日(月) 僕たちの旅(9)

「パパパンパン」のマッサージから帰った後、部屋で、もう一騒動あったことを書いておかねばなるまい。あまり愉快な話ではないので、捨象しようかと思ったが、一応、記することにしよう。旅に出ると、こんな失敗もあるわけだ。

のび太君、ネズミ男君、ジャイアンの三人は、焼酎をあおりながら、談笑していた。当然、ある時間が来ると、大なり小なりを催してくるのは自然の摂理。このジャイアン、旅だって初めて、大のトライだ。「記念すべき一投をこの大地にささげん」と、いきり立って洗面所へたった。

ホテルの造作は、どこも似たり寄ったりで、浴槽があり、トイレがあり、洗面所がある。ここも一つを除いて例外ではなかった。いや、例外は二つと言うべきか?。その一つの例外とは、なんと、トイレらしき物が二つあるのだ。一つは、日常的なふた付きの水洗トイレ。もう一つはふたなしで、穴の開いた突起がある大きな器。両方とも乳白色の楕円形。材質は陶器製だろう。

のび太君曰く。「ここは洗濯用の器がトイレ器のとなりにあるよ」と。最初、これを見たとき、僕も「そうかな」と思った。あるいは一つは大用、もう一つは小用かとも思った。ところがさにあらず。ネズミ男君に言わせると、「これは40年前の一番最初に出た尻洗い器だ。おいらはこれで、大失態をした。蛇口をひねると、水が勢いよく飛び出し、腸まで水が入り込んだぜ。それにホールをきちんとあてがわないと、尻の周りが水浸しさ」と。「パンツが何枚あっても足りないぜ」と、僕たちは大笑いだ。それにしても、昔取った杵柄か?。ネズミ男君は博識だぜ。

ところで、僕は記念すべき一投を水で洗い流し、いざ、ペーパーへ手を伸ばそうとすると、パーパーの芯だけしかない。「えええつ、まさか?。きっと在庫があるはずだ」と周囲を眺め回したが、見当たらない。これが第二の例外だ。普通なら、予備が数個おいてあるはずだ。「うんん如何せん。生憎、ハンカチは手元にない。タオルを使うか?、それはあんまりだ。このまま隣の突起にホールをあてがおうか」と、いろいろ思案すること数十分。情けない話だ。

男ばかりの部屋。ここに至っては羞恥心もへったくれもないだろう。結局、僕、ジャイアンは洗面所の中から、ネズミ男君に洗面所へきてくれと懇願し、フロントへ持参するよう依頼した。それがなかなか持ってこないのだ。話は通じているんだろうか?。もう、30分は缶詰だ。僕は「まだーーーーつ」と叫んだ。これじゃあ、らちがあかないと、ネズミ男君が別室のドラえもん君の部屋からペーパーを借りてきてくれた。それでなんとか事なきを得た。

「えええい、物の試しだ」とネズミ男君は、尻洗い器の蛇口をひねった。な、な、なんと、水は勢いよく直線を描いて飛び出し、天井まで届くではないか。天井から水しずくがぼたぼた。床はびちゃびちゃだ。なんでも、翌朝聞いたところによると、階下の部屋で水漏れがしたそうな。嘘か誠か、皆大笑いだ。

事なきを得たは良かったが、これを聞いた長老、夜泣き爺さんは、自らの失敗談を語ってくれた。長老も昔、例の尻洗い器を使ったことがあったそうだ。座り方を間違え、「おやっ」と思って、のぞき込んだら顔面を水が直撃。めがねが吹き飛んだらしい。いやはや傑作もいいところだ。きれいな水なら顔を洗ったですまされるが、どんな水だったのか知る由もない。

こんなハプニングは二度とごめんだと思えど、そこがまた旅のおもしろさでもある。






2010年02月21日(日) 僕たちの旅(8)

「鉄は熱いうちに打て」という。僕の記憶も時の経過と共に薄れていく。と言うことは、先を急がねばなるまい。ホテルへ戻った。まだレストランでの、はちゃめちゃな行動の余韻が残っている。頭が混乱し、「どーーつ」と疲れも出てきた。「よしーー、マッサージにでも行くか?」とジャイアンが提案すると、のびた君とネズミ男君が「はい」と手を上げた。リーダーのドラえもん君と夜泣き爺さんは疲れていたと見えて、そく、部屋へ戻ったよし。まずは長老の介護が先決と言うことだろう。

ホテルのフロントマンに、店を紹介してもらった。値段を聞くと意外と高い。ぼられている可能性もある。ここで、のび太君が「一、抜うーーーけた」と降板した。さすが貴公子、のび太君。君子危うきに近寄らずか?。不本意ではあったが、ネズミ男君とジャイアンの二人が行くことになった。タクシーに揺られて、ほぼ5分。とある店の前で車は止まった。

僕たちは、やや不安だったが、背に腹はかえられない。導かれるまま、階段をを「トントン」と上り、二階の部屋へ案内された。長方形の部屋にマッサージベッドが10個近く並んでいた。ベッドとベッドの境に、ついたてが施してあった。二人の女性揉み手が待機していた。一人はふくよかな女性。もう一人は小柄でスリムな女性だった。ネズミ男君が「ふくよか」、ジャイアンが「スリム」に当たった。

彼女らが、ジェスチャーで服を脱ぐよう促す。僕たちはロッカーへ一枚、一枚と、おそるおそる脱いでいった。最後の一枚になったとき、何を勘違いしたか、ネズミ男君はカラフルなパンツを脱ごうとした。「オーノー」と言って、ふくよか女性が、パンツを押さえてそれを制した。ジャイアン大いに笑う。

僕たちは隣同士のベッドにうつぶせに寝かされ、香の強いオイルを「べたべた」と背中と足に塗られた。その後が傑作だ。「ぺったん、ぺったん」と、まるで、お餅をつくがごとく、小気味よい音がし始めた。壺を押さえて、凝りをもみほぐす手の動きはない。ほとんどたたいている。こちらが、「パパパンパン、パパパンパン」とやり出すと、隣からも「パパパンパン、パパパンパン、パパパンパン」と同じ音が。あたかも、暗黙の了解で、二人して音楽を奏でているような。これが手なのかもしれない。僕たちはまるで、魔法にかかったかのように睡魔に襲われた。何時がたったのだろう。やけに大きな「パン、パン」という音が聞こえた。「痛いっ」と思い、目を覚ますと、「はい、おしまい」とのこと。ネズミ男君とほぼ同時に終了した。これは夢か幻か?と、僕たちは、空ろ眼で着替た。外へ出るとタクシーが待っていた。

僕たちは無言のまま、ホテルへ帰還。部屋ではのび太くんが、免税店で購入していた焼酎を、「ちびり、ちびり」とやっていた。開口一番、「どうやった?」と聞く。とても話せる代物ではない。僕たちは「よかったよ」と言って、口を濁し焼酎につきあった。よもや話で場を繕い、小一時間ほどで、ベッドインタイムとなった。「パパパン、マッサージ」の奇妙な印象がまだ頭にこびりついている。僕、ジャイアンはいつの間にか眠りに落ちたようだ。

朝は結構早く目が覚めた。のび太君はまだ就寝中。その隣を見ると、ネズミ男君がベッドの上に座っていた。「どうしたの?」と聞くと、ジャイアンのいびきがうるさくて、眠れなかったとのこと。なんでも、ジャイアンのいびきは「グオーー、グオー、むにゃむにゃ、、ムニャムニャ」、しばらく音がやんで、また、「グオーー、グオー、むにゃむにゃ」と、訳のわからぬ事をつぶやいていたらしい。「パパパン」というマッサージの音がたたったのか?。定かではない。記憶にござんせん。ネズミ男君には気の毒なことをしたと、ひたすら謝れど、時、すでに遅しだ。だが、しかし、バット、翌日の夜に、ネズミ男君から、手痛い仕返しを受けるとは、このとき夢にも思わじ。

貴公子、のび太君は「知らぬ、存ぜず」で、一切無表情、無頓着だ。思うに、別室の、夜泣き爺さんも、一晩中、ドラえもん君のいびきに悩まされ、泣き続けていたに違いない。長老はそのことを一言も言わなかったが・・・・。




2010年02月20日(土) 僕たちの旅(7)

我ら5人の部屋割りは、ドラえもん君と夜泣き爺さんの二人組と、のび太君、ネズミ男君、ジャイアンの三人組に別れた。ペンタゴンのような五角形の変わった形をしたエレベーターに乗り込んだ。3階で降りると、すぐそこに部屋があった。慣れない手つきでドアをオープン。シングルのベッドが三つ、「いらっしゃいませ」と、たたずんでいた。さすがに、ベッドとベッドの間隔が狭い。とりあえず、のび太君が真ん中、ネズミ男君が右端。ジャイアンは左端に陣取った。生ぬるい空気が頬に触れる。布団も妙に「じとーーーっ」としている。どうも快適とは思えない。まあ、仕方なかっぺ。何はさておき、先に眠りに就いた方が勝ちだ。怖いのはいびきだけ。

まずは腹ごしらえ。荷物を置き、騎フロアーに降りた。我々と随行するらしいメンバーのおばん達が、たむろしていた。「さあーー行くべーーー」と、ネズミ男君が号令をかけ、一同は、不安な面持ちで後に従った。レストランはホテルから10数メートルの近い場所にあった。ドアを開けると、ずーっと奥まった所まで、テーブルが配置されていた。結構広い。客もかなり入っている。現地の人が多いようだ。僕たちはおばん二人を加えた7人掛けのテーブルに、残りの7〜8名は、はす向かいの別のテーブルに陣取った。

さああ、注文だぜ。若い男の店員さんがメニュー表を持ってきた。何と書いてあるのか読めない。通訳の人を連れてくれば良かったと後悔だ。まずはビールで乾杯と言うことになった。いよいよ、ジャイアンの出番だ。心は高鳴る。
僕は、店員さんに、「セブンメンバーズ、ビア、オッケー」と切り出した。通じない。「do you understand beer? ok? 」。「オー、ビアね」と店員さんは言い、指を1本立てた。「オー ノー、セブンメンバーズ、セブンビア」と、と僕が言うと、またまた通じない。たまりかねたのび太君が「セブンメンバーズと言わなくていいんだよ」と言って、指を7本立てた。どうやら通じたらしく、小瓶サイズのビールが7本とグラスが運ばれてきた。ジャイアンの面子は丸つぶれ・・・・、悲しいぜ。

なかなか旨いビールだ。その後、数本追加注文した。おばんたちも、今宵こそはと「ぐいぐい」やっている。「さて、料理を頼もうや」とドラえもん君が言う。ごもっとも。しかりだ。すっかり自信をなくしたジャイアンは、むっつり、だんまり。もっぱら、のび太君とネズミ男君が、絵柄の入ったメニューを指さし、「これ、これね。これ3つ、これ4つね」と日本語で。通じない。ドラえもん君は腕組みしながら天井を仰いでいる。夜泣き爺さんは不安そうに事の成り行きを観察している。

そこでまた、だんまり、むっつりだったジャイアンが横やりを入れた。「ディス、スリ−、ディス、フォー 、オッケー?」。店員さんは指の数をみて、何を思ったか、変なことを言い始めた。要するに、量がすくないと言っているのだろう。たまりかねた僕たちは、「オール、セブン。オッケー?」と、指を混ぜて言ったところ、首を縦に振り、どうやら納得したらしく、引き上げていった。いやはや、料理の注文にこれほど神経を使うとは「初めての経験。もうこりごり」ってやつだ。

程なくして、料理が運ばれてきた。よく見ると、小皿に春巻きみたいなものが三個ずつ入っている。それと何かミートボールのようなものガ皿に盛られていた。「これじゃあ、あばかんでーーー。腹の足しにもならない」と、ジャイアンはすぐ近くに陣取っていた、おばん達のテーブルを眺めた。うまそうな焼きめしが大皿に盛ってあった。「これだあーーーーーーっ」と、ジャイアンは大皿を指さし、店員さんに告げた。相手は了解して、「にっこり」とほほえんだが、「面倒をかける客だぜ」と思ったに違いない。

焼きめしらしきものがくる頃には、すっかりビールを平らげていた。何を思ったか、リーダー、ドラえもん君は席を立ち、ぶらっと、店内を散策に行ったようだ。帰ってくるなり、「おい、おい、あちらではワインを飲んでるぜ」と言う。「そうなの、じゃあああーー俺たちもそうすっか」と話がまとまった。とりあえず、ワイン1本を注文すると、赤のアオザイをまとった美しい女性がワイングラスとボトルを運んできた。白魚のような細い手で、一人一人に注いで回った。僕たちは涼しそうに目を細めて、その手を見守った。改めてワインで乾杯だ。お腹は「今やおそし」と、焼きめしの登場を待っている。

アオザイを着た女性は、その後、テーブル横の柱に身をもたげ、こちらの様子をうかがっている。おそらくワインの追加注文を待っているのだろう。気の多いジャイアンは視線を彼女の目に注いだ。火花が「ばちっ」と交錯し、彼女は「にこっ」とほほえむ。ジャイアンは「ぽーーーつ」と顔を赤らめる。まだまだおいらも純情だぜ。結局、ワインを追加注文し、彼女は、のび太君とのツーショットのカメラに収まった。もちろん写し手は、僕こと、ジャイアンである。その後、何度も彼女と視線を交わし、ほほえみのオンパレードだ。「まさか、彼女はこの僕、ジャイアンに気があるのでは?」と早合点する始末。単細胞の思い込みは困ったものだぜ。結論は、「さらなる追加注文を彼女は期待していた」と言うべきだろう。

僕たちはワインでほろ酔い気分。「さああ、会計だ」ということになり、ハウ・マッチ・マニー?、カリキュレート? お足は?、レシート?、いくら?なんぼ?」と、知っている限りの言葉を並べた。これだけ並べりゃあー、ピンとくるだろう。店員さんは首を縦に振り、なにやら紙切れを持ってきた。見てびっくりとはこのことだ。500万ドン。えええっと、0を二つとって、0.5を掛ける。日本円で2万5千円だ。「わおーーーーーつ、ぼられているぜ」と、のび太君いわく。すかさず、ジャイアンは両手で×を組み、500万ドンの計算書の0を一つ指で押さえ、50万ドンを提示した。要するに日本円で2千5百円だ。恐らく、妥当な線だろう。店員さんは改めて計算書を持ち帰り、50万ドンに訂正してきた。僕らは、おばん二人分をおごりと言うことで、一人あたり10万ドン(500円)を払った。

ドンの円換算方法を知っていて助かった。知らねば、偉いことになっていたわけだ。やはり、旅立つときには行き先の情報をいくばくかは頭に入れておくべきと改めて痛感。事なきを得、無事にホテルへ戻った。道路では相変わらずミニバイクが激しく往来していた。やはりここは異国なのだ。


2010年02月18日(木) 僕たちの旅(6)

当エアポートロビーは、そんなに広くはない。客もごった返してはいない。これなら迷子になる心配はなさそうだ。とりあえず、現地の通貨に幾ばくかを両替した。僕の頭ではすでに計算ができていた、えええっつと、現地の通貨のゼロ、二つをとって、0.5をかけると、日本の円になると。ネズミ男君はどうも、この辺の計算が疎いようだ。

皆揃ったところで、現地案内人がマイクロバスの待機場所まで引率することになった。おじん、おばんの23名はあたかも、幼稚園生のごとく、きょろきょろしながら、つかず離れずで後ろに従った。空はどんよりと曇り、絶好調の旅日よりではないが、異国の大地を踏みしめているんだという妙な感覚が全身に広がった。

ちょっとした広場の奥まったところにバスが待機していた。これからホテルまで案内すると言う。時刻はとっくに7時を回っていた。おっと、これは日本時間だ。現地の時間ではまだ5時ということになるか。おばん諸氏は、ことごとく、前の席を占領。僕たち5人は一番後部座席へ陣取った。よく見ると、中間の座席が空いている。まあ、こういう陣取りはよくあるパターンだ。案内人は、流暢とまでは行かないが、日本語を上手にあやつった。僕たちは耳半分で聞き、目は車窓を伺っていた。のび太君とネズミ男君は、いかにも高級そうな一眼レフのカメラで競うように車外の風景等を撮り出した。ジャイアンも負けじと安物のデジカメで・・・・。さすが、長老の夜泣き爺さんと、リーダーのドラえもん君は、この様子をクールな目で眺めているようだった。

とりもなおさず、圧巻だったことは、ミニモーターバイクが縦横無尽に前方から走ってくる。と言うより、突っ込んでくると言った方が正しいか?。乗り手を見ると老若男女。背筋を「ピン」と伸ばし、口には色とりどりのマスクをつけ、ヘルメットをかぶっている。僕たちは「ええええーーつ、おーーーーつ、わーーーーつ」と奇声ををあげながら、この光景を眺めていた。「暴走」という言葉はこんな光景を言うのだろうか?。ただ、みんな運転がうまいのか?、するりと、対向車を交わしていく。右側通行ながら、道には中央線らしきものも少ない。「はみだしご自由」って感じである。

案内人に言わせると、今日は休日なので、バイクも少ないほうだと言う。僕たちも、おばん諸氏も、ただ目を白黒。事故も結構あるという。事故って、「笑ってー許して」というわけにも行くまい。バイクもさるこながら、日本企業の進出も顕著のようだ。至る所に大手企業の立て看板が目に入った。経済発展は世界の至る所で進行している。その一翼を日本企業も担っている。うれしい反面、美しい地球環境だけは、ずっと温存して欲しい願わずにはいられない。

エアポートからホテルまでは、ほぼ1時間半の道のり。風景を眺めているだけで、退屈はしなかった。途中2名の女性が下車する。違うホテルとのことで、なんと五つ星クラスのホテルだ。いったいどちらの、どちら様かな?と、車から降りる姿を見ると、メンバーの中で一番若い二人ずれの女性だった。「今の若い女性たちは金を持ってるんだよ」とは、のび太くんの弁。確かにホテルのフロントも豪華な装い。

ところで、我々のホテルは如何?。パンフレットによるとスタンダードなホテルとのこと。ということは良くて三つ星だろう。寝泊まりができればそれで良いという考えもあろうが、いいホテルに越したことはない。でたとこ勝負で僕たちは一路ホテルを目指した。町中に入ると、モーターバイクがさらに増えた。二人乗り、中には赤ちゃんを真ん中にして三人乗りもいる。たまげたぜ。
赤信号の場所では、おびただしいバイクが縦列を組み、「今や遅し」と出走を伺っている。なんとも絵になる光景だ。

そうこうするうち、ホテルらしきところにバスが到着した。五つ星とはほど遠い、みすぼらしい外観をしている。「ええええつ、ここなの?」と皆、いぶかし顔。「しかたござんせんぜ。先立つものがない」とは、リーダー、ドラえもん君の弁。とりあえず部屋に荷物を入れ、案内人から教わった近くのレストランで夕食をとる段取りとあいなった。

さて、これから起きる、様々なハプニングを一体、誰が予測できただろうか?。誰も予測できはしない・・・・。



2010年02月15日(月) 僕たちの旅(5)

どのくらい眠っていたのだろう。突然。機体が傾いた。僕は目を覚まし、隣にいる、ネズミ男君を見た。彼は、すでに目を覚ましていて驚く様子もない。「今、機体が方向チェンジしているんだ。だんだん、高度を下げていくぜ」という。なるほど、そうなのか?。僕、ジャイアンは、空ろな眼で窓の外を見た。相変わらず雲のジュータンだ。それでも、雲の種類が違ってきたのか?、前よりは薄くなり、隙間から下界がぼんやりと見えているような?。「見てみんしゃい。田んぼの輪郭とか家とか、道路が見えるやろ?」と、ネズミ男君は、いかにも視力抜群と言いたげだ。。「そう言えばそうかなあーーー」。本来、近視の僕には定かには見えない。まああ、そういうことにしておこう。後の三人は知らぬ存ぜずで、相変わらず、船を漕いでいる。

僕は時計を見た。3時間以上は飛んでいるようだ。着陸も近い。しばらくして、「まもなく着陸態勢に入ります。倒した座席を元に戻してください。シートベルトを装着ください」と機内アナウンスが流れた。皆、ばっちりと目を覚ました。いよいよかあーーーー。僕たちの心は躍った。

機体はすっかり雲を抜け、どんどん高度を下げ、田園風景を見せながら滑走路へと向かっている。「ありゃーーー」と思ったら、機体は滑走路を滑っていた。いつ着陸したのかわからないほど、なめらかな着陸だった。気の早いのび太君は、手荷物を降ろそうと、準備にかかろうとしていたとき、機内アナウンスが流れた。「ただいま、機体は着陸いたしましたが、予定時刻より15分早く到着しましたので、案内があるまでそのまま座席でお待ちください」とのこと。「ええええっ、そうなの」。僕たちは各々の時計を眺めながら苦笑い。僕は思ったことよ。「デートなら15分待たされても平気だが、何度も待たされるのはごめんだぜ」。とにもかくも、出発が遅れた分を取り戻すべく、機長さんは懸命に飛行機を漕いだのだろう。とはいえ、待たされりゃ元の木阿弥だ。

ここまで来たからには背に腹はかえられない。「じっと、我慢の子」で待つことにした。あたかも、飢えた犬がご主人様から「待て」と言われている心境だ。僕たちは「今や遅し」と待った。程なくして、「ドアは開かれました」というアナウンスが。僕たちは、「それ行けワンワン」で、先を急ごうとした。そのとき、大きな黒い手が僕たちの行く手を妨げた。な、な、なんと、リーダー、ドラえもん君が仁王立ちして通路をふさいだ。前の席の人たちを先に下ろしてやろうという、リーダーの計らいだ。さすがはリーダー。伊達で、リーダーをやっているわけではない。見直したぜ。ようやく僕たちの出番となった。降り口ではスタッフたちが見送っていた。二人の美しいキャビン・アテンダントがにっこり、ほほえんでいた。僕たちも二人の顔を交互にみやり、「にんまり」と笑みを。いよいよ異国の地の扉が開いたのだ。

僕たちはよろけるような足取りで、出口を目指した。入国審査のため、再び白線上にならんだ。僕の順番がやってきた。女性の審査官だ。僕は例によって「にこっ」と笑うと、審査官も「くすくす」と笑いながら、パスポートにポンと押印した。ホップ、ステップと足取り軽く、皆の待つロビーへと赴いた。すでに、現地案内人が待機していた。五人が揃ったが、案内人が動く気配がない。「ワイ?なぜ?」と尋ねると、今回のツアーは総勢23名とのこと。「揃うまで待ってください」と言う。「ええーーーつ、そうなの」と思って待っていると、仲間たちが集まりだした。

よく見ると男がほとんどいない。我々五人と、あと二人が男だった。ということは18名が女性だ。さらに観察すると、訳ありオークションではないが、それぞれに、思惑をかかえた女性たちばかりのようだ。それもそうだろう。それ以上に驚いたことは、ほとんどが中高年のおばさんたち。(これは失礼)。まああ、類は類を呼ぶで、おばさんたちも「じじいばっかりね。いい男は一人もいないわーーー」と、思っているかもしれない。

いずれにせよ、数日を共にする仲間ができたわけだ。僕に二句、浮かんだ。「うば桜、ともに歩めば、よき友か」「うば桜、やかましいこと、限りなし」。いやはや、これからどんな珍道中が待っているのだろう。まだ先が読めない。


2010年02月12日(金) 僕たちの旅(4)

午後1時を回り、僕たちは何をなすべくもなく、事態の成り行きを見守った。1時半を過ぎた頃、アナウンスがあった。「パーツが到着し、今復旧作業を行っています。終わり次第、ご案内できると思いますので、もうしばらくお待ちください」とのこと。皆の顔に安堵感が戻った。やれやれだぜ。のび太君はすかさず、別荘の予約を取り消した。

かくして、午後2時頃、搭乗の案内があり、僕たちは一番乗りを狙い、ワン・ツー・スリーで、機内へ乗り込んだ。おれたちゃあーーーまだガキだぜ。座席シートを探し、シート上のボックスへ手荷物を入れた。座席は、ドラえもん君と夜泣き爺さんが僕たち三人(のび太君、ネズミ男君、ジャイアン)の前の席。なんとドラえもん君は三人掛けの椅子を夜泣き爺さんと二人で占領。うんん、これもやむなしか?。僕たち三人は、ジャイアンが窓側、ネズミ男君が真ん中、のび太君が通路側となった。ジャイアン曰く。「うんん・・・、エコノミークラスは窮屈だ。やはり、ビジネスクラスだぜ」。すかさずネズミ男君が、「おいらたちは、そんな身分じゃあ、ござんせんぜ」と言う。ごもっとも、しかり、まさにその通りだ。ただ、前席の後部シートカバーが薄黄色く汚れていたのが気になった。

「じっと我慢の子」と割り切り、機内を観察した。結構客がいる。「へえ・・・、こんなに客が待っていたのか?」と改めて驚く。それにしても「上品な客ばかりだぜ」と思った。僕たちのフロアーを担当するキャビン・アテンダントと言うべきか?、フライト・アテンダントというべきか・・・・?。(どちらでもよいか?)は2名いた。一人は日本人の美しき女性。もう一人はベトナム人の美しき女性。うんんん、グッドだぜ。リーダー、ドラえもん君は、「ぽっ」と顔を赤らめ、長老、夜泣き爺さんもご満悦の様子。だが、いかんせん。ベトナム人の女性には言葉が通じない。ジャイアンのブリティッシュ英吾も砂に書いたラブレター・・・・?、じゃあない。砂に書いた餅だ。当然食えない、通じない。「これじゃーーあばかんで」と言うことで、もっぱら日本人アテンダントさんとの会話に皆、終始した。

ほぼ4時間のフライトである。臆病者のジャイアン(これ、僕のことか?)は飛行機の動静に一喜一憂だ。メカに詳しいネズミ男君が「まもなく水平飛行に移るから何の揺れも感じなくなるぜ」という。なるほど、その通りとなった。僕、ジャイアンは半楕円の窓から外を見やった。一面、白い綿雲だ。孫悟空で言えば、この飛行機はまさに、「きん斗雲」だ。行き着くところに如来様の手のひら。僕たちの場合は、まだみぬエアポートということになるか?。訳のわからぬ事を考えながら、いち早い時の経過を願った。皆も同じ気持ちだろう。

そうこうするうち、「シトシトピッチャン、シトピッチャン」と、何か荷車を押すような音が聞こえた。宅配弁当の時間だ。アテンダントさんが聞いてきた。ミート・オア・フィッシュ?」と言ったっけ?。覚えていないが、ジャイアンがすかさず、「スリーメンバーズ、ミート プリーズ」と言ったところ、通路側に座っている、のび太くんが「日本語で通じるんだよ」と言って、僕を制し、改めてミートの注文だ。僕は頭をかきかき、「にこっ」。まいったぜ。

いやああ、なかなかおいしかった。テレビもイヤホンで聴くラジオも、何の娯楽設備もないが、その分、食事に力をいれたか?と思ったほどだ。すっかり平らげ、コーヒーも2杯、おかわりをした。食事の後は、おきまりコースの仮眠タイムだ。皆、やることは同じ。飛行機が再び揺れ始めるまで、皆、船を漕ぐことになる。




2010年02月10日(水) 僕たちの旅(3)

搭乗口待合室はガランとしていた。僕たちは椅子に腰掛け、「今や遅し」と、場内アナウンスに耳を傾けていた。「搭乗の30分位前に案内するよ」とドラえもん君が言った。まだ1時間以上はある。何をすべくもなく、僕たちは売店から酒と缶ビールとつまみを購入。ぐいぐいやりだした。かく行動が田舎者たる所以なんだろうなあーーと、ふと思った。調子に乗り、皆、体の柔らかさを競うようになった。体の柔らかさは健康のバロメーターでもある。

な、な、なんと、両目の周りに真っ赤なわっかを作ったネズミ男君が、「みてみんしゃい。おいらは手の平まで、床につくぜ」と実演しはじめた。「なるほど。すごい。へー」と、皆、感心した面持ち。長老の夜泣き爺さんも、負けじと挑戦。そこそこ柔らかく、いい線をいっていた。歳の割には若いぜ。のび太くんとジャイアンも挑戦した。うんんんん、いかんともしがたい。二人とも指先は、足の甲に届かじ。そこへ、何を思ったか、ネズミ男君がジャイアンの背中を後ろから押した。「もう少しは伸びるだろう」というネズミ男君の配慮なんだろうが、ジャイアンは見事に床に転ぶ。皆、大笑いだ。この光景を近くの椅子に座っていた客が身を乗り出して観戦。薄ら笑いを浮かべながら、「馬鹿なやつらだ」とでも思っているかのようだ。周りをを気にしないところも田舎者の特徴だ。ドラえもん君と言えば、お腹が邪魔して、まず。手が床に届くこともない。ただ、突っ立ち腕組みをして、ニヤニヤしながら。この光景を眺めていた。

そうこうするうち、出発時刻の30分前になった。突如アナウンスが始まった。「どこどこ行きの○○便搭乗のお客様へご連絡します。今、機内の整備点検を行っておりますので、もうしばらくお待ちください」と。「ええーーっ、まだなの」と、僕たちは不満そうに顔を見合わせた。すかさず、メカに詳しい、ネズミ男君が説明し始めた。「機長が機内のスイッチをいれたところ、異常ランプが点灯したので、それで、点検しているんだろ」と。なるほど。さもありなん。皆、納得。

どれくらい待っただろう?。出発時間を過ぎて、30分以上経過していた。再びアナウンスがあった。「まだ、点検を行っていますので、もうしばらくお待ちください」と。「どうなってんの?」と、皆、いぶかし顔。午前11時をとっくに過ぎた頃、「○○便搭乗のお客様に申し上げます。フライトが中止になりました。今、代替便等の確認作業を行っています。しばらくお待ちください。なお、食事券を配布いたしますので、搭乗口までおいでください」と、アナウンスされた。

僕たちは、皆、「がくっ」と肩を落とした。「どうすべーーー、今回の旅は中止にして、国内のどこかへ目的地を変更しようや?」と、のび太君が言う。まあ、とりあえず、昼飯でも食って考えようと言うことになった。リーダー、ドラえもん君が食事券を入手。一人500円限度の券だった。ドラえもん君が代表で、売店から何かを購入してきた。帰ってくるやいなや、「500円以下の買い物じゃ、つり銭をくれないぜ。」という。僕たちは「せこいぜ」と笑ってしまった。

のび太くんが急遽、湯布院にある別荘を予約すべく、電話を入れた。知り合いの持ち物らしい。オッケーだった。ネズミ男君が「おいらは餞別までもらってきたのに、湯布院じゃ悲しいぜ」と言う。ジャイアンも同感だ。長老。夜泣き爺さんは、この成り行きを黙止。「なるようになるさ」という達観した態度はさすがだ。

だだごねのジャイアンの気持ちは収まらない。二人ずれの若い女性がいた。すかさずジャイアンは尋ねた。「君たちはどこへ行くの?」と。「韓国です」と」言う。単純、能天気、単細胞のジャイアンは、リーダー、ドラえもん君に向かって言った。「ぼくたちもそこへ行こうや」と。ドラえもん君は笑いながら答えた。「日を改めるならともかく、今から変更は無理だよ。」って。きかん坊のジャイアンは、「それなら旅行社へ電話を入れてみる」と言って、即、テル。旅行社が言うには、「今、異常箇所のパーツ(部品)を取り寄せているようですから、ひょっとすると飛べるかもしれません。もうしばらく待ってみてください」と。すかさず、場内アナウンスが流れた。旅行社と同じ事を言う。うんんんん、参ったぜ。いつになったら飛べるかわからない。「待ち時間如何によっては、湯布院へいこうや」と、腹が決まりつつあった。その後、待てど暮らせど、メッセージが流れない。他の便の搭乗者たちが、どんどん、この場から消えていく。

思った事よ。「都市高速での事故。フライト便の欠航宣言。どの後、かろうじて部品待ち。今回の旅はどうも凶だな」なんて。昼を回った。「今回の旅はあきらめて、外に出ようや」と話がまとまったが、なんと、航空会社と旅行社の最終結論がでるまで、外に出られないとのこと。それもそうだろう。旅行社のメンツもあるし、今更払い戻しにも応じかねるだろう。僕たちは待つしかなかった。この時間のロスは、いったい誰が埋めてくれるのか?。こういうことはよくあることなのか?。僕たちはなすすべもなく、椅子に腰掛け、事態の成り行きを見守った。搭乗口に立てかけられた、アオザイを着た美しき女性の看板だけが我々の目を引いた。


2010年02月09日(火) 僕たちの旅(2)

のび太君は一般道を、のろりのろりと進んだ。僕たちは無言のまま窓の外をみやっていた。数十分進んだところで、国際線入り口の標識が目に入る。「着いたぜ」。僕たちの心は安堵感に変わった。急に皆、元気が出てきた。

だだっ広い国際線の駐車場はまだ、ガラガラだった。のび太君は入れやすい場所に駐車。バッグを下ろし、玄関フロアーを目指した。足取りは軽かった。フロアーはがらんとしていた。僕たちは円陣を組み、「さて、次にどうすべーー?」と思っていたところ、リーダーのドラえもん君が「まず搭乗券を入手しようや」と言ったので、僕たちは航空カウンターへと赴いた。無事に航空券を手に入れ、午前8時に約束していた旅行社の添乗員と会うため、ロビーで待つことにした。おっと、待つまでもなかった。そこにはすでに、合図の旗を手に持った添乗員が待機していた。「なるほどねーーー」。ジャイアンたる僕はいたく感動・・・・・。あれこれと説明があり、「good trip」という言葉を残して添乗員はそこを去った。後は我々の自己責任において、事を運ばねばならない。

出発時間まで、まだ2時間以上あった。リーダー、ドラえもん君が、「もう中へ入ろうや」と言ったので、皆、即同意。まずはパスポート審査だったっけ?。白線上にならんで、順番を待つ。昔に比べて、度アップに写った自分の顔写真が目立つ。僕はパスポートの写真を見て、にっこり。係員が「じろっ」と僕を見つめた。「はあいいい、間違いなし」ということで、スタンプをぺたぺた。当然だぜ。ほかの者はすでにクリアーしていて、次のステップを進行中。どうも、僕はこういうことには疎い性格のようで、いつもビリになる。

さあーて、次は手荷物検査だったっけ?。上着、ポケット内のもの、携帯電話、カメラ、時計、財布等を四角いかごに入れ、バッグをベルトコンベアーに置く。チャペルの門のようなゲートをくぐる。結婚式ならいざ知らず、いつもいやな瞬間だ。ドラえもん君、のび太くん、夜泣き爺さんは見事クリアー。ジャイアン、ネズミ男君が、ちょっくらつまずいた。ジャイアンは身体検査と荷物の中身を調べられた。検査官が僕を手招きして、隅っこへ導入。「はあい、両手を広げて」と言う。僕は「かかし」状態になり、拡大鏡の親分みたいな丸い鏡が僕の全身を這う。「僕のたまたまちゃんに触れたら、一物をぶったてて鏡を割ってやろうか?」と思ったが、もうその力もないか?。「足にまいりまーーす」と言う。いやいや、そんな優しい言葉ではなかった。僕は「靴を脱ぎましょうか?」と言ったら、その必要はないと言う。余計な配慮だったか?。。

身体検査を終わったら、うら若き女性が僕を呼ぶ。荷物の中身検査だ。「おやーっ」と、横を見ると、ネズミ男君がバッグの中身を調べられていた。なんでも、大きなボトルの瓶が見つかったようだ。封を切っていないウイスキーのボトルだった。免税売店で先ほど購入したやつだ。液体類は一個、100ミリリットル以上は持ち込めない。それで指摘されたのだろう。封を切っていなかったので、無事クリアー。

人の事ばかり言っておられない。僕はと言えば、バッグの中の液体類を調べられた。白い透明のビニールケースに収められたアイボン、コンタクトの洗浄液、液体歯磨き粉等々が調べられた。クリアーだ。次にほかの品々に及んだ。シルクのパンティー。じゃない。パンツ。いや、トランクスか?。女性係員の顔を僕は「ちらっ」と眺めた。無表情。さもありなん。こういうケースに何百回となく遭遇してきた彼女らにとって、これらの物質はあくまで検査対象。いちち顔を赤らめていては仕事にならない。僕は思ったことよ。「虎柄のシルクパンツがかわいそうだぜ」とかなんとか・・・・。

冗談を言っている場合ではない。ほかの四人が、ニヤニヤと笑いながら僕の出現を待っていた。僕は「、ごめん、ごめん」と言いながら、笑うセールスマン風ハットに手をやり、苦笑いだ。「さあ、搭乗口待合室まで行こうぜ」とリーダードラえもん君が声を発した。僕たちはうなずき、彼の後を追った。この先、いかなる事態が待ち受けているとも知らずに・・・・・・。





2010年02月08日(月) 僕たちの旅(1)

僕たちの旅が始まった。早朝6時、我が家の駐車場に3台の車が滑りこむ。ドラえもん君、のび太くん、ネズミ男君、夜泣き爺さんの4人が降り立った。皆、寝不足のようだ。そういうジャイアンたるこの僕も同様。まだ見ぬ地へと飛び立つ期待と不安が睡魔を追っ払い、ろくに寝ていないのだ。それでも、皆、顔を見合わせ、「にんまり」と笑った。この「笑い」の意味はよくわからない。それぞれに思うことが違うからだ。さああ、出立だ。僕たちはトランクへ、まだ軽いバッグを放り込み、のび太くん操る高級乗用車へと乗り込んだ。

皆の装いを紹介しておこう。ドラえもん君は大きなお腹を覆い隠すような綿のジャンパー。帽子なし。のび太くんは、一見高級そうな黒皮のジャンパー。野球帽のようなものあり。後の三人も、似たり寄ったりの、普段着姿だ。夜泣き爺さんも野球帽のようなものをかぶっている。ジャイアンの僕は何を思ったか、笑うセールスマンがかぶっているようなハットだ。「ハッ」と、人が気づいてくれるように配慮したと言えば嘘になるか?。ネズミ男君は、とりあえず風前の灯火たる頭髪を大気にさらしていた。総じて、この一行は田舎の「おっさん」風と言ったが当たっているだろう。

のび太くん運転のもと、僕たちは一路北へと車を走らせた。まず、高速に乗り、そのまま都市高速へ乗り換えると、ほぼ1時間弱で飛行場へ着く。車の座席は、ジャイアンが助手席。ドライバーの後部座席にドラえもん君、真ん中に夜泣き爺さん。助手席の後ろに、ネズミ男君が座った。これはリーダーたるドラえもん君が描いた構図である。僕ならちょっと違った構図を描いたが、この場では述べまい。

車の中では、それぞれ固い話に終始した。それもそうだろう。ジャイアンに次いで方向音痴の、のび太くんがドライバーとあらば、皆、一応に不安を抱くのは道理だ。だが、そういうことは、おくびにも出せない。と同時に、腹はすくし、寝不足がたたっている。冗談を言って笑い転げる状況ではない。何があっても俺たちは一蓮托生だぜ。そんな気持ちで心だけが先へ先へと急ぐ。

車は都市高速の入り口にさしかかった。な・なんと・・・、進入禁止、通行止めの看板が掛かっていた。「えええっっ、WHY? なぜ?」。僕たちは目を白黒させながら、都市高速の遠くへ目を向けた。何があったのかわからない。勝手に事故があったに違いないと想像した。のび太くんは急遽、高速道をおりて一般道へと進んだ。渋滞だ。こんな早い時間に渋滞とは、やはり都市高速での事故らしき事が原因に違いない。

僕たちは眠気も遠ざかり、緊張感だけが急に高まった。旅はまだ始まったばかりである。


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