『日々の映像』

2002年12月31日(火) 余   録

 12月3日「イスラエルはもはや戦時下の国家運営の段階」と書いた。パレスチナとイスラエルの武力衝突で死者が2600人以上となっている。この内訳はパレスチナ側の死者1934人、イスラエル側678人。(AP通信から)しかも、イスラエルの死者の約半数は自爆テロの犠牲者だ。

 そして今回、アルカイダがイスラエルの民間航空機にミサイルの攻撃を加えたのである。この波紋は計り知れない。アメリカの航空業界もミサイル回避システムの導入という経済的な負担を求められることになる。

 このアルカイダのミサイル攻撃の犯行声明がインターネットに掲載されたが、その思考にしばし考え込んだ。声明はこうだ。「アルカイダ戦士のネットワークが、4年前、ユダヤ・キリスト教十字軍連合が攻撃を加えた同じ場所に再び戻り、強烈な一撃を与えた」その上で「今回はユダヤ人に対するものだ」としている。

 4年前のアメリカ大使館爆発攻撃を「キリスト教十字連合」と呼んでいる点である。ここでも記述したことがあるが、ヨーロッパのキリスト教文明圏がイスラム文明圏を攻撃したいわゆる十字軍の戦いは、10〜12世紀にかけてのことだ。アルカイダにとっては、今から800年以上前の十字軍の攻撃を未だに根に持っているのだろうか。一部のイスラム教過激派の関係者にとっては、800年の時空も関係ないようだ。少なくとも、50年、100年前の出来事に怨念を持つようでは世界の平和などはあり得ない。どうしたら、この怨念の矢を抜くことが出来るのだろう。アメリカ大統領の「テロとの戦いに勝つ」というだけでは、際限のない殺し合いが続くだけだ。しばらくはこの殺し合いが続くことは避けられない。いったい、いつになったら人類は、「もう殺し合いは止めよう」という結論を導き出すことが出来るのだろう。

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 12月5日に記述した日立の元社員が訴訟したようなケースは、今後も増えていくようだ。企業を訴えた代表的な例は、世界的な発明といわれる青色発光ダイオードである。特許法は従業員の職務発明について、特許権は従業員にありその特許権を会社に譲る場合は相当の対価を受け取ると定めている。しかし、研究者1人と巨大企業という力の関係で発明の対価が冷遇されてきたことは確かである。ノーベル賞を受賞した島津製作所の田中耕一さんの発明への報奨金は1万円であったことは、すっかり有名になった。

 優秀な技術者、研究者をいかに生かし、特許権などの知的財産を企業の利益につなげていくか・・・これは企業の最重要課題だ。研究者に最も働きやすい環境を整えているのは、ホンダでないかとの印象を持っている。

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 13日不眠と酒と題して少々記述した。酒は多少プラスの面もあるが、マイナスの面も数多くある。酒は小さな生命の誕生である妊娠時には、強いマイナスを与える。厚生省は、うつ伏せ寝と喫煙、人工乳が乳幼児突然死症候群(SIDS)の危険因子としている。

 ところが、これ以外に酒も危険因子の1つであるとの発表があった。米国立小児保健発育研究所が「92年〜96年にSIDSで死亡した33人と健康児66人について、妊娠中や出産後の母子の生活を分析した」(5日 朝日)という。
 
 その結果は、妊娠前後の飲酒はSIDSのリスクを6〜8倍に高めるのだ。ここまではおおよそ理解が届くが次の記述に驚いた。「妊娠前3ヵ月に酒を飲んでいて、妊娠後に禁酒した人でもリスクは6.2倍になった」(同)という。素人なりに補足すれば、生命の誕生にとっては酒は1つの毒として作用するのである。

 妊娠がわかって禁酒した人でも子どもの突然死のリスクは酒を飲まなかった人に比べると6.2倍になるというから困ったものだ。妊娠したら子供を産もうとの意志を持っている女性は、酒を飲んだらダメなのである。

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 三条で9歳だった女児を誘拐し、9年余り監禁した事件があった。この加害者である佐藤宣行被告(40)に東京高裁は、懲役14年とした新潟地裁の判決を破棄して、懲役11年を言い渡した。

 減刑の理由は「一審は法定刑を超える量刑を科しており違法」とした。その上で「国民の健全な法感情からして、逮捕監禁罪の法定刑の上限が懲役10年では軽すぎるなら法改定する他ない」としている。

 この逮捕監禁罪の法定刑(10年)を定める時、まさか9年2ヵ月もの監禁があるとは全く想定されていなかったのだ。9年もの間監禁されていた少女(女性)の精神的苦痛は想像を絶する。この量刑が11年の刑であることはいかにも軽いとの印象を持った。

 しかし、佐藤被告が出獄するのは満50歳になってからだ。出獄してもまともに職業に就くことは考えられない。どうして生きていくのだろうか。ただ生きていくだけであれば、社会に出るより監獄の中の方が住み心地は良いように思う。佐藤被告が出獄すると、法律の制裁より厳しい社会的な制裁が待っているように思う。

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 僅かな紙幅であるが、不良債権処理に関することを12月17日と20日に記述した。来年8月までに新設する「産業再生機構」は、大企業の倒産の影響を最小限にしようとの側面があるが、膨大な融資をした主力行に対しては、かなり厳しくその責任を追及する構えとなっている。見方によっては、行政という権力者側が大手行に懲罰的な責任追及を行なおうとしているように映る。

 その第1が20日に記述したように、3年後最終段階で年間のキャシュフローの10倍以上の借金のある債権は買い取らない。お前達の責任で処理せよ!というものだ。

 次に買い取る対象は、銀行が金利減免などをしている要管理債券があるが、「この内機構が買い取るのは非メイン銀行が抱える債権だけ」(16日 日経)であるという。

 1兆円余りの負債を抱えている企業のメイン行の貸付は、3行余りで5000億円前後のことが多い。非メイン行が融資している5000億円は買い取るが、メイン行の融資は買い取りの対象外なのだ。

 大企業の倒産の影響を軽くするため、1兆円を超える債務企業の借入をメイン行と産業再生機構にますは集約しようとしている。谷垣禎一産業再生担当相は、機構が銀行から不振企業の債権を買い取る資金枠について「10兆円を確保した」(同)という。

 行政がこれだけ具体的に関与することがよいことなのかどうかは少々の疑問が残る。少なくとも、機構が買い取る債務の企業は、不良企業としての烙印が押されるので、このハンデーを抱えて生き残ることは難しいと思う。

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 今年も今日で終わりだ。この1年間で最も大きな出来事は、拉致被害者5人の帰国だ。ここでは1年を概観する意味で、ヤフーが取り上げた国内10大ニュースをメモしよう。

 1、 初の日朝首脳会談、拉致被害者5人が帰国
 2、 日韓共催ワールド・カップ、日本決勝トーナメント進出
 3、 初のノーベル賞ダブル受賞の快挙
 4、 牛肉偽装事件、食品不正表示も横行
 5、 疑惑絡みで4議員が辞職
 6、 鈴木宗男衆院議員を逮捕
 7、 原発トラブル隠しで運転停止広がる
 8、 総合デフレ対策決定、株安バブル後最安値
 9、 倒産相次ぐ、失業率5.5%で最悪水準
10、 住民基本台帳ネットワーク稼動

 この10大ニュースの中で、来年も引き続き大きなニュースとなるのは、北朝鮮の問題であろう。脅しに屈する米国ではない。米の空母が日本海に集結する事態になるかも知れない。

2002年12月30日(月) 保守新党14人で結成

 鳩山前民主党代表の新党構想は白けたものだった。鳩山氏が辞任に追い込まれ、菅氏が再び代表に返り咲き、これで一件落着かと思っていたら、熊谷弘前副代表らの離党騒ぎが始まった。そうでなくとも、民主党は支持率が低下しているのに今回の離党騒ぎは大きなマイナスに働くだろう。

 25日保守党議員九人と民主党を離党した5人による保守新党が結成された。その代表に民主党の副代表でもあった熊谷弘氏が就任したことにかなりの違和感を持った。

 同氏は民主党の論客として、公明・保守を徹底的に批判してきたのである。保守党については「入閣だけが目的の悲しい政党」(26日 朝日)と攻撃していたのである。その悲しい政党と攻撃して来た保守党の皆さんと保守新党を作りその代表に就任するというから、通常の理解を超える行動のように思う。

 更に、ガッカリしたのは、与党攻撃を重ねて来たことについて、与党三党首会議で「愛国の精神で言ったことで、水に流して欲しい。心からお詫びを申し上げたい」(同)と謝罪したという。この保守新党の動きを国民の大半は冷ややかに見ているのではないだろうか。民主党内では離党予備軍がいるようだが、その行動は選挙の時まで待つのが常識だと思う

2002年12月29日(日) 銀行の貸しはがし

 今月に入って、銀行の動向に関する記述が4回目となるので少々戸惑ったが、貸しはがしの実態を少々メモ。
 
 25日の読売のマネー教室で「貸し渋り・貸しはがしに苦しむ中小企業」というゼミが組まれていた。何しろ、2000年末比で35兆円も貸付残高が減少したのである。これが大企業を含めない中小企業向けの融資の実態で一般的には貸しはがしと理解される。

 みずほファイナンシャルグループは「02年上期だけで5兆円余り減少している」(25日 毎日)として、金融庁は業務改善命令の検討に入ったという。

銀行は自己資本規制をクリアーして行くには、分母である貸付債券を減少させなければならないのだ。この銀行の動きで、倒産、廃業に追い込まれる企業が出ているのが現実なのだ。


2002年12月27日(金) 恫喝まがいの瀬戸際外交

 北朝鮮が苦し紛れの賭けに出て来たようだ。賭けと見るのは西側の判断で、彼ら北朝鮮にとっては、自分達の思考基準の終着点なのかもしれない。 

 北朝鮮が94年の米朝枠組み合意で凍結が定められていた核施設の封印の大半を一方的に除去すると共に、監視カメラを阻止する措置に出たことが明らかになった。

 この凍結解除の理由は、米国が年間50万トンの重油を提供する義務を放棄したからだといっている。

 北朝鮮にミサイルと大量破壊兵器がなければ、世界有数の最貧国の1つでしかない。「核も生物(兵器)もある」と胸を張って、何を得たいというのだろう。

 北朝鮮当局の思考も理解する意味で、同国の労働新聞の論評の一部を引用しよう。「米国が核兵器を使用する権利を持っているなら、我々にもそれに対応する権利がある。・・・対イラク戦争は新たな朝鮮戦争のための予備戦争、試験戦争になり得る。・・・米国が朝鮮半島で核戦争を起こすなら、彼ら自身がその炎で焼け死ぬだろう」(21日 毎日から)と強調している。

 「彼ら自身がその炎で・・・」とは戦争が始まれば、核でアメリカを攻撃するという意思の表示なのか。こんな恫喝まがいの瀬戸際外交が成功するとでも思っているのだろうか。余りに「理屈の通らぬ愚行の積み重ね」(28日 毎日社説)であるといえる。

2002年12月26日(木) 少年の検挙者実に13万人

 日本の社会は、経済を含めて毎年悪くなっている。経済の面で言えば、国の借金の激増である。人心の面で言えば、過去最悪となっている刑法犯の件数(11月現在で昨年比9万9718件増の260万8584件)である。その他の事例を挙げればきりがないほどだ。ここでは刑法犯のボリュームを今年3回目の記述となるが、改めて目を通しておきたい。

 ともかく、前記したとおり11ヶ月で260万件もの刑法犯の認知件数がある。1ヵ月で217000件、1日で7200件もの事件が起きる。この事件の8割(208万件)は窃盗犯であるが、この内30万件が侵入強盗なのである。

 この犯罪急増の要因は、「(1)少年非行(2)外国人犯罪(3)暴力団の暗躍」(20日 毎日)であるという。ここでは心が痛む少年犯罪について少々記述したい。

 今年度の刑法犯で検挙された人数は32万0834人でこの内少年(14歳以上20歳未満)の検挙数は、実に13万人を超えているのだ。特に2ヵ月前にも記述したが、路上強盗の検挙者の約7割が少年なのだ。

 この14歳から20歳未満の少年で、1人で暮らしている人はほとんどいない。すなわち、13万件を超える家庭で少年犯罪者を出している。この現実は深刻かつ重く受け止めなければならない事実だ。

 このような少年犯罪の激増は、深刻な1つの結果である。結果がある以上、家庭を含む社会のいたる所で原因が潜んでいることになる。その中の1部の断面を見ると犯罪者の多くが無職なのである。

職に就けない若者が悪いのか、狭い精神的なキャパシティーしか教えられなかった大人社会が悪いのかなかなか難しい問題だ。

 かなり古くから指摘されている「753現象」に対しても何ら改善の兆候も見られない。

ここでは高卒を例に上げれば就職しても、3年以内に5割が離職してしまう。このような若者の就業環境の根本的な改善が必要なのである。しかし、現実は職場そのものが生存競争の中にある。

 企業の多くは、若者を育てている暇がないのである。誰が1割を超える無業者青少年をリードするのだろう。今年になって検挙された13万人の少年は、正常な社会人になる動機が見つかるだろうか。          

2002年12月25日(水) 被害を受けた受刑者はどこへ行けばよいの

 昨日闇金融の被害者はどこへ行けばよいのだろうとの趣旨を書いた。被害を与える相手が民間人であるので警察などの官に飛び込めばなんとかなるだろう。それでは、刑務所で暴力などの人権侵害を受けた場合はどこに行けばよいのだろう。

 私の知る範囲では、このような場合の官の窓口はない。出所後経済的に余裕のある人が弁護士事務所へ行くことになる。98〜02年の5年間に刑務所や拘置所の処遇に関連して人権救済の申し立てがあったのは、「825件」(10日 毎日)もあったという。

 各弁護士会は、この内調査のうえ99件の警告書、勧告書、要望書を刑務所・拘置所宛に送付しただけなのだ。日弁連は「刑務所や拘置所は、弁護士会の調査に非協力的なことが多く、中で何が起きているのか十分把握出来ない。」(同)と説明している。もとより、日弁連に暴力の内容の把握責任などはない。

 前月書いた名古屋刑務所のような暴力事件は他にもある。高松刑務所でも主席矯正処遇官ら20人が受刑者に重傷を負わせたとして告訴されている。背景として理解する必要があるのは、弁護士に依頼して、告訴状を出せるだけの経済的な余裕のある人はまれなのである。
    

2002年12月24日(火) 闇金融は3000業者に及ぶ

 法律はあっても悪は社会のいたるところに根を張っている。その1つが闇金融業者だ。「法定金利をはるかに超える高金利で貸付する闇金融業者の増加」(20日 毎日)に歩調を合わせるように家出人が増加しているのである。「取立てが怖くて自宅に帰れない」という闇金融の被害者が急増している。

 このような闇金融からお金を借りる人も責められる面もあるが、法定を大幅に超える金利を巻き上げようとする行為は許されない。

 問題はこのような被害に遭っている人がどこにいけばよいかである。19日の毎日で、全国闇金融対策会議(代表幹事・宇都宮弁護士)が闇金融業者1800業者を告発したことが報じられていた。この告発は最終的に3100業者に及ぶ見通しであるという。

 この詳細の報道がないので短絡的なことは書けないが、少々の矛盾を感じた。その1つに、闇金融の被害者は、弁護士事務所へ行くしかないのだろうか。法律の番人である警察は、このような正式な告発がないと捜査しないのだろうか。

 高金利の貸金業規制法の違反内容は単純なものだ。法定金利を超える金利の請求又は電話での恫喝のテープがあればよい。警察または行政のメールで被害の届けが出来るようにしたらどうかと思う。何らかの対策で悪が繁殖しないようにしなければならない。

2002年12月23日(月) 抗がん剤の副作用で100人以上が死亡

 肺がんになって病院に入院する。ここで投与された薬による副作用で死亡する。しかも、僅か3ヵ月で同じ薬の副作用で100人以上の死者が出ている。

 これだけの情報化社会で信じられないことだ。これほどの副作用死があるのは「(厚生省は)医療現場で使用上の注意が徹底されていない可能性が高いと判断」(19日 読売)したというからお寒い話だ。

 少し詳しく書くと次のとおりだ。今年7月、アストラゼネ社の抗がん剤「イレッサ」が承諾された。この薬の承認は世界に先駆けてのスピード承認であった。

 このイレッサの投薬を受けた人は、この僅かの期間で「約4000の医療機関で1万9000人余りに投与された」(同)のだ。その結果として「10月15日で13人、同26日時点で39人、今月4日時点で81人と次第に増加。19日までに100人を上っていることが分かった。」(同)という。

 この薬の副作用(間質性肺炎)は「投与後2週間以内に発生する」と言うからこの副作用情報が徹底されていれば、これほどの死亡者を出さなくて済むと思う。

 これだけの事態が起こっていながら厚生省のとるべき手段は「使用条件に対応出来ない医療機関に販売しないよう指導する」というからこれもお寒い話だ。(加筆・23日現在の死者は124人)

2002年12月22日(日) 年金の引き下げ 

 政府の来年度の予算が出た。税収の大幅な落ち込みから、来年度は予算(81兆7800億円)の44.6%(36兆400億円)も国債に依頼する内容になっている。

 国の財政状況と社会全体の流れの中で、年金までも減額されることになった。引き下げ幅は0.9〜1.0%である。厚生年金の標準モデル(40年加入)の人で2140円(年間25680円)国民年金の標準モデルで1200円(同14400円)の減額となる。

 公的年金は、老後の生活を支える重要な糧である。この年金を削られることに不満を抱く高齢者も多いことだろう。しかし、現役世代の収入も減少しているのだから、一定額の減少は止むを得ないのだろう。ただ、このような支給額の減と医療費などの負担額の増で国民全体の生活水準は下げざるを得ない。

 国の借金の増加は、じわじわと国民負担となって来る。来年度の予算案では、国債の発行が前記したとおり36兆4400億円に対して、返済にあてる国債費予算が12兆円余りなので国債の純増は22兆円となる。この22兆円はどのような重みなのか。

 国債を発行しないで100%消費税で賄うとしたら現在の5%を約13%にしなければならない。消費税は時間の問題で上げざるを得ないのだ。

2002年12月21日(土) 銀行株の下落は底なしか

 大手行を取り巻く環境が厳しさを増している。17日と20日の不良債権に関する記述は銀行の問題なのだ。これら不良債権の処理に伴う金融システムの不安から銀行株の急落に歯止めがかからない。この銀行株の下落は、おおよそ次のパターンである。

 銀行株が急落すると、銀行から融資を受けている過剰債務企業の株価が下落する。それがまた銀行株の下落につながるという「負の連鎖」(18日 読売)に陥っているのである。深刻なのは、大手行そのものが、この負の連鎖を断ち切る方針も対策も全く打ち出せないことだろう。

 銀行と企業の株価の関連を少々引用してみよう。「UFJ銀行が大口株主となっている日商岩井は同四円安の35円、トーメンが同20円安の27円、ニチメンが同8円安の57円」(18日 読売)と軒並み今年の最安値を更新している。「みずほが大口株主の太平洋セメントも15円安の124円と今年の最安値となった。」(同)などなどである。

 太平洋セメントは、今期は増益の中間決算を発表しているのに同社の株はここ1週間で20%も急落しているので、みずほとの関連で売り込まれているとの見方だ。

 いったい、大手行の株価はどこまで下落するのだろう。9月末と比べてUFJが69%、みずほが58%も下落している。深刻なのはこの2行の株価である。額面50円換算ではみずほが119円、UFJが99円というありさまだ。

 他の大手行2行(三菱東京・三井住友)も下落している。両行 共に9月末比で24%〜48%も下落して、今年の最安値を記録している。その昔株のイロハを私に教えてくれた人がいた。「300円以下の株は担保にならない。200円以下の株は倒産予備軍、100円以下の株は時間の問題」などであった。

2002年12月20日(金) 過剰債務企業処理の骨組み

 産業再生機構の内容が徐々に明らかになって来ている。「政府は15日、新設する『産業再生機構』が、銀行から買い取った過剰債務企業向け債権を保有する期間を原則3年以内とし、その間に再建が難航した企業などには、法的整理も実施する方針を固めた」(16日 読売)という。

 「企業・産業再生に関する基本指針」の原案の中で必要に応じて民事再生法や会社更生法も利用すると明記したのだ。この産業再生機構が、無差別に過剰債務企業の債務を銀行から買い取る訳ではない。前記の指針案では、3年の再建計画の終了時点での基準値を設けた。ここでは、財務健全化基準である次の2点のみを取り上げてみよう。

1   経常利益ベースでの黒字化・・・・ここは補足の必要はない。
2   有利子負債の残高を営業キャッシュフローの10倍以内に収める。

最も厳しいのが有利子負債をキャッシュフローの10倍以内に出来るという見通しだ。この計画を立てられない企業の債務は買い取らない!というものだ。年間のキャシュフロー(主に利益)の20倍も30倍も債務のある企業は、現在の取引銀行が処理せよとの指針なのだ。プレジデントに負債が30〜40倍もある企業名が載っていた。死を覚悟せざるを得ない企業が続出する雲行きだ。

2002年12月19日(木) 料亭・スーパーにとっては厳しい判決 

PL法では刺身も「製造物」であるとの判決が出た。「千葉県勝浦市の料亭で出された刺身などで食中毒を起こした3家族八人が、製造物責任法(PL法)に基づいて経営者に約3800万円の損害賠償を求めた訴訟で、東京地裁は13日、約1200万円の支払いを命じた」(13日 毎日)という。

 なにしろ、料理についてPL法を適用した判決は初めてである。しかし、食中毒の内容が分からないので論評は出来ないが、被害者8人に対して1200万円を払えという判決はあまりにも高額との印象を受けた。

 判決は食材に手を加えて客に出す行為は「加工」に当たり、毒素が含まれていれば(PL法による)欠陥品という判断を示している。今後スーパーなどで販売される刺身も当然同じ扱いとなるので、これらの商品を扱う業者には、高いハードルが示されたことになる。

 つい3ヵ月ほど前、中国の加工品の害で死亡・入院という騒ぎがあった。これらの被害は法的にどのような手段を取ったのだろう。最も伝え聞くところによると、これらを扱っていた会社の多くが消えてしまった(倒産)との話もある。よって、訴えようにも訴える相手がいないのかも知れない。

2002年12月18日(水) 企業価値を高めた経営者

 日経のウィークエンド版に、企業価値を失った経営者が出ていた。この調査に参加した機関投資家は顧問契約資産2500億円以上の投資顧問及び投資信託資産500億円以上の43社だ。よって、ここでの評価は、ほぼ正しいものと理解される。

 企業価値を高めたナンバーワンは、カルロス・ゴーン氏だがここで補足するまでもない。あまりイメージになかったのは、ブラザー工業の安井社長だ。「構造不況のミシン事業から成長分野のファックス・プリンター事業への業態転換を短期間で成功させた」とゴーン氏にひけをとらない支持が集っている。ブラザー工業は、今期は最高益になるようで、企業としての進むべき方向が明確だという評価である。

 実は書きたかったのは次のテーマで、企業価値を失った経営者として、機関投資家の得票が最も多かったのは富士通の秋草社長だ。「総合電気では唯一、2期連続で今期も巨額の最終赤字を計上する見通しだ。

 『リストラが中途半端』『経営判断が後手に回っている』などの意見が目立つ」企業価値を失った経営者の1位に選ばれたのだから進退を考える段階のように思う。株価も02年7月ごろの3分の1だ。

 次にNTTドコモの立川社長が、海外投資で巨額の損失を計上して企業価値を失った経営者として名前を連ねている。日本の大企業は銀行を含めて「〇〇で重大な失敗をしたので責任をとって辞任する」という話は聞いたことがない。



2002年12月17日(火) 不良債権処理の最終章

 大手銀行の実質国有化を視野に入れた金融再生プログラムが動き出すようだ。これらのテーマに関する報道が実に多い。毎日新聞系の雑誌「エコノミスト」では、次の項目で生々しい情報を並べ立てている。

 「四メガバンク、始まった国有化へのカウントダウン」「魔のフライデーナイト」「国有化第1号はどこ」(11月30日)などである。この記事によると、国有化銀行の第1号と目されているのが、みずほファイナンシャルグループであるとのこと。

 竹中金融相は「公的資金の投入に至れば、当然頭取は辞めていただく」(11日 朝日)と衆院財務金融委員会で答弁した。すなわち、経営トップの責任を追及する方針を示した形だ。

 なにはともあれ、大手行の抱える不良債権があまりにも膨大なのだ。「みずほホールディングスは4日、最大5兆円の不良債権を新会社への分離などを柱とするグループ内の再編成策を発表した」(4日 日経)

 素人が加筆しても意味のないことであるが、破綻が懸念される債権のみを5兆円も新会社に分離するメリットがどこにあるのだろう。分離される企業は、不良会社の烙印を捺されまさに生きるか死ぬかの分かれ目になる。いろいろな問題があるものの不良債権処理の最終章が始まったと見るべきなのだろう。

2002年12月16日(月) サービス残業81億円 

10月30日に、660万人もの人たちが、1ヶ月80時間を超える残業をしていることを書いた。一方では、失業者が溢れているのに、一方ではフルタイムで働く勤労者の21%(660万人)もの人たちが、過労死の認定をもらえる水準の残業をしている。雇用のミスマッチの説明だけでは済まされない問題が横たわっているように思う。

 残業をしても残業手当を法定どうりにもらえない勤労者がかなりいることは、しばしは話題に乗っていたが、この度厚生労働省のかなり具体的な行政指導の発表があった。「厚生労働省は13日、昨年4月から今年9月までの間に、労働基準法に違反して社員にサービス残業をさせていた全国の企業613社に対し、不払い残業代を支払うよう行政指導をした」(14日 読売)と発表した。

 この613社でサービス残業をさせられていた社員は計4万4000人で、行政指導の後に支払われた残業代は81億3800万円だった。不払いの最高額は、関西の卸売り会社の12億8800万円(従業員1人当たり64万円)

 このようなサービス残業という違法行為を行なう企業の実態については法律順守の立場から3ヵ月に1回くらいの単位で公表すべきではないだろうか。


2002年12月15日(日) サダム大統領の考え方

 人は1つの考え方を持って行動する。ただし、その考え方、行動が社会で受け入れられるかは別だ。11月末、群馬で内縁の妻(36)が、掃除や食事がうまく出来ない「罰」として食事を与えない事件が起こった。

 この食事を与えない行為に参画したのは、被害者の内縁の夫(37)とその姉(39)母(65)の3人だった。満足な家事が出来ないものは食事をするな!という考え方なのである。

 内縁の妻である長谷川三根子さんは、治療が必要なほどやせ細っていった。この間2度逃げ出そうとしたが幸夫被告らに見付かり連れ戻されている。3人は、死も止むを得ないとして食事を与えることなく放置して餓死させる。

 この行為を社会と国の法律が許すはずがない。この3人は懲役12年と8年の刑になった。

 本題に入る。イラクのフセイン大統領が、1990年のクウェート侵攻に関して、同国民に謝罪した。しかし、その内容を読むと、はたして隣国クウェート及び国際社会が、このフセインの考え方、行動を受け入れるかは疑問だ。疑問どころかほとんど不可能だ。

 クウェートに侵攻した理由について「クウェートが当時1バレル21ドルだった原油価格を7ドルに引き下げようとしていたと批判、それが侵攻の理由だった」(8日 朝日)と説明している。

 侵攻の原因はお前達にあったのだとの説明である。こんなものの考え方を国際社会、隣国クウェートが認めるわけがない。クウェートとサウジは、90年のイラクの侵攻以来、国の安全保障をアメリカに依存している。

 しかし、フセイン大統領から見ると、アメリカの占領軍と見えるようだ。フセインの一番危険な考え方は、書簡の次のくだりでないか。「クウェートの支配者が米国などクウェートを占領した外国軍と結託しイラク反体制派とも接触していると非難。『英国、米国、イスラエル』の傘から出て『イラクのイスラム戦士と共に異教徒の占領軍に対するジハード(聖戦)』に参加するよう呼びかけた」(8日 産経)という。

 ここで補足するまでもないが、異教徒の占領軍に対するジハードという言葉は10世紀〜12世紀のヨーロッパの十字軍にたいしていうのであれば、言葉と時代が符合する。

 しかし、信教の自由が定着しているこの21世紀で、異教徒の占領軍に対するジハードを隣国クウェートの国民に呼びかけているのだ。フセインの考え方の背景はテロ集団のアルカイダと同じとの印象を受ける。

 異教徒と戦うという思考のベースが最も危険なように思う。このフセインの書簡に対して、クウェートの国会議員は「サダム・フセインとウサマ・ビンラディンに何の違いもない」(同)と述べている。このフセインの考え方がどのような結果をもたらすであろう。壊滅的な結果を招き寄せるのではないだろうか。

2002年12月14日(土) 民主党代表選代表に菅直人氏を選出 

民主党の鳩山氏の辞任が決まってから、同氏に対する辛らつな批判が多く報道されていた。「これほど哀れな新党構想と党首の辞任は見たことがない」などである。

 民主党と自由党との新党構想が浮かび、そしてしぼんでしまった。これを主導したのが鳩山氏というから「鳩山氏は、戦後最低最悪の政党党首だった。判断も出来ず、常に決断を誤る」(プレジデントから)と批判されても仕方がないだろう。

 民主10日夜両議院総会を開き、菅直人前幹事長を後継代表に選出した。菅氏が104票、岡田氏が79票であった。「菅氏が大差で勝利した背景には、党内から支持率の高い小泉首相に対抗できる選挙の顔としての役割が求められたことが大きい。

 菅氏が事前に幹事長に岡田氏を起用することを明言したことも保守系議員や若手議員の支持を集めた」(10日朝日から)疑問に思うことは、この代表選に当たってこれと言った政策論争がほとんど聞こえてこないことだ。

 もっとも民主党が自民党と政策的にどこがどう違うのかも国民ははっきりと分からない。これが衆参で183人も抱える民主党の支持率が8〜4%になる最大の原因のように思う。菅党首の新たな船出も、保守系議員の離脱の動きがあり、支持率上昇は難しい。

2002年12月13日(金) 不眠と酒(あまり良くない習慣)

 今年3月フランスの製薬会社が、大規模な国際睡眠疫学調査を行なった。調査は日本やドイツなど10カ国で、調査した人数は3万5000人。

 睡眠に悩みを訴えている人は全体で25%、日本人は21%だったというから、各国の大衆もさまざまなストレスで不眠を訴えている人は多いのだ。

 その対策として、日本以外の欧州などでは「医師に相談する」が約50%も占めているのに、日本は最下位の8%だった。 

 反面、不眠に悩んで寝る前に酒を飲む人は、日本人が一番多く30%という結果である。この解析に参加した国立・神経センター精神保健研究所の内山部長は「寝酒は一時的な効果があっても夜中に目が覚め、習慣になりやすいので止めた方がよい。・・・医師に相談して、より安全な睡眠薬を使うのが望ましい」(3日 産経)とアドバイスする。

 私は出張の時に、睡眠薬を利用した時期があった。医師の説明は、ビールコップ1杯より眠剤を飲んだ方がマイナス面が少ないといっていた。

 今から10年以上前まで、寝る前に少々のアルコールを飲む習慣があった。この寝酒は肥満対策でその後止めた。悪い習慣もその気になれば変えられるものである。タバコを止めて3ヵ月になるが、これもそう苦労することなく止めることが出来た。

2002年12月12日(木) 女性医師、殺人容疑で逮捕

 共産党系の民医連に所属する川崎医療生活共同組合・川崎共同病院のことが連日のように報道されている。この発端は、今月四日、殺人容疑で元主治医の須田セツ子容疑者を逮捕したことに始まる。

 調べによると須田容疑者は、98年11月気管支喘息で昏睡状態だった男性患者に対し、殺意を持ち、自発呼吸を確保する気管支内のチューブを抜いた上、鎮静剤を投与。さらに、筋弛緩剤を投与して死亡させた疑いが持たれている。

 この一連の行為について、「患者の家族の希望を受けての医療行為」(4日 毎日)と主張しているが、患者の家族は「患者を死なせて欲しいと頼んだことはない」と証言している。

 よって、神奈川県警は、抜き管から筋弛緩剤投与に至る須田容疑者の一連の行為を医療とは異質の殺人行為と結論付けた。

 98年11月のことがなぜ今ごろ明らかになったのか「川崎共同病院は事件発生当時、医師に注意しただけで隠していた。内部告発でようやく調査をし、明らかにしたのは今年4月である」(5日 毎日社説)とあるように、隠されていたのだ。

 医師の独善的な対応とこれを認めて来た川崎病院の体質が厳しく問われることになった。どうして、1人の医師がこれほどの暴走をするのだろう。

2002年12月11日(水) 道路公団どうなるの

 一度出来あがったものを改革するのは容易なことではない。約40兆円の借金をして、政府が定めた道路を建設して来た道路公団、そこには関連ファミリー企業約400社を抱える巨大な利権集団もある。道路公団が批判される部分もあろうが所詮は政治が決めて作り上げてきたものである。

 この道路公団をどうするのか・・・政府の命により、7人の識者による「道路関係四公団民営化推進委員会」の協議が続けられてきた。しかし、最終の段階で道路建設の在り方をめぐって意見が2対5に分かれて紛糾、今井委員長辞任する事態になった。そして、道路公団に歯止めを求める慎重派5人の案が最終報告となった。

 最終段階になってからは、毎日のようにテレビで取り上げられたことも情報公開という意味では良かったと思う。

 国と地方自治体で700兆円余りの借金があって首が回らない。道路四公団も40兆円もの借金があって首が回らない。このような状況下でなおも積極的に高速道路を推進しようとする政治家の思考が分からない。

 道路が出来て、企業を誘致出来る時代はほぼ完全に終わっている。道路を作ることが政治だと思っているのだろうか。政治家とは何に取り組むべきなのか・・・。この原点の議論をしてもらいたいものだ。

2002年12月10日(火) 最も勇敢な挑戦者

 10月上旬に田中さんのノーベル賞の受賞以来、同氏の無欲のさわやかさがほぼ連日のように報道されて来た。ノーベル賞の受賞に先立って、研究の仲間4人と一諸に記者会見するなど、仲間に対する配慮がすばらしい。

 田中さんは、8日ストックホルム大学で受賞講演に臨んだ。「英語で書かれた原稿を手に時折、客席の元同僚らに視線を投げながら、45分の講演をこなした。」(9日 毎日)という。

 驚いたのは、この記念講演で4人の共同研究者の名前を何度も挙げながら具体的に説明したと言う。何という爽やかさであろう。田中さんを中心に仲間5人の絆は固く結ばれ、これからも大きな研究成果を上げていくことだろう。

 記念講演を終えての記者会見がテレビで放映されていた。この45分間の講演の練習を20回以上もしたと、田中さんらしい謙虚さで語っていた。しかし、この記念講演の一部の報道を見ると研究者として苦闘した力強さが感じられた。

 この講演のほんの一部を引用したい。「大学で化学を専攻しなかった私が化学賞を受ける。私は受賞者の中で最も勇敢な挑戦者であることは間違いない」勇敢とは勇気があり、ひるまずに進ことだ。勇敢な挑戦者・・・これ以上力強い言葉はないだろう。

2002年12月09日(月) 詐欺を職業としている人

 1997年1月1日からこの日々の映像を書き始めて満6年になる。この間で起った大型の詐欺事件は左記のとおりで、そのほとんどを記述してきた。八葉グループの巨額詐欺事件は沖縄がその舞台の中心であり、強い関心を持っていなかった。

 たまたま、インターネットで、琉球新報の「破綻したマルチ革命・八葉物流巨額詐欺事件」上・中・下を読んで、この詐欺事件の凄まじい悲劇の広がりを理解した。

 一番驚いたことは、八葉の被害に会った人達を相手に「八葉の被害を取り返せます」といって、複数のマルチ商法組織が「八葉被害者の救済」(毎日から)と称して会員募集キャンペーンを行なっている。被害を受けた人達を救済すると言って、またマルチの会員に入れようとする・・・このように詐欺を職業としている人はどんな顔をしているのだろう。

97年  オレンジ共済組合     85億円   
97年  経済革命倶楽部     350億円  
98年  ココ山岡宝飾店      420億円   
00年  法の華三法業       960億円   
01年  大和都市管財       100億円   
02年  ジー・オーグループ    320億円   
02年  八葉グループ       1549億円   

2002年12月08日(日) 拉致に関する朝鮮外務省

 拉致問題の日本の世論と北朝鮮当局との間には、埋め難い「ミゾ」の深さがある。拉致問題に関連した日本の国内世論に対して「我々との問題解決ではなく反対に外国勢力のそそのかしの下で、我々との対決を求める不順勢力の行為としか見ることが出来ない」と主張している。日本人の拉致帰国者5人に対する同情の念などは、全く理解が届かないようだ。

 同スポークスマンは、日本の過去の問題について「数百万人に達する強制連行、日本軍の『慰安婦』、文化財や資源の無制限の略奪行為」などを挙げ「過去に犯した国家犯罪について真相の公開や補償をしないまま、何人かの拉致被害者問題にしがみついている」(11月16日 毎日)と批判しているのだ。

 確かに過去には、国家犯罪と言われるものもあった。ただ、敗戦によって、当時の指導者及び軍人900余名は、戦勝国の裁判によって絞首刑となった。すなわち戦前の国際法に照らしての違法行為は、形式的に清算されているのだ。この日本の戦前の指導者が行なった行為を北朝鮮が今の時点わめき立てても北朝鮮にとってプラスのことはないと思う。

 どう考えても、相手国の過去の非だけを叩こうとする北朝鮮の思考・・・帰するところは自国に大きなマイナスと働くと思う。

 北朝鮮の機関紙「民主朝鮮」は、日朝関係の論評で、次のように指摘している。「本当の拉致犯は日本だ。拉致問題では歴史的に日本は加害者であり、朝鮮は被害者である」とし、「豊臣秀吉による文禄・慶長の役や植民地支配時代の強制連行や従軍慰安婦の問題を指摘『日本は久しい前から多くの朝鮮人を拉致、強制連行した歴史に類例のない最大、最悪の拉致国である』と強調した」(12月3日 産経)北朝鮮のいう植民地支配とは、今から約90年前から60年前のことをいっている。

 北朝鮮当局は、日本を指して「最悪の拉致国」というのであれば、150年ほど前のアメリカの奴隷船はどうだろう。人間を家畜同然に扱い、しかも、人間を売買していたのだ。その規模からいったら、アメリカが歴史に類例のない拉致国になる。

 イギリスはどうだろう。わずか60年前までインドや他の多くの国を植民地として支配していた。インドが声を大にしてイギリスを批判しているだろうか。90年、150年前のことを非難すること自体が時の流れを無視した言論といわねばならない。

 更に、400年以上前の豊臣秀吉による文禄・慶長の役などを持ち出して「日本は久しい前から朝鮮人を拉致した歴史に類例のない最大、最悪の拉致国である」と強調している。北朝鮮の日本に対するイメージがこの程度であれば、国交を結ぶ必要もないのではないか。

2002年12月07日(土) 女性記者に死刑の宗教令

 21世紀の時代になっても、国と所によっては中世の教えが支配している。ナイジェリアの女性記者に州政府当局が「殺害をイスラム教徒に命じる宗教令を出した」(11月27日 朝日)という。背景は11月25日に書いたイランの改革派学者の死刑採決に類似している。

 記者が「ムハマンド(マホメット)が生きていたら参加者を妻に選んでいただろう」との記事を書いた。この記事に反対するイスラム教徒の暴動が起ってしまったのだ。

 よって、この暴動の発端となった女性記者に対して、州政府はムハマドを冒涜したとして「イスラム教徒に殺害せよ」との宗教令を出したのだ。

 これに対して、ナイジェリアのイスラム教最高機関は、州政府の宗教令を「無視されるべきものだ」との声明しかないのである。記者は国外に避難したが、再び母国へ戻ることは不可能であろう。

 イスラム国家は、宗教の教えがそのまま生活の規則であり、国の法律でもあるのだ。今回の死刑の宗教令もコーランに「ムハマドを侮辱したものは死刑」と書いてあるとのこと。

 最も恐ろしい教育はイスラム国家をはばむ敵とは徹底的に戦うことを訴えた「聖戦(ジハード)」だろう。これからどれだけのテロがあるか分からない。しかし、彼らにとっては、ジハードなのだ

2002年12月06日(金) 道路公団天下り1719人

 先月道路公団の幹部に、ファミリー企業への入札の配慮で逮捕者が出ていた。これだけ厳しい社会環境の中で、たいした努力もしないで甘い仕事を受けている会社が多くある訳で、日本国内では別天地があると思った。

 道路公団民営化推進委員会は、連日激しい議論を重ねている。この推進委員会の調査データーが11月30日に報告をされていた。「310社に天下った公団OBの総数は1719人で、この内733人が役員に就任していた」というからびっくりだ。

 ただし、このファミリー企業群は全部ではないのだ。推進委員会は「回答しなかった企業177社の名前を公開した」というから、道路公団と関係のあるファミリー企業は400社余りと推察出来る。

 この企業の中で、公団から受注が売上の5割を超えた企業は187社で、企業の公団OBの受け入れ人数は1291人(1社平均6.9人)というから、公団OBが経営しているファミリー企業といったほうが分かりやすいかも知れない。

 この187社の従業員は4万5000人(1社平均240人)で、公団職員(1万1500人)の4倍にのぼる。道路公団の民営化の過程で、このファミリー企業の扱いも重要なテーマになって来るようだ。それにしても、310社に天下った職員が1719人というから大変なものだ。

2002年12月05日(木) 日立は元社員に発明の対価を

 元社員(研究者)が、自身の発明に対して正当な対価を払えと退社してから会社を訴える・・・訴訟された会社にとっては社内の士気の面で少なからず影響が出ると思う。

 CDなどの光ディスクにレーザーを当ててデーターを読み取る特許をめぐって、日立製作所の元主管研究員の米澤成二氏(63)が、自身の発明による特許権を譲渡した代金として、9億7000万円を支払えと訴訟した。

 詳しくは省略するしかないが、東京地裁は特許権で得た利益の約14%に当たる「3490万円」(11月29日毎日から)の支払いを命じた。この金額は裁判所が認定した発明の対価としては過去最高額であるという。

 この判決に対して、日立は控訴の方針のようだ。日立の知的財産権本部長は「当社の発明者への報奨制度は手厚く、(判決の)金額は高すぎる」(同)と強く反発している。

 同本部長の説明によると、日立が他社から受け取る特許料収入は年間200億円余りで、「うち6億円を社員や元社員に還元している」(同)そして、「報奨制度を見直す考えはない」と明言している。

 会社側に立ってこれらの記事を読むのであれば違和感はないのかも知れない。しかし、研究者の立場から見れば「特許料収入200億円の2%(6億円)しか還元していない」と受け止めるのではないだろうか。

 今回、日立を訴えた元社員は1973年〜77年にかけ3つの発明を完成させ、社内規定に従って特許の権利を会社側に譲渡したが、報奨金として受け取ったのは僅か238万円でしかなかった。

 原告の元日立製作所主管研究員の米澤成二氏は、判決後の記者会見で「メーカーが特許をタダと考えている限り、若い研究者に希望がない」(時事通信)と訴えている。米澤氏は更に「事業を立ち上げる鍵になる特許がこれだけの額(238万円)では、若い研究者は苦労しようとは思わない」(同)と日立を批判していた。前段の会社側の言い分が正しいのか、原告の訴えが正当なのかの判断は読者に任せるとしよう。

 日本のメーカー総てが、米澤氏のいうように特許をただと考えているわけではないと思う。報奨金の云々もあるだろうが、要は企業が研究者に働きがいのある環境をいかに作っていくかだと思う。

 ここ2年余りIT不況で半導体、通信に軸足を置いて来た日本の電機メーカーは、巨額の赤字を計上した。しかし、このような環境の中で「着実に利益を出している所がある。ソニー、三洋電機、シャープの3社だ」(エコノミスト12月3日号)とあるように、この3社は独自技術の商品を研究者群が生み出しているのだ。10年単位の企業の差は、研究者の成長と質によって決まるように思う。

2002年12月04日(水) 死刑反対デー

 人権感覚が進んでいる欧州では死刑が廃止されている。いかなる理由があるにせよ、国権が死刑という形で人の命を奪うことは出来ないとする考え方である。世界各地の人権団体は11月30日を「死刑反対国際デー」と定め、世界60都市で死刑廃止の運動を展開した。

 先進国で死刑を行なっているのは、日本と米国だ。日本にも「死刑廃止を推進する議員連盟」(亀井静香会長、120人)があるように、死刑を廃止しようとの動きもある。

しかし、根強い死刑存置論があって、死刑廃止の法案が提出されるまでには至っていない。この死刑廃止の潮流の中で、死刑廃止議員連盟は特別無期刑を盛り込んだ刑法改正案をまとめる意向だ。

「メンバーの浜四津敏子参議院議員(公明)の私案を軸にまとめる方向が固まった。死刑を存置したまま、死刑と現在の無期刑の間に20年〜30年間服役しなければ仮出獄を認めない特別無期刑を新設する」(毎日)という内容だ。

 国際的人権団体「アムネスティ」によると、昨年の死刑の執行は、1位、中国3468名、2位イラン139、3位サウジアラビア79人、4位米国66人であるという。中国は、汚職で国家公務員が3人も指名手配になるお国柄である。西欧の人権理念を今の段階で中国に求められないだろう。

2002年12月03日(火) イスラエル機にミサイル回避装置

 ケニアでイスラエルを標的とした同時多発テロが起った。1件はイスラエル人が経営するホテルに四輪駆動車が突入し爆発、5人が死亡し、80人以上が怪我をした。

 もう1件は、同時刻ごろケニアの空港を離陸したイスラエル行きの航空機(乗員・乗客271人)に向け、2発の地対空ミサイルが発射された事件だ。地対空ミサイルが発射されたものの、命中しなかったのは同機にミサイル防衛装置が搭載されていたためだという。

 それにしてもイスラエルのアルキア航空の民間機がミサイルの攻撃を受けるのだから大変な事態だ。アルキア航空幹部は「イスラエルのミサイル回避システムは世界で最も優れたものだ」というが、テロが民間機を攻撃する事実は衝撃を受けざるを得ない。

 イスラエルは同国空軍の特別機を派遣しケニアからイスラエル人を退避させる。イスラエルはもはや、戦時下の国家運営の段階になっている。

 ケニアのイスラエル大使は、「攻撃の背後にアルカイダがいることは違いない」としている。それにしても、ホテルの爆発は3人による自爆テロである。

 自分達の死を覚悟させ、テロに送り出す悪魔のような指導者が厳然としているのだ。1998年の米大使館を狙ったテロでは、200人以上が死亡、5000人余りが負傷した。


2002年12月02日(月) 大手行と生保の中間決算 

 11月末に大手行と生保の中間決算が発表された。大手12行では、最も内容が良いとされる三菱東京ファイナンシャル・グループが赤字で、他行は黒字だという。しかし、通期ではほぼ全行が赤字に追い込まれるようだ。

 三菱東京が1850億円・みずほも2200億円の赤字になる。この赤字は株価が原因している。「保有株式の価格下落も響き、みずほと東京三菱は、当初黒字と見ていた03年3月期の最終損益予想を大幅赤字に修正した」(11月25日 毎日HP)との流れなのだ。

 株価の下落は生保に深刻な影響を与えている。なにしろ、生保全体で銀行の株を8兆円も保有している。「今回の報告では、株の保有など銀行向けの拠出状況を公表した。

 総額で8兆円以上に上り、銀行の経営と生保経営の密接振りが改めて明らかになっている」(11月26日 朝日HP)密接という言葉は、一般には悪いイメージを与えないが、ここでは、実は大変に悪いことなのだ。

 これだけ銀行の株が下落しているので、この株を保有しているだけで、生保の屋台骨がガタガタになってしまう。少々引用すると「株価低迷の直撃を受け、6社が計約1兆円の株式含み損を抱えた」(同)ともかく、銀行株の下落が生保の経営に大きな打撃を与える構図が鮮明に浮かび上がっている。

2002年12月01日(日) エイズの脅威

 エイズのことはここで2度程記述したが、12月1日が「世界エイズデー」であることは知らなかった。エイズデーが定められたのは、エイズウィルス(HIV)の感染防止が目的である。

 このHIVの感染者は、さまざまな運動にかかわらず、減るどころか急速に拡大している。「感染者数は途上国を中心に4200万人で、対策を講じないと、2010年には倍増する」(読売)という。

 4200万人の2倍といえば8400万人で、人類の70人に1人がエイズに感染するという予測である。国連が「人類にとって最大の危機」と敬称を鳴らすのも当然なのである。地球上の人類の増加は、このエイズ菌によって止められる情勢なのだ。

 日本の感染者はどうなっているのだろう。他の先進国で新規の感染者が減少している中で右肩上がりで増え続けている。

 現在掌握されている感染者は5000人であるが、厚生労働省の研究班は「2010年には5万人近くに達する」と予測している。このHIV感染は、ある段階までじわじわと増え続けた後爆発的に拡大するという。

 最も心配されているのが、現在すでに4割を越えている若者の感染だ。背景は不特定多数の性的接触など、無防備で無軌道な性行動がある。中学生段階から徹底したエイズ予防教育を行なわないと、感染の爆発を防ぐことが出来ないようだ。

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石田ふたみ