日常些細事
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近所の『アラヨ・ショッピングセンター(仮名)』へ買物に行く。 買物の前に 「出すもの出してすっきりしよう」 と思ってトイレに入ったら、便器に財布を落としてしまった。 私はそのとき、たまたまシャツのポケットに財布を入れていたのだが、よっこらしょう、とかがんだ拍子にぽろりと落ちてしまったのだ。 まだ催す前だったのが不幸中の幸いであった。 水洗トイレの便器にはパイプから虫などが侵入しないよう底のほうに水が溜めてある。ポケットから落下した財布は他に落ちる所もあるだろうに、わざわざその小さな水面目掛けて着水してしまったのである。 「やややややっ」 あわてて摘み出したものの財布は水浸し。 入れていた紙幣も水浸しである。 なんたることであろうか。 「んもう。なんなのよう」 突然の災難を嘆きながら、私は丸めたトイレットペーパーで財布を拭き、水を吸ってふにゃふにゃになってしまったお札を拭いた。 言うまでもないがこのお金で買物をするつもりだったのである。 トイレを出た私はこそこそと紳士用品売り場へ行き、目的の品物を抱えてレジに並んだ。 「1万円お預かりいたします」 若い女子店員がにっこり笑って、私の差し出したお札を受取った。 もちろん彼女は、それが便器の水をたっぷり吸った1万円札だとは知る由もない。 申し訳ない、と私は心の中で手を合わせた。
「7月の運勢」と「予約」のページ、更新しました。
引越し先を捜して不動産屋の『チビチビ(仮名)』に行く。不動産屋さんとしてはかなり妙な名前だが全国展開のお店である。 ここではいきなり 「保証人はどなたになってもらいますか?」 と聞かれた。 「友人に頼もうと思ってますが」 そう答えると不動産屋さんいわく、 「うちは親族の方意外は一切お断りしてるんですよ」 同じようなことは他の店でも言われた。 私は友達にはそれなりに信頼されていて、だから保証人になっても良いという人が何人かいるのだが、親戚にはまるで信用されていない(りゆうわきかないで)。 唯一親しくしてくれていた叔父も数年前に無くなり、頼みごとのできる血縁はいなくなってしまった。 今の家を借りたのは10年ほど前だが、保証人は母親の友人(愛人ですね要するに)になってもらった記憶がある。「保証人は親族」、と貸し手がうるさく言うようになったのは近年のことだろう。 確かに店子がトラブルを犯した時、赤の他人よりも血の繋がった者の方が情に訴えて責任を取らせやすいかもしれない。 私も昔、母親があちこちに作った借金を返してまわったことがある。サラ金などから電話がかかってきて脅迫まがいに母親の居場所を尋ねられたりすると、自分に返済義務の無いことはわかっていても、 「わしゃ知らんもんね」 とは言えなかったものだ。 うーむ。しかし困ったぞ。 これでは新しい家を借りられないではないか。
引越し先を捜して不動産屋の『大日本賃貸(仮名)』に行く。 「倉敷駅の近くで静かな環境で間取りは2DK以上でひと部屋はフローリング、家賃駐車場込み5万円以下の物件ですか」 私の希望を聞いた受付けのお姉さんは、 「そんな好条件で5万円以下なんかあるわけねえだろ」 という顔をして分厚い書類をめくっていたが、やがて、 「倉敷駅じゃないんですが、中庄駅まで徒歩3分、2DKで駐車場付き49000円、というコーポならあります」と教えてくれた。 「駅から3分ですか」 「はい。まあ。駅まで3分ですね」 「3分・・・」 私は考えた。 3分あれば、 1、駅でカップラーメンにお湯を入れる 2、容器を持ったまま歩いて帰宅 3、すぐにラーメンが食べられる ということである。 便利だ。 そこを紹介してもらうことにした。 倉敷市中庄は岡山市と倉敷市中心部のほぼ真ん中に位置する町で、近年、岡山県南部のベッドタウンとして盛んに開発されている地域である。 中庄駅はレンガ造りのコジャレた外観をしていた。駅の周辺も整備され、なかなか綺麗である。 住むには良さそうなところだ。 「さて」 改札を出ると私は不動産屋でもらった地図を取り出し、あたりを見回した。 駅の向いにコンビニがあり、その横の道を真っ直ぐ行けば目的の物件 『コーポ達磨ヶ丘(仮名)』 に着くはずである。 「近いですよお。もう、駅から見えてるんですから」 受付けのおねえさんもそう言っていた。 ところが。 「え。道ってこれか?」 コンビニの横にあったのは、舗装されてはいるものの幅1メートル足らずの極細道。 そいつがくねくね曲がりながら裏山の頂上まで続いている。 頂上には『大日本賃貸』と書かれたでっかい看板付きの白い集合住宅が建っていて、どうやらこれが『コーポ達磨ヶ丘』らしい。 達磨ヶ丘というのは一帯の地名なのだろうが、駅からの標高差は100メートル以上、見た目は小さな山である。 「駅から見えてるんですから」 って、そりゃ山の頂上にあればよく見えるわ。 不動産屋の物言いにいささか呆れながら、 「しかしまあ、せっかく来たんだし」 とりあえず現地まで行ってみることにした。 道は思ったより勾配がきつく、ほとんど登山道といった感じである。自動車なんかどう頑張ったって通れない。バイクや自転車で登るのもまず不可能で、ここに住むとすれば毎日歩いて行き来するしかないだろう。 大変である。 頂上まで、息を切らしながら10分近くかかった。 駅でラーメンにお湯を入れたら、すっかり麺が延びてしまう時間である。 話が違うではないか。 そもそも我が院に来るお客さんの大半は、膝や腰を痛めている人たちなのだ。 症状が良くならないかと藁をも掴む気持ちで施術を受けに来るのに、こんな坂道登らしたら余計に悪くなってしまう。 『コーポ達磨が丘』そのものはまともな物件だったが、立地が悪すぎる。ここは諦めよう。 しかし腹が立つのは不動産屋である。 「駅から3分」なんて嘘ばっかり。文句を言ってやらねばならん。 憤然として坂を下りて行くと、 「あれ?」 駅までは意外に早い。 時計を見ると約3分で着いてしまっている。 山頂から駅まではひたすら下り坂なので、時間は上りの3分の1ほどに短縮されるらしい。 駅から10分。駅まで3分。 そういえば受付けのおねえさんも 「駅まで3分です」 「まで」を強調していた気がする。 ということは不動産屋の説明も嘘ではないということなのか。 文句は言えんということなのか。 なんか納得いかんぞ。 うーむ。
引越し先を捜して『なんなら不動産(仮名)』に行く。 条件は倉敷市の中心部で2DK以上、家賃は駐車場込み5万円程度、である。 1件紹介してもらい、部屋を見に行くことにした。 社用車で案内してくれたのは営業部の深田恭子さん(仮名・20歳)。入社してまだ2ヶ月の新人さんである。愛嬌のある可愛らしいお嬢さんであった。 ところがこの深田さん、運転を始めてわかったのだが物凄い方向音痴なのだ。 店から3キロと離れていないはずの物件なのになかなかたどり着けない。 「あ。すいませーん。道まちがえちゃいました」 最初は明るく笑って取り繕っていたものの、それが4度5度と重なるにつれて次第に無口になり、最後は無言のまま泣きそうな表情でハンドルを握っていた。 「あのー。無理に行かなくてもいいですから」 気の毒になってそう言うと、 「いえ。だいじょうぶです。だいじょうぶです」 必死の形相で運転しながら深田さんが答える。 店を出ておよそ30分の後。 「着きましたあ!」 深田さんの実に嬉しそうな声。 ついに車は目的のコーポに到着した。 私は思わず拍手をしてしまった。
大家さんが突然家賃を値上げすると言ってきた。母屋を改築したり駐車場を作ったりでいろいろ物入りなのだろう。 これまで28000円だったのを40000円にするとのこと。 うーむ。40%の値上げか。 わたしがここに居を決めたのは、1にも2にも格安物件であったからである。 値段だけが取り得のボロ家だったのである。 だが40000円になってしまっては住むメリットが無いのう。 もっといいとこへ引っ越そうかしら。
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