そして帰って怒られる二人。
2006年05月30日(火)
今日オリンパス PEN-Dの修理見積もりをお願いしに行き、ものの数分で提示され、「お給料日がまだなので」といった超弩級のできそこない返事をし、家に帰ってもわもわと頭上に浮かぶのは陳列棚の「オリンパス OM-10」。
あほかー!
それは、一眼レフです。
というのも、先日ちっこい子が発掘した「じいちゃんのカメラ群」の中で、最も触らなかった「アサヒペンタックス ES2」をちょっと前に何気なくいじっていたのです。とりあえずファインダーを覗くと何やらぼやけて見える。あらあら傷んでいるのかしら、と思いつつレンズの周りのリングをいたずらにするすると回してみると。
ある一点でちっこい子の顔にピントがずどーん。
一眼レフってそうなのな!見たまんま、何かこう、な!
これは、斬新だ!
ドキドキドキ。
あれ、何なの?これ何なの?俺なんでこんなにカメラなの?
ちょっと落ち着いて考えてみよう。
今日はこどもの初めての運動会。
私はダンプに轢かれそうな子猫を助けていたので大遅刻だ。
急いでグラウンドに着くと、ちょうど娘の出番だ。
よかった、間に合った。
娘は私を捜しているのか、やたらと周りをきょろきょろしている。
我が子の活躍を心待ちにする他の親達の輪の中に息を切らせて混ぎれこむと、娘はすぐに私を見つけたようだ。
その時、勢いよく鳴り響くスタートの合図。
一斉に駆け出すこどもたち。
だが、私の娘は、その場でぴょんぴょんと跳ねながら、しきりに私に手を振っていた。
慌てて先生が駆け寄っていく。
他の親達はというと、めいめい最新型のデジタルカメラで、我が子の勇姿を収めるのに必死だ。
隣のお父さんの連射速度はどれくらいだろう。夢中で走る息子を目にも止まらぬ速さでデジタルデータに置き換えている。
娘はというと、にっこりと微笑み返す私に、さきほどの二倍くらいの大きさで、まだ手を振っていた。
そろそろ先生に捕まえられてしまう。
私はそっと鞄に手を伸ばし、36年前に造られたマニュアルカメラを掴むと、スタートラインの娘にレンズを向けた。
ファインダーを覗くと、世界に霞がかかっている。オートフォーカスのカメラならここでボタンを一押しすれば、一瞬で彼女にフォーカスできるのだろう。
そんなことをぼんやりと考えながら、私はピントリングを慎重に回した。
娘が私を捜したように、私はこうして彼女を捜しているのだ。
先生がもう一歩で娘を捕獲しようというとき、擦れの目立つ世界一のレンズが、娘の姿をくっきりと捉えた。
レリーズボタンを押して、頭上に指で出来るだけ大きく「OK」のサインを出すと、娘は弾かれたように駆け出した。先生の腕をするりと抜けて。
私はゆっくりとファインダーから目を離した。何枚も撮る必要はない。今の娘は一度きりしか存在しなかったのだから、一枚あればそれで十分だ。今まで何百回と捜し当てた彼女である。失敗などするはずもない。
私はファインダーを通さず、ただ肉眼で、走る娘を見つめていた。
私より遥かに年上のベテランは、レンズキャップを付けられて、少し寂しそうである。
やべー。一眼レフかっこいー。
あほかー!
それは、一眼レフです。
というのも、先日ちっこい子が発掘した「じいちゃんのカメラ群」の中で、最も触らなかった「アサヒペンタックス ES2」をちょっと前に何気なくいじっていたのです。とりあえずファインダーを覗くと何やらぼやけて見える。あらあら傷んでいるのかしら、と思いつつレンズの周りのリングをいたずらにするすると回してみると。
ある一点でちっこい子の顔にピントがずどーん。
一眼レフってそうなのな!見たまんま、何かこう、な!
これは、斬新だ!
ドキドキドキ。
あれ、何なの?これ何なの?俺なんでこんなにカメラなの?
ちょっと落ち着いて考えてみよう。
今日はこどもの初めての運動会。
私はダンプに轢かれそうな子猫を助けていたので大遅刻だ。
急いでグラウンドに着くと、ちょうど娘の出番だ。
よかった、間に合った。
娘は私を捜しているのか、やたらと周りをきょろきょろしている。
我が子の活躍を心待ちにする他の親達の輪の中に息を切らせて混ぎれこむと、娘はすぐに私を見つけたようだ。
その時、勢いよく鳴り響くスタートの合図。
一斉に駆け出すこどもたち。
だが、私の娘は、その場でぴょんぴょんと跳ねながら、しきりに私に手を振っていた。
慌てて先生が駆け寄っていく。
他の親達はというと、めいめい最新型のデジタルカメラで、我が子の勇姿を収めるのに必死だ。
隣のお父さんの連射速度はどれくらいだろう。夢中で走る息子を目にも止まらぬ速さでデジタルデータに置き換えている。
娘はというと、にっこりと微笑み返す私に、さきほどの二倍くらいの大きさで、まだ手を振っていた。
そろそろ先生に捕まえられてしまう。
私はそっと鞄に手を伸ばし、36年前に造られたマニュアルカメラを掴むと、スタートラインの娘にレンズを向けた。
ファインダーを覗くと、世界に霞がかかっている。オートフォーカスのカメラならここでボタンを一押しすれば、一瞬で彼女にフォーカスできるのだろう。
そんなことをぼんやりと考えながら、私はピントリングを慎重に回した。
娘が私を捜したように、私はこうして彼女を捜しているのだ。
先生がもう一歩で娘を捕獲しようというとき、擦れの目立つ世界一のレンズが、娘の姿をくっきりと捉えた。
レリーズボタンを押して、頭上に指で出来るだけ大きく「OK」のサインを出すと、娘は弾かれたように駆け出した。先生の腕をするりと抜けて。
私はゆっくりとファインダーから目を離した。何枚も撮る必要はない。今の娘は一度きりしか存在しなかったのだから、一枚あればそれで十分だ。今まで何百回と捜し当てた彼女である。失敗などするはずもない。
私はファインダーを通さず、ただ肉眼で、走る娘を見つめていた。
私より遥かに年上のベテランは、レンズキャップを付けられて、少し寂しそうである。
やべー。一眼レフかっこいー。