「静かな大地」を遠く離れて
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2002年06月12日(水) 人生の必修科目

題:355話 馬を放つ25
画:ギョリュウバイ
話:険しい山道を歩く者が、谷の深さにいきなり気づいたようなのです

題:356話 馬を放つ26
画:フジバカマ
話:万一のこととして考えてみよう

これから年齢を重ねていくというのは、近しい人、大事な人と死別する機会が
増えていくことと同義なのかもしれない。理屈ではわかっていても、だんだん
とそれを思い知らされる出来事が、頻繁になってくるということなのだろう。

ナンシー関さんが昨夜亡くなった。39歳の急逝。ずいぶん彼女の文章に力を
もらってきたし、物事の見方の師匠としての「学恩」めいたものさえ感じている。
国歩艱難たる日本で、ほとんどただ一人、常に信頼に足る見識を示してくれる
批評家であったと真剣に思う。M繁氏より先に逝くなんて…というような稚拙
なツッコミを手向けにしようにも、どうにも行き場のない喪失感だけが残る。

偶然身近なところでも、今日、若くして人生の伴侶を病気で亡くした方がいる。
死は近いところにある。死を無いことにして忘れ去ることより、死とつきあう
スキルを高めることのほうが大事なのだろう。そしてそれは慣れることの出来
ようはずもない他者の死を考えることではなく、自分の死を考えることでしか
高めることのできない覚悟、なのだろう。それは自分の生を想うことでもある。


2002年06月10日(月) 時の断面としての現在

まずW杯についてコメント。一昨年のユーロ2000大会の時と比べて、情報量が
ほとんど天文学的に違うことが解せない。というか解せるけどさぁ、異議あり(笑)
去年の夏アムステルダムで、オランダ・ナショナルチームのサポーターTシャツを
買ったんだけど、なんと出場出来なかったので応援するチームがない。というか、
それなりに相対的には好き嫌いはあるんだけど、熱くなれない。冷静に観てしまう。
あえていえばイタリアにそろそろ優勝して欲しいと思いつつも、相手がクロアチア
となると、断然クロアチアを応援してしまうと言う感じ。一時期思い入れた国だし。

日本のナショナル・チームの将来には心配はない。日本に欠けている、と言われて
久しい野獣のようなヤバイくらいの嗅覚を持つストライカーの出現する条件として、
厳しい社会環境、もっと言えばスラムのような街が必要だという、まことしやかな
話がある。ほら、大丈夫、日本の社会はこれからますますヤバくなる、よって人々
はさらなる狂熱を求め、貧民街の少年たちは自分の足で一攫千金を狙うようになる。
この妄説を信じるなら、ナショナルチームが無闇に強くなる社会はイヤかも(笑)

僕がネット上で信頼しているインテリ系フットボール好きが、そろって奨めるのが
サイモン・クーパーという人の本。『サッカーの敵』という本と、わりと最近出た
『ワールドカップ・メランコリー』という本もある。これをパラパラ読んでいると
欧州、そして世界の人がフットボールに抱く“切実さ”の感じが良く伝わってくる。
それも非常にクールに。あの狂熱が一体なにを体現しているのか、わかる気がする。
気がする、から本当に実感できる、というところまではまだ隔たりが大きいけれど。

今夜、切実さを持って、本当に実感できる「小さな狂熱」を体験することができた。

■キャラメルボックス・チャレンジシアター『銀河旋律』(新宿シアターアプル)

いいものを見せてもらった。これはもう一生もんの感激です。平日の18時という
イレギュラーな時間に息せき切って新宿の街を急いで駆けつけたキャラメルの特別
公演。先日池袋で観た本公演の『四月になれば彼女は』から、まだほんのわずか、
もう次の芝居をやっているのだから驚く。しかもキャラメル永遠のオールタイム・
ベスト作品、劇団の魂、『銀河旋律』の再演。それもただの再演じゃない、往事の
黄金メンバーによるドリームチームと言っていい座組みだ。この公演はキャラメル
のサポーターズクラブの結成10周年記念のお祭りとして行われているせいもある。
しかもなんと今夜の日替わりキャストは、劇団主宰の成井豊さんその人だったのだ。
これまでの10年で観てきたさまざまなシーン、自分が過ごしてきた歳月そのもの
さえも、心の底から滲み出てくるような、何とも心地よい感動を伴う時間だった。

人が生まれて誰かと出会って、生きて、そして死んでゆく。それは絵空事ではない。
そのことを自分の実人生よりも、“絵空事”であるはずの舞台の上から多く感じて
過ごしてきたような気もする。でもそれも役者さんたちの「生」が絵空事ではない、
ほんとうの人生であり、それを共有する瞬間を重ねてきたからこその、今夜だろう。

タイムトラベルをテーマとする名作を堪能した今夜、6月10日は時の記念日…。


題:343話 馬を放つ13
画:ハナリラ
話:アイヌにすればその名を聞けばすぐにも耳を洗いたいほどの相手だ

題:344話 馬を放つ14
画:パンジー
話:なにごとも信義を持って話せば通ずというのは嘘だ

題:345話 馬を放つ15
画:待宵草
話:増長のものの偽アイヌ 分を知れ

 ≪あらすじ≫静内に三郎と弟志郎が開いた宗形牧場は、優秀な馬を産出した。
 三郎が学んだ西洋の知識と、動物に親しんだアイヌの協力があったためだ。
 繁栄に狙いをつけた東京の実力者からの協力の申し出を断ったあとに三郎は
 熊の神が危機を警告する夢を見た。牧場が危うい。

題:346話 馬を放つ16
画:ハハコグサ
話:空元気で追い払えるはずがない

題:347話 馬を放つ17
画:ノコンギク
話:チコロトイの方針から言っても隠すべきことではないだろう

題:348話 馬を放つ18
画:イヌホウズキ
話:私はこれも乗り越えられると信じている

題:349話 馬を放つ19
画:オオベンケイソウ
話:最も重い荷を負っている三郎が心配なのだ

題:350話 馬を放つ20
画:ミツバツチグリ
話:みなでチコロトイにこもっては暮らせない

題:351話 馬を放つ21
画:ヨウシヤマゴボウ
話:この道を通って三郎のたくさんの馬が十勝に行く姿を思い描いた

題:352話 馬を放つ22
画:スイセン
話:子を持つというのはこんなにも嬉しいものか

題:353話 馬を放つ23
画:スキラノイッシュ
話:それにしてもよい収まり具合でしたね

題:354話 馬を放つ24
画:オシロイバナ
話:一冬ならば大丈夫でしょう


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