ゆりゆり日記
ただ知ること
過去にあつめたカケラで出来る絵は
その瞬間瞬間ごと
いつも完璧だということ
そうして明日を未来を生きていく

2005年12月31日(土) オフ

お正月用に
松や南天を買ってきて
花瓶に挿し黒豆を煮た
休みに入ってから
まとまったことはせず
だらだらと少し動いては
お酒を飲んでいる

実家から戻った夏の終わりも
お酒こそ飲まなかったけれど
ひたすら弛緩していたなと思う
誰にも会わず
生産的なことひとつできず
ひたすらスイッチがオフになっていた

そういうとき
怠け者の自分を嫌になるのは
どこかにある他者の眼で
それを無くすのはとても難しい
けれど
今年のわたしは少しだけ違ってきた

どんなにダメダメなときがあっても
やらなきゃいけない時が来れば
全力投球できるのだということ
ただ自分のペースで
楽しいだけで進んでいたものが
いっぱいいっぱいのプレッシャーを
乗り越えて苦しんで進むものに変わった

そうしてそれは
何も課していない時より
遥かに大きい満足感をもたらした
どこにそんな力が眠っていたのか
ゆるゆるの今では夢のようだけれど
きっとこれからもそうやって
到底無理だったはずのことが
少しずつクリアできて行くだろう

だから今は
もう少し遊ぼう
狭間の時間を享受しよう



2005年12月30日(金) ごはんを炊こう

春まで雪が続いても困らないように
お米を思い切って三袋頼んだ
雪が小康状態になり
ご主人の運転で
Mさんがやってきた

いつもいろいろ頂いているので
お返しを用意したのに
手作りの沢庵と
つやつやの黒豆のおまけつき
黒豆はいつもの
小田垣商店方式で煮るのを楽しみに
ごはんを炊く準備にかかった

お米はまだ前回のを
5分づきにしたのが残っていて
クリスマスのプレゼントに友人からもらった
ごはん鍋に4合を用意
これはその名のとおり
ご飯専用に作られたどっしりと重い
蓋が二重になった土鍋なのだ

きっちり30分置いてから
おもむろに火を点け中火に掛ける
説明書にあるとおり
なべ底に火が着くか着かないかに
慎重に加減してしばらく待つ
ふつふつと蓋穴から蒸気が上がったら
今度は弱火で6分間
それで火を止める

時間を計りつつも
お鍋に耳をあてお米の音を聞いたり
くんくんと匂いの変化を確かめる
まだまだ初心者だけど
いつかそういう感触だけで
お米が炊けたらカッコイイ気がして

火を止めてから15分待つ
その間に土鍋全体に行き渡った熱が
最後の仕上げをしてくれる
今日はあえてお焦げが欲しかったので
弱火の時間を気持ち多めにしていた

トラウトサーモンの腹身に
塩しておいたのを焼き
母が作った白菜は味噌汁に
蕪は漬物に
そしてMさんの沢庵
小さな粒のお米はひと回り大きく
オコゲ加減も絶妙に炊き上がった

炊飯器に頼っていたときは
ご飯は当たり前に炊き上がるから
ともすると脇役のようで
おかずを何にするかが大問題だった
でも本当はごはんって
お米を美味しく食べることが
ドカンと中心にあるものなのだ



2005年12月28日(水) こだわりの店

忘年会は冷酒に始まり
お酒や料理そのものは
美味しく頂いたのに
帰ってからどうも気分がモヤって
そのまま寝ることができずに
もう一度飲みなおした

真新しいその店は
店主ひとりで切り盛りする
串揚げがメインの店だった
確かにネタは新鮮だったし
自信を持って提供するものを
一番美味しい状態で
食べて欲しいのも理解できる

けれど
タイミングを見て揚げていると語る割には
しばらく皿が空いていても
そのままの状態が続くし
2本一度に持って来ては
熱いうちに食べろといい
お互いのをあげっこしようとすると
同じ物が出るからと止められる

なんかもう
せっかくリラックスしに行ったのに
店主の視線が気になって
肩が凝って仕方がない
最初のオーダーの時もお酒を頼んだときも
こだわりの片鱗に嫌な予感がしたのだが
結局それは裏切られることはなく
おしゃべりも続いていた10時に
突然代行を呼びましょうかと言われ
追い出されるように店を出たのだった

たぶん
いろいろと陳列されていた
初めて見るお酒は見本に過ぎなく
大人しく指示されるままに串揚げを食べ
さらりと帰っていくような客を
あの店は望んでいたのだろうと
無理やり自分を納得させた

けれどなんだか
その印象は
妙に自信たっぷりだった
あの髪の毛入りイタリアンの
若い店主と妙にだぶって
お客を小さくさせるような
独特の雰囲気があった

所詮井の中の蛙と言い切ってしまおう
タイミングを見るなら
客にそれと気付かれないように
あくまで黒子に徹して欲しい
どんなに美味しいものが作れても
それを生かすも殺すも
コミュニケーションの取り方次第だと思う

適度にそっとしておいてくれて
ワンランク上の家庭的な料理が食べられて
地元の美味しいお酒が飲める
望むのはそれだけのことなのに
なかなか相応しいお店って見つからない
こうなったら新年会で
リベンジと行こうか



2005年12月27日(火) 迎春の準備

昨日のワックス掛けで
一度仕舞った商品を出しながら
今年最後の在庫調べと
お正月に向けてのディスプレイ変え
少しでもおめでたい気分をと
下に敷くための着物地を持って行った

時々ヘルプに入ってもらっている
Hさんの娘さんに来てもらったお陰で
在庫調べはほとんどふたりで進め
Hさんには
こだわりのしつらえをお任せした

ひとり増えるだけで
というより
娘さんの処理能力は抜群で
さくさくと作業ははかどり
最後の集計も少し見直しただけで
ぴったりと合った

到底終わらないと思っていたので
明日も出る予定だったし
最悪計算は年越しもあり得たのに
この展開には心底ほっとした
そしてみんなで商品を並べる余裕もあった

用意した紅絹の色は独特なので
いつもの商品がどう映るか心配だったけれど
Hさんのセンスで
嫌らしくなく素敵におさまり
もうひとつの矢羽模様に松や菊の紅白も
清々しい空間を作っていた

ゆったり並べたのに
商品が多く見えるという反応があり
気分も新しく
お客さんを迎えられる気がした
出だったはずの明日は
急遽忘年会を企画
美味しいお酒を飲めそうだ



2005年12月16日(金) 働くということ

売り場にレジを導入することになり
メーカーの人が3人やってきて
説明をしたいと言った
お客さんはいるし
現物もないのに聞いても解る訳がなく
パンフレットだけ置いて行ってもらった

レジを入れれば
値札を剥がすのと計算の手間が省け
売り場のお客さんに
目配りも利くだろうということらしい
けれど今だって
値札は取ってくれたかどうか
お客さんから念押しされるし
暗算なら財布を出すのを待つ間に
もうひとりを捌ける

しかもその導入案が
誰だか知らないが上の方から出て
言い出した今じゃないと
もう実現しないかもしれないと脅しつき
直接聞いていないから
どんなニュアンスか解らないが
なんだかとっても有難いお話しのようだった

以前朝市でレジを入れたものの
手計算の方が数倍も早いので
結局お蔵入りとなったのが
生々しく思い出される
けれど後の集計の手間を考えると
処理能力は落ちても
やっぱりどこかで導入した方が賢いだろう

実際パンフレットを見ると
きちんと使いこなせたら
どれだけ便利かという優れものなのだ
結果オーライとなることに
前向きに取り組もうと頭を切り換える
そしてちょっと楽しくなり
そしてまた
ふと澱のように溜まったものに気付く

このところこんな事が続いている
上からのお達しのごとく
売り場の状況なんてお構いなしに
圧力を掛けられたこともあり
ちゃぶ台に手を掛けながら
ぐっとこらえることを繰り返す

すぐ熱くなる自分の性格を反省し
これがオトナってもんだろうと
なだめつつ来ている訳なのだが
それが理想の姿かと言うとNOだ
はー
反逆の人にとってこれは非常によくない
解消するいつものパターンとして
後ろ足で砂かけて逃げるっていうのもある

それができたら
どんなにすっきりするだろう
でもどういう状況になっても
子ども達を食べさせて行かなければならない
そんなことをぐるぐる考えつつ
一家の主という立場の
くたびれた親父達に心から同情する

どんなにボヤきながらだって後ろ向きだって
ただ辞めずに働き続ける
そのことがわたしにとっては
なにより難しいかもしれない



2005年12月13日(火) 囲いのない鳥

ふたりで入る予定をしていた売り場
よりによっての大雪で
コウノピアに到着するまで
一時間を要した
いよいよこれからこの地方は
長い長い冬に突入するのだ

バスの予約もなく静かな売り場で
在庫を堂々と整理したり
商品を入れる袋にスタンプを押したり
新しく入荷した素敵なカレンダーの
ディスプレイを工夫したりと
ふたりでいるから気楽に仕事がこなせる

交代で30分ずつお昼の休憩をとろうと
暖かいホールへ行くと
ちょうど田んぼの中の人工巣塔から
コウノトリが一羽飛んで来て
アマチュアカメラマンたちの眼の前をかすめ
公開ケージに舞い降りた

放鳥されたコウノトリは
他の飛べない仲間よりもひと回り大きく見え
羽の色のコントラストもくっきりと美しい
シャーベット状の水の中に口ばしを突っ込み
まるで観客を意識しない仲間の中で
ずうっと首を上げたまま
緊張を持続した面持ちで
しきりにこちらを見ていた

商品を郵送して欲しいとの電話があり
代金の合計と振込み口座の案内をした
協会や館との兼ね合いと
こちらが手一杯なのもあって
積極的に宣伝はしていない通信販売
けれど本当は
どんな遠くへも運ばれて行くべき商品たち

製造業者サイドで
ネット販売しているものもいくつかあるが
心を込めて手作りされた
赤ちゃんを運んでいる小さなコウノトリなんかを
訪れた記念とかではなく
特別の想いとともに必要としている人たちに
届けることができたらいいのだろうけれど

昼すぎ
3羽が出石方向へと飛んで行ったと聞いた
放鳥されたコウノトリは
少しずつ行動範囲を広げ始めている



2005年12月09日(金) 乱舞

今日はラッキーなことがあった
納品の商品を取りに
コウノピアの外の駐車場へ行くと
空がざわついてる気がして思わず見上げた
そこにはコウノトリが4羽
入り乱れて旋回していたのだった

最後まで見届けずに戻ったが
ひょっとしたらもっといたのかもしれない
目撃したお客さんに聞くと
一羽だけが円山川方向へ飛び去ったそうで
きっとそれは野生のコウノトリのはず
放鳥された他のコウノトリは
相変わらず郷公園付近に留まっているのだ

鳴かない鳥なのに
その存在感は圧倒的で
見るものを無条件に感動させてくれる
ぜひ飛んでいるところを見たいと
リピーターのお客さんもいるが
遭遇できるかどうかは本当に運まかせ
さっきまで飛んでいても次の瞬間には
うそみたいに静かな空に戻っている

そんなことや
入り口を入るなり
うわあカワイイと
商品に寄って来る人たちの声に
少しずつ元気をもらう
他の店を廻って来た納品業者は言う
あそこは店員に売る気がまるでない
行く度にダメだとがっかりすると

売れなければ稼げないという状況で
盛り込んできた工夫のあれこれ
日々流されているような今だって
わたし達の売り場は
きっと何かを発していると思いたい
来館者が多いからと言って
濡れ手で粟という訳には行かないのだから

少しでも理解してくれている誰かがいる
そのことがじんわりと心をほぐす
そうしてまたせっせとPOPを書き
新商品の木のコウノトリについて
お客さんに説明をする
もうすぐ新しいカレンダーも届くし
一層ふくらみのある売り場になりそうだ



2005年12月06日(火) いつか来る日

連日夜中まで
締め書類と格闘していたら
すっかり風邪にやられてダウン
売上げの金額はハンパではなく
それに比例するような欠損分を
なるべく自分達で埋めようと
苦労したのだった

とうから在庫を数える締めは
二ヶ月に一度にしてもらっていたのが
毎月数えられないなら
損金は全部売り場サイドで持てと
協会から圧力が掛かった
そう言われる前からずっと
少ない手数料を貯めては
欠損ゼロにしようと努力はしていた

おまけに
どういう訳か数ヶ月前から
集計の結果を毎月5日までに
納品業者に連絡することとなり
今回は日程的に休館日を開けてもらう事もできず
沢山のお客さんで賑わう売り場で
Hさんに販売をしてもらう傍らで
通常の何倍もある在庫数を
全てひとりで数えるよりなかった

市のこうのとり共生推進課から
この10月の売上げが
前年度の6倍の売上げと発表されたとかで
詳しい数字が知りたいと
朝日新聞から問い合わせがあった
それには答えず協会に振ったのだが
ともかく好調な売り場ということで
多方面から取材を受ける機会も増えた

販売業者から
売り場に入りたいという話もあるらしい
資本のある所が
今委託で預かっている分を
全て買い取りにして販売するとしたら
当然同じ数を売っていても
利潤はもっと上がる
この時代に既に売れる場所があると聞けば
どんな業者だって参入したいと思うだろう

売上げが6倍でも
わたし達の収入がそれに比例している訳ではない
まして
日給2〜3千円の状態を4年間凌いで
ようやく辿り付いた今なのだ
そしてその今は
トイレに行くのも食事を摂るのもままならず
書類を家に持って帰り
発注すら家からファックスしている始末

今がマックスだと思ってもう少し頑張ろう
風邪が治ったら
ふたりで売り場に入れる日を増やすから
でもどうしてもと
売り場にしがみつくのはやめよう
そんな話をHさんとした
安定した収入は有難いが
不安定な状態は結局変わらないのだ

いつ完璧に売り場を離れるのか
そのためのわくわく館での展示会であり
自分のもの作りではあるけれど
すぐに定期的な営業でうまく廻っていくほど
甘くはないのもよく解っている
危うい綱渡りのようなこの状況を続けながらも
いつか迷いなく
その時を掴める日が来るだろうと信じている

そしてそれは
捨てたものよりも
もっともっと大きいものを掴むための
新たなスタートの時でもある


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ゆりすこ [MAIL] [吉祥堂]

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