やんの読書日記
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2004年06月18日(金) 双子座の星のもとに

ロザムンド・ピルチャー作
日向房

幼いときに両親の離婚で生き別れになった
双子のフローラとローズ
ひょんなことで出会い
ローズの身代わりをせざるを得なくなってしまうローズ。
その役目は、アントニーの婚約者になりすまして
病気の祖母を見舞うということ。
ローズはアントニーと婚約したはずなのに
勝手に婚約解消して旅立ってしまう。
スコットランドで祖母のタピーや家族の人と
暮らすうちに双子の妹ローズの身勝手さや
汚さを知ると同時に
人々をだまし続ける自分に
苦しみを感じるようになる。

双子だからつながっているはずと思って
ローズになりきろうとするフローラの
苦しみ。性格が正反対のローズに対する哀れみや怒り、
双子であったことを一言も教えてくれなかった
父への不信など、さまざまだけれど
苦しみの先に待っていたものが
父への愛、新しい生活だったことが
ほっとさせてくれた。

フローラはローズによって手ひどく傷つけられたかのように見えたけれど
アントニーの祖母タピーやその家族の人々の
あたたかさや気高さで元気付けられていく姿がとてもいい。
おせっかいのように感じられるそのお世話が
かえってフローラを強くしていくのだ。
この家族的なあたたかさに答えて、最後に自分はローズではないことを
告白するフローラに共感した。
うそに驚きあきれながらも、
フローラを認めていっそう愛する事ができる
人々に感動した。
「生まれが同じでも環境が違えば違ってしまう。
でもおまえはたとえ母親に育てられてもローズのようには
ならなかっただろう」と書いた父の手紙に
娘への愛情が深く感じられて
どっと涙が出た。
最後に医師のヒューと結ばれる場面がまた感動的。


2004年06月14日(月) くらのかみ

小野不由美作
講談社

田舎に代々続く大きな家の跡目相続
この家にはたたりがあって
子どもが育たないのだという
それで跡継ぎは、子どものいる
夫婦を養子に入れていたらしい。

現在の当主が病気になり
跡目と決めた夫婦に子どもが生まれなかったり
育たなかったりして、親族会議を始める
というところから物語が始まるのだが
毒ゼリ事件や、沼事件があり
そのうえ子どもが一人多い
という座敷童子まで登場して
推理小説のような展開だ。
探偵が子どもたちなので
なぜか目利きの鋭い子どもがいて
なんだか大人びていて
一見ぼんやりした大人たちと対照的だ
その大人の中に、事件をおこした
犯人がいて、ということになるのだけれど
やっぱり不思議なのは座敷童子だ
子どもたちも大人も、その子が前にいなかった
という事実を忘れてしまい、当たり前のように接したあと
いなくなったら忘れてしまう。
蔵座敷の中のお堂に住んでいるらしい
この子どもは、家の危機を救ったらしいことになっているが
なんとなくわかりにくいお話だった。
十二国記のような鮮烈さがない。
古い家の描写は現実的で
実在する家のような書き方で面白かった。


2004年06月08日(火) シー・ビスケット

ローラ・ヒレンブラント作
ソニー・マガジンズ


アメリカの大恐慌時代に
大人気だった競走馬の実話
シー・ビスケットという名の手のつけられない駄馬
がどのようにして実力ナンバーワン、人気ナンバーワンの
馬になっていったか。
見放されて打ち捨てられていた馬と
馬主と調教師と騎手の出会いが、
ドキュメンタリーでも見るように
鮮やかに詳しく書かれている。
競馬は馬だけではなく、4者がひとつになって初めて
成り立つ競技なのだということをわからせてくれる。
調教師のトムの目利きがすばらしい。
そのトムを発掘した馬主のハワードもすごい
さらに、馬の性格を知り尽くして
馬と一体になれる騎手ポラードはもっとすごい

ポラードは片目が見えなくなって
騎手生命も危ういというのに不屈の精神というのか
騎手としてもって生まれた天性というのか
馬への愛着というのか
そういうものをすべて溶け合わせて力を発揮する。
大怪我をして騎乗できなくなったとき
代わりにシービスケットに乗るウルフと作戦して
最大の敵ウォーアドミラルにきっちりと勝つ
ところで胸がドキドキした。
怪我で再起不能に陥ったポラードが
シービスケットの引退戦のサンタ・アニタハンデ戦で
有終の美を飾ったところなど
読んでいてゾクゾクした。

実力をつけて他の馬よりも負担斤量が多くなった
シービスケットを気遣い、他の調教師に
自分の調教を悟られないよう苦心するトムは
努力家以上の策略家だ。

自転車修理業から身を起こしたハワードが
シービスケットとポラードに対する愛情は
父親のような感じだ。


苦しい時代にひとつのことに人生をかけられる
人間。それに答えた馬一頭。
人生を一つのことにかけられる
単純だけれど前向きでひたむきな
そういう人間と馬が生んだ感動の実話なのだ











アカデミー賞にノミネートされてから
この本の存在を知ったのだが
映画を見る前に読んでよかったと思う。


2004年06月05日(土) 駆けぬけて、テッサ!

K.Mペイトン作
山内智恵子訳  徳間書店

テッサは、女の子
大好きだった子馬アカリや父と無理やり引き離され
再婚した母と継父の黄金屋敷で暮らしている。
継父があまりに母に残酷でお金のことしか頭にないので
テッサはグレて夢も目標もない。
そんなテッサに生きる希望を与えたのが
アカリの子どもピエロとの出会いだった。

ピエロの世話をするうちに
ピエロに乗りたい
騎手になってピエロとレースに出たい
そういう一念でテッサはどんどん変わっていく。
見栄えも悪い、のんびり屋のピエロが
テッサの気持ちを吸い取るかのように
どんどん変わっていき、レースで勝利するようになる。
その過程が読んでいてうれしい。
埋もれていた馬の可能性を引き出す
そういう能力がテッサ自身にあったのかもしれない。
それ以上に、絶対ピエロに乗る
というテッサの前向きでひたむきな信念が
読者の心をがっちり捕らえるのだと思う。

逆にまっすぐ前しか見えない弾丸のような
性格が卑劣な継父をナイフで刺すという
事件を引き起こしてしまうのだけれど
この物語のいいのは
そのあと周りの人々のあたたかい手で
テッサは立派に騎手として返り咲き
打ち捨てられてだめになってしまったピエロを
グランドナショナル大障害という
過酷なレースで復活させたということだ。

信念と努力と強い心
大切なものを愛する心
それを持ったとき人は輝いて見える
テッサはそういう女の子だ






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