時代の巫子*白竜×浩子 - 2005年10月26日(水) 「……お腹が減った」 ほとんど唸るように声を吐き出した白竜に隣を歩いていた亨は眉をやや下げてふわりと笑う。 「結構立て続けに獣格化しちゃったもんね」 「腕しかしてないんだけど、こればっかりは…」 「家まで持ちそう?」 「うん、大丈夫」 口で言うほど平気ではなかったが、とりあえず笑顔を返す。そうでもしないと心配性の亨は、白竜を是が非でも近くのレストランやファーストフード店に連れて行くだろう。 ファーストフード店というのは、彼らにとってあまり思い出したくない場所だ。初めて獣格化現象を体験して(しかも獣格化したのはクラスメートの少女だった)、誇張でなく死ぬような思いをしたところなのである。 獣化現象はさらに悪化し、今も白竜は信頼の置ける仲間と共に、戦いの日々を過ごしている。 「はやく家に帰ってご飯食べよう」 「そういや、今家で小林浩子と先輩が待機してるんだよね?」 「……うん、そう」 何気なく振られた質問に対する回答が、不自然に遅れる。しまったと白竜が思ったときには遅かった。亨の優しげな瞳が、悪戯にきらりと光る。 「心配?」 「……何が?」 「またまた」 平静を装うが、亨の前での虚勢がどんなに意味が無いか、一番分かっているのは白竜だ。 亨が自分の気持ちに気づいているだろうことは白竜自身気づいていた。しかし彼が面と向かってそれをあらわにすることはなかったので、白竜も自分から言ったりはしなかった。 彼らの置かれている状況が今、それどころではないので、そういったことを話す機会が今までなかったということもある。 白竜にとっては唐突な展開に、しばし戸惑う。 するとそんな彼を見て、亨は声をあげて笑った。 「はーちゃん、そんな反応されるとこっちが照れるよ?」 「………ごめん」 思わず謝ってしまった白竜に、彼の親友はどん、と背中を叩いた。 「ほらほら、しゃきっとしないと!小林浩子は男勝りだけど女の子なんだから、はーちゃんがしっかりしないといけないんだよ!」 「………トール、」 「はーちゃん」 まるで浩子が白竜の恋人であるかのような彼の発言に当の本人は口を挟もうとするが、その反応を見越していた亨は口調を強めてそれを阻止する。 「小林浩子は生きている人間と幸せになるべきだと思う」 「………」 まっすぐに自分の瞳を見つめて告げる亨に、白竜は返す言葉を失う。本当に亨には自分の感情など筒抜けなのだなと改めて白竜は思った。 二の句を告げない白竜に、亨は再び眉尻を下げた。 「ほら、山崎先輩には彼女さんがいるしさ。そうなるとはーちゃんくらいしか彼女の相手はいないじゃないか」 「トールだっているだろ」 「僕なんか喧嘩でもしたらすぐKOだよ。獣格化も役立つことがあるんだね、良かったねはーちゃん」 「……他人事だと思って」 打って変わっておちゃらけた素振りを見せる亨に、白竜はがっくりと肩を落とす。もちろん、あえて彼がふざけてみせるのだということくらい分かっていたけれど。 「大丈夫、小林浩子とはーちゃん、結構お似合いだよ」 にっこりと笑う目の前の親友に白竜は心の中で白旗を揚げた。 亨が言うと、本当にそんな気がしてくるから不思議だ。 「……とりあえず今は、帰って何か食べて寝たいや」 「小林浩子の顔見てからね?」 照れ隠し半分で当初の目的に話題を戻すと、相手は頷きながらも茶化すのを忘れない。 互いに小突いたり小突かれたりしながら、彼らは仲間の待つ、今の彼らにとってのホームとも言える場所への道を急いだ。 ... ハリーポッター*ハリー×ハーマイオニー - 2005年10月15日(土) 例えば明日提出の宿題にちっとも手をつけてない僕を君は怒るけど、クディッチの練習で毎日へとへとなのをちゃんと知っているから結局ぷりぷり文句を言いながらも一緒にやってくれる。 例えばロンと何もかもが正反対の君は彼といっつも喧嘩してるけど、ロンが誰かに中傷されたときは彼との喧嘩の時とは比べようもないくらいの剣幕で怒ってるの、僕もロンも知ってるよ。 君とロンは僕の親友で、でも君への「好き」とロンへの「好き」が全然違うものになってしまったことに、僕は気付いてしまったんだ。 「ハリー?どうかした?」 そう言って君は僕の隣で笑ってくれるけど。 「私の顔に何かついてる?」 本当はちょっとだけ、そのことが辛い。 「ハーマイオニー、僕たちずっと一緒にいたいね」 でも君はきっと笑って言うんだ。 「ずっと一緒にいるわよ。私もロンも、ず――っとあなたのそばにいるわ。だってわたしたち親友じゃない!!」 ありがとう、としか。 僕は返せないけど。 風になびくふわふわの髪や、女の子らしい柔らかくて暖かい肌や、意思の強いくりくりの瞳を。 言えないよ。 全部全部本当は、僕のものにしたいだなんて。 ...
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