あたし、うたをうたっていること。 学校入学の書類を書いた、父親以外は知らない。
あたしの通っている専学に興味を持った子達が見学に来た。 二時間粘ったけれど結局、専攻を吐いた。 何でだろう、何か進学に協力してあげたかったから。 だけどあいつが、またあたしの専攻を聞いてきた。 あなたには関係の無いことよ。 何でもかんでも立ち入ろうとしないで。
あたしには夢だった。 どれだけの時間掛けて、どれだけ体を巡らせて。 此処まで辿り着いたと思ってるの。 此の想いを護る為に、どれだけの嘘を。 どれだけの傷を。 どれだけの苛立ちと、戦いを見てきたのか。 知ってる? 此れ以上、誰にも云わない。 あたしの何かが壊れそうだよ。 それでなくともどんなに場違い感を、身に触れさしていると思う。
此れ以上、近付かないで。
誰も。
誰も。
今でさえ尚も、夢を想うと。 屈折した感情に、腕を裂いてまで。 堪えて逃げたくてもずっと、此処で。 気狂いじみた腕。 伸ばして伸ばして、何時か必ず届くように。
誰にももう、触らせない。
嘘吐くことにも、もう慣れたから。 傷付けても構わない。
絶対に護るもの。
お風呂上りにふと、誰かを好きになりたいと思った。 ただ、好きになれるひとが在ないだけだよ。 理想が高い、とかそんなんじゃなくて。 好きになれるひとが在ないだけ。 誰も在ない。
運命否定派のあたしは。 友達の話しにウンザリする。 現在のあたしが運命という決められた道筋通りだったとしたら。 それこそ絶望。 明日からも決められているなんて、気が遠くなりそうだった。 てのひらの上は居心地が良い? あたしはあたしで生きるよ。 気が狂いそうな話し。
話ししててさ、盛り上がってる時。 楽しくて何も目に入らない時。 だけど一瞬、ふと。 我に返って。 冷める。 そうして、外れて。 今まで自分も入っていたひとの塊が。 只の街の一部に思える。 行き場所が無い。 短い。
眠れなかった。 恐かったから。 死ぬ事が恐かったから。 眠らなかった。
目を閉じると、息が止まって仕舞う気がする。 真っ暗になった瞬間が、最後の思い出のような気がする。 臆病なひとだ、あたし。 朝、テレビ観て。 うたうたいのひと達の、逞しい声を聴いた。 羨ましくて少し、元気になれた。 うたいたい。
一晩中、窓を開けてベランダに居た。 涼しい風がまるで秋みたいで、秋になったらどうなるのかと不安になった。 夏が終わって秋になる時、どれだけの思い出が押し寄せるだろう。 体中が痣になりそうな摩擦で。 息も出来ずにもがきそう。 夏は始まったばかり。 思い出は大切だけど、どうも上手く思い出にし切れなくて。 釣り針に掛かったように、脳味噌が引き千切れる。
今日帰ったら、友達に会える。 毎日、夕立ちが来る場所。 頭がおかしくなるほど静かで。 鼓膜の裏に、蝉が卵を産む。 誰も居ない毎日。
涼しくていい日。 随分眠った。 起きたのが14時半くらいで、それからお買い物に行った。 水とお茶だけ買って。 御飯、いいや。 明日は地元に帰省する。
日記をリニュした。 もう随分、あのままだったような気がする。 半年くらい振りのリニューアル。 ↑ここの向日葵、お家に咲いてた花。 向日葵は凄くいい匂いする。
今日はホントに涼しいねー。 エアコンも久々につけない一日だった。 明日は午前中、病院。 先生ね、あたしの腕を見るでしょう? 『此れからはリストカットの痕を消す技術があると、随分儲かるだろうね』 って云ってた。 妙に納得して、良い考えだなーって思った。 儲かるだろうね、もし傷を消して仕舞いたいと思うひとがそんなに在るのなら。
やっぱり息は苦しいままだよ。 どうしたら治るんだろう。 自律神経が壊れてるって云われた。 早く治して、みんなと遊びたい。 うたうたいたい。
息がつづかない。
寝れば恐い夢。 何時も恐い夢ばかり。
夕べみた恐い夢。 あたしがじいちゃんを殺した夢。 事故を起こして、じいちゃん死んだ。 あたしが殺したの憶えてる。 あたしが殺した、そればかり未だに繰り返す。
じいちゃんの死んだ日、今でも鮮明に思い出せる。 暖かい春の初めの早朝、夢の奥で聞こえる電話の音。 ひとつだけ開いていた雨戸。 そつない話し声のあと、お母さんの階段を駆け上る足音。 珍しく、妹よりあたしの方が先に起こされた日。 それだけで本当は満足だった。 そして、叱られても言い返せなかった哀しさ。 億劫に起き上がった時の布団の裾の皺、にぶい朝の光り。 味の無いピザトーストの匂い、慰めに過ぎないテレビの声。 急いだように支度を済ませるまでの、長い長い朝の日。 音無。
お葬式で泣かない代わりに、握りしめていた右手。 誰も気付いてはいなかった、ささやかな強がり。 暗い闇の中で閉じ込めた、思い出が溢れた。 そしてじいちゃんが死んだ現実を、未だ受け入れない躯。 だって在るもの。 いつも、階段を下りて。 庭に向かう砂利の上。 擦れ切った声で、生きていた。 あたしは、じいちゃんを殺したのはあたしだと云われた時。 無意識だった反面、其れに納得していたから。 忘れて仕舞う事に、封印された言葉に。 出口を見失って、予感と共に真実に成りかける。
恐い夢。 何が恐かったのだろう。 息が出来ないほど泣くくらい。 振り解ききれない夢だった。
約束には、小指と舌が必要。 今日の約束には、舌が足りなかった。 きっとあのコは案の定の破れりに、針を千本用意しているのかしら。 『腕を切りそうになったら、携帯を手に』 なんて。 僕は、船じゃない。 自傷症候群の僕が、みずからに傷を付けないのなら。 一体、誰が傷付く事になるだろう。 何が壊れるだろう。 ねえ、僕は嘘つきの塊で。 こんなにも粉々で。 唇が乾いているのに、喋った跡形もないあなたと。 約束は成立するのだろうか。 電波で送られてくるあなたの想いが。 時々、とてもおもたい。
最近とても、躯が崩れそう。 知らない痣が増える。 背中から崩れてしまいそう。 美味しい水が欲しい。 耳の奥がこすれて、少し変。
壊れるまでが長い。 何処かがキレて走り出せば。 ひとは天才にも、気狂いにもなれるのに。 青か、赤か、僕の指先が。 夏の所為で狂わなければいい。 うただけじゃきっと届かない。 そんな自信の無さ、聞きたくないのに。 うただけじゃきっと僕じゃない。 声や言葉にならない事ばかり多くて。 僕はなにも伝えられないから。 僕で居られるほんの少しのあいだ。 文字にしよう。 ひとつの脆い一瞬の一日だった日のことを。 いつもみたいに百以上の文字に代えて、ひとの脳味噌に焼きつける。 そこに描かれた世界で、存在して往こう。 自分を変えて。 其処に佇む僕を、誰もが見向きもしない醜い僕を。 只の生き物が。 突然、異常になって、触れたい。 生きてく導を見付けた僕は。 証を残す為に生きて往く。 漠然と見付けた理由から、死と云う逃げ道を絶った。 もう強くなろうとも思わない。 何もかも忘れて、必死に生きて往きたいだけ。
夏休みに入って一週間。 落ち着き、新しいお薬にも慣れ。 やっとネットが出来るくらいの元気なら戻った。
夏休みの一日前の日。 教室であたしの左腕に触れたコがいた。 そして微笑んで、『治るから、大丈夫だよ』そう云って。 彼女も手首を見せてくれた。 そう。 そう思った。 色んな言葉を知っていたそのコは。 あたしと同じリストカット常習者で。 とてもとても強かで。 この学校に入った日、羨ましいと思った、長い長い黒髪のコだった。 細くて背いが高くて。 存在感の有るひと。
それからそのコはあたしに、毎晩メールをくれる。 『気分はどう?』 気分は良いのか悪いのか、本当はあたしも良く解っていない。
未だに。
今年の夏休みも、大阪に行く事になった。 去年は春だったか。 一昨年の夏休みに行った所と同じ場所。 ライブに行って、友達と遊んでくる。 パニックの発作も治まった。 幸い、新しいお薬と躯の相性が良いみたい。 息が苦しくなくなった。 それだけで幸せ。 だけど夜が恐いまま。 お薬は暫く手放せないかな。
夢かと思った。 朝、目が覚めて、昨日、苦しかったことも。 あんなに元気で居れたのに、今は息が苦しくて怖いばかり。
未だ続く窒息感を紛らわそうとしてお昼寝をした。 息が出来ない気がして、何度も目が覚めた。 母親に電話しても、仕事中だからどうも出来ないし。 あたしはひとりで腕を天井に伸ばして。 痺れている指先を眺める。 死んでしまいそうだった。 学校に行きたい。 うたうたいたい。 早く治らないかな。 病院に行かなきゃ。 眩暈も酷くなってくる。 この間は自律神経が弱ってるって言われた。 何故。
夏休みは楽しいことを詰めた。 どうにか成る筈だから。 だから、落ち着いたら学校へ行こう。 頑張ろう。
目が覚めて庭に出ると。 朝霧が酷くて窒息しそうだった。 蜘蛛の巣が森になってた。 息が苦しい。 ずっとなんでだろう。
ひとりで過すのが不安で、実家に帰省した。 生きる欲ばかり先走る。 どこか空回りしてるみたい。 息が苦しい。 眠れなくて、生きてくことばかり考えてる。
この頃、メールを貰うことが増えた。 少し嬉しい。 『少し嬉しい』が口癖だって気付いた。 本当は少しだけじゃないけど。 少しじゃないと悲しくなるから、少しだけ嬉しい振りをする。 だけど幸せだよ。 なんか、無性に。
何で苦しいだろう。 夏になれば治るかな。 お薬をのんでも上手く治らない。 胸が痛い。 もう少しだけ安心していたい。 夜じゃ眠れない身体、昼間ならちゃんと眠れるのに。 どうして上手くいかないかな。 頭がぼーっとする。
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